音楽の機材の性能はどんどん進化していって、アンプやスピーカーも良い音になっていくので、作曲家はとにかく良い音を作ろうとします。
でも、「PPAP」はYouTube投稿だから、スマホなどの小さなスピーカーでもきちんと狙った音で聴けるように、
あえてそのような音色を使っているんだそうです。
これは、まさにケータイゲームの黎明期にサウンドをやっていた私の大きな命題でした。
私がゲームを手がけていた頃は、まだスマホなどなくガラケーの時代で、ソーシャルゲームなどよりも前の時代ですが、とにかく携帯電話のスピーカーがしょぼかった。
そのため、そんなしょぼい端末から音が出る、ということを前提に、BGMや効果音を作っていかないといけないわけです。
この時のノウハウは、恐らく音楽大学を出たような音楽理論を完璧に持っている人と話しても、全く得られることはないだろうと思います。
私がゲーム会社を退職してから、ある他のゲーム会社が、私の作曲のことを知っていて、サウンドを担当してほしいと依頼してきたので、BGMや効果音を複数作って納品しました。
すると、その発注してきたディレクターが、「もっとカッコイイ音にして欲しい。なんか薄い」みたいなことを言ってきたんですが、「それはきちんと、端末に入れて聴きましたか?」と確認してみると、案の定PCで確認している。
そしてしばらくすると、また連絡が来て、「端末で聴き直しました!これがいいです!」とベタ褒めされて、採用となったんですね。
もう私も何百曲もケータイ端末の曲を作ったので、PCのソフトで曲を作っても、感覚的に「端末ではこう鳴る」ということが分かっていて、実際に端末でもテストをしてみますので、あくまでも端末側での出力にこだわっていました。
今はもうその端末事情は大きく変わったので、あの時のノウハウがそのままは使えませんが、何かを創作していく時には「その時の端末の使用に合わせていく」というのは、ものすごく大事な意識だと思います。