「たぶん大丈夫」。ナショジオ賞作家はインドで何を悟ったのか?

 

想像力のスイッチを切る

mitsui20180117-13

屋台で売っていたフルーツ盛り合わせ。パパイヤとスイカとパイナップル。みずみずしくて美味い。20ルピー。3種を一度に味わえる。こういうひと工夫が他の店との違いを生む。

なんてことをツイートしたところ「ハエが媒介する感染症が怖くないですか?」という声が。確かにハエはものすごくたかっている。でも、ハエが媒介する病気のことまで気にしていたら、インドで飯は食えない。牛のウンチを気にしていたら街を歩けないのと同じように。インドを気分良く旅するためには「余計なことは気にしない」ってことが必要です。「しゃーない。ここはインドなんだもん」ってことですね。

路上でチャパティを焼いていた男が、手が滑ってチャパティを道に落としてしまい、それを何食わぬ顔で「焼きたてチャパティ」の上に積み重ねているのを見たときから、僕はインドの食べ物の衛生面に関して何も考えないことにしています。余計な想像力は働かせない。考え出したらキリがないから。

考えてどうにかなることなら僕も考えますが、インドって「考えてもどうにもならないこと」が多すぎますよね。「最悪のケースを想定して予め手を打っておく」というきわめて日本人的な対処法が通用しない。だから「なるようになるだろう」というインド人的価値観に染まっていくんだと思います。

そりゃ日本だったら、たとえば缶詰に虫が入っていたらメーカーにクレーム入れて、何万個も回収させるのもアリだと思います。でも、ここはインドだ。虫やホコリや牛のウンチやなんやらを気にしていたら生きていけない。インド人はこの環境で元気に暮らしているんだからたぶん大丈夫ですよ。

甘いものにアリやハエがたかるのはごく自然なこと。あまり気持ちのいいもんじゃありませんが。ハエがいない日本の都市の方が(自然界から見れば)きわめて特殊な環境なのだと思います。

想像力のスイッチを切る」というのは、インドを旅する人にとってもっとも必要なことです。不安や恐怖というのは、現実そのものよりも想像によって肥大化していくものだから。目の前の現実に対処し、あるがままを受け入れていけば、インドは全然怖くない。本当です。

mitsui20180117-14

インドの街角で山羊の内臓を売る男。新鮮なモツには当然のごとく大量のハエがたかってくるので、はたきのような棒を振って追い払っている。インドらしい光景だ。

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【著者】 三井昌志 【発行周期】 ほぼ 週刊

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