習近平、世界の支配者層に取り入る
さて、「絶対的存在」に思える、「世界の支配者層」。しかし、あらゆる支配者同様、支配が永遠に続くことはないでしょう。実際、2016年に起こった「イギリスのEU離脱」「トランプ勝利」は、支配者たちにとって、「都合の悪い出来事」でした。彼らは現在、厳しい状況に追いこまれている。WSJ1月18日付で、ジェラルド・ベーカー編集局長は、言います。
貴族階級の歴史はたいてい不幸な結末を迎えている。2017年のダボス会議参加者がこうした疑問に答える努力を始めなければ、ブルボン王朝やロマノフ王朝に起きたことの現代版が、せいぜいそれほど激しい暴力を伴わず多くの死者を出さない形で、最終的には同じ重大な結果をもたらすのを待つしかないだろう。
彼は、「世界の支配者層が変わらなければ、革命が起こって、失脚する」と言っているのです。
習近平は、こうした世界の支配者層の危機感を察知し、「支配者たちと和解しよう!」と考え、演説した。習近平は言います。
中国は今後も「門戸を開き」、新興国がグローバル化の恩恵を受けられるよう後押ししていくと言明。同時に、トランプ氏が脱退を示唆している地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」を支持する意向を示した。
また、「世界の諸問題を経済のグローバル化のせいにするのは無意味だ」と指摘し、2008年に欧米を襲った金融危機の原因は自由貿易ではなく、圧倒的な規制不足にあったという中国の見方を強調した。
(AFPBB News 1月18日)
彼は、まさに「世界の支配者層が聞きたがっていること」を語りました。反応は当然、良好でした。
習氏はこの講演で、会場に集まった各国や各界の首脳、著名芸能人らの多くから喝采を浴びた。
(同上)
日本は、習近平を甘く見るな!
日本では、中国や習近平をとても軽視する傾向があります。
「中国は、こんなにアホなことをやっている!」
「習近平は、こんなにバカなことをやっている!」
「やっぱり中国は民度が低い」
「中国崩壊は近い!」
こういう話が好まれます。今回の演説について、「習近平の演説に、会場はしらけムード」と書けば、喜ばれることでしょう。しかし、日本は、「そんなハチャメチャな中国に、負けた」という事実を覚えておく必要があります。
反論が出るでしょう。「日本は、中国ではなくアメリカに負けたのだ! 中国では、連戦連勝だった!」と。しかし、「アメリカを日本との戦争に引きずり込んだ」のは、中国とソ連です。ある面、中国(とソ連)は、「アメリカを使って、スマートに(あるいは、ずる賢く)日本に勝った」とも言える。
次の反論は、「日本は負けたが、共産党ではなく国民党に負けたのだ!」でしょう。その通りです。しかし、共産党は、「国民党と日本軍を戦わせることで、力を温存し、結局内戦に勝利した」とも言えます。
習近平の「ダボス演説」は、彼が世界の動きをしっかり把握していることを示しています。そして、「世界の支配者層を味方につけよう」とした。何が言いたいかというと、「中国や習近平を甘く見るな!」ということです。