「パワハラとは認められない」として、会社が勝ちました。行為は行われたとして認められたにもかかわらずなぜパワハラとは認められなかったのか? それは、この社員の採用面接時の申告に問題があったからでした。この社員は採用面接の時に
- TOEIC800点
- イラストレーター、フォトショップ中級程度
などと申告していながらも実際はそのスキルに達していなかったのです。そこで裁判所は次のように判断をしました。
- 会社は高額な報酬が発生する人材派遣会社の紹介を利用して、ある程度のスキルを持った社員として期待をして採用をした
- 社員としては不可能なことを要求されていると感じていたとしても会社としては社員が期待した役割を果たせていないことで指導が厳しくなったとも考えることができ、社員がパワハラと感じたからといってそれがパワハラであるとは言えない
- 「お互いのために退職した方がいいのではないか」と言ったことは認められるが、それが退職を強要したとまでは言えない
いかがでしょうか。ここで実務的に重要なポイントがあります。それは採用時の確認の徹底です。今回の裁判では結果として会社が勝ってはいますが、裁判に対する手間(お金や時間)は相当かかっているはずです。また、もしその社員に対する言い方や対応の仕方が少しでも違っていたら、「社員が会社の期待する役割をしていなかったとしてもその言い方(対応の仕方)には問題がある」と、会社が負けてしまっていた可能性もあります。
そうならないために「採用時の確認の徹底」は必ず必要です。例えば、「TOEIC800点」と履歴書にあった場合、実際にTOEICの書面などでその事実を確認している会社はどれくらいあるでしょうか。また、「〇〇(ソフトウェアなど)中級程度」で実際にそのスキルの確認をしているでしょうか(実際にそのソフトウェアを操作してもらうのは難しいにしても「本当にその程度のスキルがあるのか」という視点で質問するだけでも全く違います)。
正直、面接という限られた空間、時間でスキルを確認するのには限界はあります。ただ、面接では「虚偽ではないにしても過大にアピールする人は多い」という事実は、採用を経験している人であれば誰もが感じていることではないでしょうか。多少、面接時間が長くなったり、回数が多くなったとしてもスキルの確認は徹底したほうが良いでしょう。
みなさんの会社で「採用面接」について見直してみる点は無いでしょうか。
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