ドンキを支える「スポット商品」と「コトの消費」
ドンキの利益率が高いのはどのような理由によるのだろうか。ドンキはニトリほどPBの割合は高くはなく、約1割にとどまる。一方で、「スポット商品」と呼ばれる、メーカーや卸が出荷できずに抱え込んでいる余剰商品や季節外れの商品を安値で多数仕入れて販売しており、これが利益の源泉となっている。スポット商品が全体に占める割合は約4割にもなるという。
ドンキは食品を安値で売り出して集客を図り、利益率の高い非食品を買ってもらうことで利益を確保する戦略を採っている。このことは、食品売上高が全体に占める割合が食品粗利益のそれより大きく上回っていることからもわかる。17年6月期の前者は35.7%だったが、後者は24.0%にすぎなかった。つまり、粗利益を削る形で低価格を実現し、それにより販売数が伸びて売上高が大きくなっているのだ。
ドンキが支持されているのは安さだけではない。他にはないドンキ独特の売り場もそうだ。商品を所狭しと並べる「圧縮陳列」の手法を用いて作られたドンキの売り場はまるでジャングルのようで、客はジャングルを冒険するかのような体験を味わいながら買い物を楽しむことができる。現代の消費者は「モノの消費」よりも「コトの消費」を好むと言われているが、ドンキの売り場は“ジャングル体験”というコトの消費を提供しているといえ、このことが支持される大きな要因となっている。
店によって売り場構成が大きく異なるのもドンキの特徴であり強みとなっている。ドンキは「個店経営」を標榜し、顧客の属性などに合った売り場づくりを個店ごとに行なっている。例えば、若者の女性が多ければ低価格の化粧品の売り場を拡充させたり、外国人観光客が多ければお土産用の菓子を充実させたりする。こういった売り場づくりを実践しているので、店によって売り場構成が大きく異なるようになる。そして店に個性が生まれる。二つとして同じ店はないのだ。
ドンキは個店経営を実現するため、店長など店舗従業員に大胆な権限委譲を行なっている。商品の仕入れや値付け、陳列などの業務を本部従業員ではなく店舗従業員が担っているのだ。こういった業務は、一般的な小売りチェーンでは本部従業員が行うことが少なくないが、ドンキは大胆にも店舗従業員に権限を委譲している。やりがいのある業務のため、これにより店舗従業員のモチベーションが向上する。また、売り場の個性がより一層強まるため、面白みのある売り場の構築に一役買っている面もある。