新御三家の裏で急成長する新たな「刺客」と、将来性への懸念点
新御三家以外にも、共立メンテナンスが展開するドーミーインはサウナや露天風呂を併設した大浴場や、ひと風呂浴びたあとに食べるラーメンが無料のサービスで人気が沸騰している。また、ロビーでコーヒーが無料で飲めて、無料で使えるコンセントを設置するなど、ロビーの快適性も突出している。

セルフサービスのコーヒーが無料。カフェのようなドーミーインPREMIUM渋谷神宮前のロビー
ドーミーインは70ほどのホテル数があり、共立メンテナンスのホテル部門の売上高はリゾートホテルを含めて604億800万円(前年同期比13.1%増)となっている。
スーパーホテルは健康と環境維持を実現する「LOHAS」の取り組みが特徴で、「健康イオン水」を飲用のみならずバスタブにも使用。無料の朝食に地域特産品や有機JAS認定野菜を提供するなど、徹底している。連泊で清掃不要の顧客にはミネラルウォーター、歯ブラシ未使用ならお菓子をプレゼントと、エコな顧客にサービスをする「エコひいき」なる制度も有している。8種類の枕が選べ、防音・静音設計の客室など快眠にもこだわりがある。
17年3月期のチェーン数は121で、年商は308億7100万円(前年同期比6%増)となっている。
このほかにも、魅力的なスーパーエコノミーホテルともいうべき、新しい進化形のビジネスホテルは枚挙にいとまがなく、単にベッドを提供する発想から脱却して、従来にはなかった付加価値の競争となっている。
心配な点としては、出店を急ぐあまりに金融機関からの借入金が膨らんでいるケースが見受けられ、全てがうまく回っていても、仮に大震災などが東京や大阪で起こると、インバウンド需要が一気に萎み、途端に経営危機になりかねないチェーンがあることだ。
また、万が一現政権が交代してデフレを完全に脱却しないまま金融緩和を止めてしまえば、再び理不尽な円高となり、訪日観光客が減少する懸念がある。経済が不活発になるので、ビジネス客も減るだろう。そうなると価格競争になり、金融面で自転車操業のチェーンは不利だ。
新御三家は、ルートイングループは永山勝利氏、アパグループは元谷外志雄氏、東横インは西田憲正氏という、いずれも立志伝中の創業者が一代で築いた企業だが、今のところ後継へとバトンタッチできたのは、東横インのみだ。同様に創業社長頼みの弱みを抱える、新興ビジネスホテルチェーンも多い。
経営者として事業を発展させられる後継者を、いかに育成するかが課題だろう。
image by: WikimediaCommons(WebGroup)、ルートイン公式HP、長浜淳之介