倒産寸前からの大逆転~驚きのライザップ誕生秘話
ライザップが会社を挙げて行う年に一度のイベント「ボディメイクグランプリ」が千葉県浦安市で開催された。その年、もっとも劇的に生まれ変わった会員を選ぶコンテストだ。
肉体だけでなく、その人の心や人生にどんな変化があったのかも重要な審査のポイント。全国から選び抜かれた参加者たちが、厳しいダイエットに挑む裏にあった強い思いを切々と語った。30キロ以上落としスリムになった女性は、最後に涙ながらにこう語りかけた。
「生まれ変われた今なら言えます。お父さん、お母さん、産んでくれてありがとう……」
瀬戸がライザップのビジネスを通じて伝えたいのは、「人は変われる」という信念だ。瀬戸自身、誰よりも大きな変化を体験してきた。
製鉄の街・北九州市で生まれた瀬戸の実家は、住宅街で手作りパンの店「シャノン」を営んでいる。母親の和子さんが、家のすぐ前の小学校に通っていた当時の話をしてくれた。
「運動会のときも練習のマイクの音が聞こえるんです。『瀬戸!』と呼ばれているので、見たら砂場の角で立たされているんです」
その学校での成績は予想を超えるものだった。通信簿を見ると、40人いるクラスの中で1度を除いて全てビリ。だが瀬戸は「自分は社長になる」と言い放ったという。
「勉強しない子だったから、全然、真に受けてなかったですけどね」(和子さん)
ところが瀬戸は高校を出ると猛勉強して、1998年、明治大学に入学。2003年には「健康コーポレーション」という会社を立ち上げた。「これから人を幸せにするのは健康だと思って、大豆を濃縮したサプリメントを作ろうとスタートした」(瀬戸)会社だ。
資本金は妻と折半した900万円。しかし商品は全く売れず、倒産を覚悟した。ところがそこに奇跡が。おからを原料に使ったクッキー、「豆乳クッキーダイエット」を販売したところ、大ブレークしたのだ。「400万箱以上売れたので『来た!』と思った」という。
貧乏暮らしから瀬戸の状況は一変する。瀬戸の会社はわずか4年で年商100億円を突破。立派なオフィスを構えるまでになる。その成長ぶりはマスコミから若き成功者として注目されるほどだった。
ところがその後、瀬戸のヒットを知った同業者が続々と参入。一気に類似品が溢れかえることになる。なす術のない瀬戸。会社の売り上げは、あっという間に10分の1に激減し、社員たちは次々に去っていった。「金融機関に『金はもう払えません』と話はしていました」と言うほど、倒産寸前の状態に追い込まれた。
そんな中で思いついたのが、後に大成功をもたらすライザップのビジネスだった。
発想の原点は若き日の体験にあった。高校3年のとき、瀬戸は女子生徒から友だちを紹介される。瀬戸に思いを寄せているというその子は、身長150センチと小柄ながら、体重は70キロを超えていた。体型のせいで引っ込み思案になっていた彼女に、瀬戸はあるとき、「そんなに体型が気になるんだったら、俺と一緒にダイエットやってみない? 応援するし、絶対痩せるって」と言う。
そして彼女のダイエットをサポートする日々が始まった。一緒に運動をするのはもちろん、ダイエットの勉強をし、痩せるにはどんな食事が良いかまで、つきっきりでアドバイスした。いつしか瀬戸は彼女と付き合うようになり、挫けそうなときも必死で励ました。
すると3ヵ月後、驚くべき結果が。スリムな体型に変貌した彼女は自分に自信を持てるようになり、一気にクラスの人気者となったのだ。
「自信に満ち溢れていたのは間違いないですし、人ってこんなに変われるんだと。人が持つ内面の明るさとか元気とかを含めて、すごいと感じました」(瀬戸)
倒産寸前の危機で瀬戸の脳裏に蘇った高校3年の思い出。この「人は変われる」という体験こそがライザップの原点なのだ。
高齢者がライザップに熱狂~2000円で若返る新サービス
南アルプスをのぞむ長野県伊那市。お得な体験ができると、年配の市民たちが集まっていた。
そこに登場したのはライザップのスタッフ。実は格安で高齢者の健康づくりを手助けするライザップの新たな取り組みだ。
全8回のトレーニングと定期的な食事のチェックもついて、費用はわずか2000円。高齢者が健康になれば医療費も削減できる。そこで伊那市はライザップと組み、プログラムの導入を決めた。
「ライザップさんのプログラムを導入することで、市民の皆さんが健康になる地域づくりを目指しています」(白鳥孝市長)
既にライザップとの取り組みが行われている静岡県牧之原市。始めてから1年がたつこの日は、1年前から体力がどれだけ改善されたか計測が行われた。実年齢が70歳の女性は、以前は86歳だった体力年齢が30歳も若返るという驚くべき結果が出た。
「成果を出して実績を持って、『来てほしい』と言ってもらえるサービスをつくれるかどうか。スタートラインに立ったばかりだと思うので、これからです」(瀬戸)
一方、新宿の本社で瀬戸が幹部社員を集めて議論しているのは、いかに痩せた後のリバウンドをさせないかについてだ。客に不安があれば即座に改良に乗り出す。
ライザップで今、始まっているのがリバウンド保険。コース終了後に保険に入れば、万一リバウンドしても無料でトレーニングを受けられるという制度だ。
「人は変われる」をやり抜くための、瀬戸の闘いは終わらない。