「たぶん大丈夫」。ナショジオ賞作家はインドで何を悟ったのか?

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毎回、アジアの日常を切り取った写真が好評の無料メルマガ『素顔のアジア(たびそら・写真編)』。今回、その著者でナショナルジオグラフィック写真賞作家の三井昌志さんが届けてくださったのは、南インドの人や食べ物です。さらに三井さんは、「インドを気分良く旅するコツ」も記してくれました。

ハッピー・ポンガル!

1月14日は南インドの収穫祭ポンガルでした。屋外のかまどでサトウキビや牛乳、ココナッツなどで甘く煮たおかゆ(ポンガル)を作って、家族みんなで食べる行事。日本のお正月みたいなものです。学校も仕事もお休みで、子供たちはサトウキビを囓り、日々の恵みを太陽に感謝する一日。ハッピー・ポンガル!

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農家の家の前では小さなかまどと素焼きの壺を使ってポンガルを炊く。薪の煙が目にしみて辛そうだったが。

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ポンガルの日はサトウキビをそのまま囓る習わし。収穫したばかりのサトウキビは、みずみずしくて甘い。

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家の前には色粉を使って描く「コーラム」が。サトウキビとポンガルと花の模様が描かれている。

南インドの食べ物

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南インドを代表するティフィン(軽食)といえば何といってもドーサ。大きなバナナの葉っぱに盛り付けられたドーサは、米粉を発酵させた少し酸味のある生地が最高に美味い。僕は何も入れない「プレーン・ドーサ」がお気に入り。ドーサの持ち味であるパリパリ感を堪能できるからだ。

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タミルナドゥはコーヒー豆を栽培しているので、インスタントではない本格コーヒーが気軽に飲める。熱々のミルクコーヒーを受け皿にこぼしながら冷まして飲むのがタミル流。

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タミルナドゥのチャイは、ミルクを高く持ち上げて豪快に泡を立てながら紅茶と混ぜて作る。いつ見ても見事な職人芸。この所作を見てるだけでチャイがうまそうに感じるから不思議だ。

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ミールスは南インドの定食。各種の野菜カレー、酸味のきいたスープ・サンバル、ヨーグルトやスイーツなどの小皿が付き、ご飯はお代わり自由で好きなだけ食べられる。国道沿いのオシャレ系レストランで食べたミールスは、給仕係がご飯にきな粉のような粉末とギー精製バター)をかけてくれた。ギーをかけるとコクが出てうまくなるんだとか。

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このレストランでは、食事が終わると「フィードバックを書いてくれ」と黒板を渡された。「おいしかった」と書いて渡したら喜んでいた。素朴な感じの黒板が良かった。

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ミールスはお代わり自由なので、隙あらばライスを持った給仕係が「もっと食え食え」と皿に盛ろうとする。僕は滅多にお代わりをしない。40を過ぎてそんなに炭水化物ばっかり食べていたら太っちゃうしね。そう、だからインド人の男たちは腹が出ている人が多いのだ。明らかに糖質の取りすぎ。

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ビリヤーニは当たり外れの多い料理だと思う。これはハズレだった。完全なハズレだった。まったく何の味もしなかったのだ。ご飯の甘みも、鶏肉のうまみも、塩辛さもまったくない。自分が味覚障害になったのかと思ったほどだ。ただトウガラシのホットな刺激だけが口に広がるだけ。熱いスプーンを口の中に入れられた感じ。ただの無味ではない、暴力的な無味なのだ。どうやったらこんな料理を作れるのか、聞きたいぐらいだった。

この味のしないビリヤーニは70ルピーだった。食堂の主人に文句を言ってやろうと思ったら、向こうが先に「味はいかがでしたか?」と満面の笑みで聞いてきたから、つい「グッド」と答えてしまった。さすがに本人に正面切って「マズい」とは言えない。でも本人のためにも正直に言うべきだったのだろうか?

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別の町で食べたチキンビリヤーニは一口食べた瞬間「うまい!」と立ち上がりそうになった。肉のうまみとトマトの酸味が絡み合ったご飯。上からかけるサンバルにも野菜のうまみが凝縮されている。トウガラシは隠し味程度に抑えられ、素材の持ち味を殺さない。こうして前回の「味のないビリヤーニ」のリベンジは果たされたのだった。

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ムスリム経営の店で食べたビーフ・ビリヤーニ。ヒンドゥー教徒は絶対に牛肉を食べないが、イスラム教徒が多い地域ではビーフを出す店もある。牛肉がホロホロで柔らかくてうまかった。しかも40ルピー(70円)という安さだ。牛のモツカレー(30ルピー)も絶品。狭い店だが、いつも男たちで混み合っている。うまい、安い、早い。三拍子揃ったインドの吉野家だ。

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