このオプションについては、一つ注意したいことがあります。それは、全ての決定権限のある人が交渉に行くときには、使えなくなる可能性がある、ということです。たとえば労働組合の団体交渉(団交)を受けるときのコツの一つとしてよく「社長が直接交渉の場に行ってはいけない」といわれます。総務部長などの肩書の人が会社側として臨むことが多いようです。
これは常套句である「一旦持ち帰り、上に聞いてみます」というオプションを確保するため。仮に社長が「ちょっと会社に帰って検討します」といっても「自分で決められるでしょう、ここで返事をしてください」と迫られることになってしまいます。
完全な決定権限がある人が交渉に望んだ方が話が早く、スピーディーな意志決定ができることは確かなので、ケースバイケースですが、その場で結論を出したくない要求をされることが想定される場合は、このオプションを確保しておきたいところです。
最後に、このセリフを言われたときの対処法についても簡単に説明します。この場で結論を出してもらいたい要求に「一旦持ち帰ります」と返されたときは、限定をつけるのが有効です。
つまり、「今決めるならこの条件でよいのですが、持ち帰るならいったん白紙にさせてください」といった言葉です。もし相手が、実はその条件を飲むことができる場合「今だけ」という限定をつけると、持ち帰るわけにはいかなくなります。
「一旦持ち帰ります」「上に確認します」は便利な言葉です。上手に使い、また使われた際も最適な対処ができるようにしましょう。
今回は、ここまでです。
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