しかし、ゲームのストリーミング配信には3つの欠点があります。
1つ目は、ネットワーク遅延です。端末側で操作をしたという情報がサーバーに送られ、それを処理してから映像として返されるまでに、どうしても数十msの遅延が生じてしまいます。その遅延が、ゲームの微妙なバランスを崩してしまう可能性があるのです。
優秀なエンジニアを数多く抱え、かつ、データセンターを世界各地に持つGoogleなので、この遅延を最低限に抑える工夫はしているようです。コントローラーからの入力を端末側のアプリで処理をせずに直接サーバーに送ってしまうなどは、素晴らしいアイデアです。
しかし、通信経路そのものから生じる遅延をGoogleが全てコントロールすることは出来ないので、それがユーザー体験にどんな影響を与えるかが若干疑問です。家にまで光ファイバーが来ている環境では楽しめても、4Gネットワークに接続したスマホからでは遅延が大きすぎて楽しめない、などの可能性はあると思います(これから5Gを売り込もうとしている通信事業者にとっては、格好の宣伝材料になるかも知れません)。
2つ目は、通信コストです。ADSLや光ファイバーで繋がっている環境では、通信料は月額固定なので、どんなに帯域を使っても問題はありませんが、通信網に繋がったモバイル端末の場合、一月の通信量に制限があるケースが多いため、ゲームをストリーミング配信で楽しんでいるとすぐに制限を超えてしまい(いわゆる、「ギガが足りない」状態)、(Wifiにでも接続しない限り)ゲームが遊べなくなってしまう可能性があります。
3つ目は、インフラコスト(ハードウェア+電力+通信料)です。Googleは、サーバー側にはプレステ4やXbox One Xよりも高性能のゲームサーバーを用意するようですが、本格的な3Dゲームは、サーバーのリソースを大量に使うため、多重化にも限度があります(多重化は一切考えていない可能性すらあります)。プレステ4のGPUが4.2 teraflops、StadiaのGPUが10.7teraflopsなので、プレステ4と同じ性能を出そうとすると、2人同時接続が限度になります。つまり、100万人が同時接続して遊ぶには、サーバー50万台が必要になります。
ちなみに、最新のプレステ4の消費電力は200Wなので、一人のユーザーが同程度の電力をサーバー側で消費すると予想できます。すると、一人のユーザーが1日5時間遊んだとすると、1ヶ月で30kWhを使うことになります。Googleならば電力の仕入れ値は1kWhあたり10セント以下なので(ビットコインのマイナーは、3~ 9セントを支払っているそうです)、月々の電気代は高々3ドルという計算になります。