タクシーのマーケティングが難しい理由
そもそも、タクシーのマーケティングは難しいと感じていた。特に流しのタクシーの場合は、タクシーを拾うお客様側も、乗せるタクシー側も、どちらもが、それぞれを選ぶことができないからだ。
したがって、「この時間であれば、この辺にお客様がいそうだから、拾うことができるだろう」と、ドライバーのカンと経験に頼ることでお客様を見つける。しかも、そのお客様がどこまで乗るかも、乗るまではわからない。その意味でとても予測し難いビジネスだ。
最近では、位置情報サービスとAIを組み合わせて、「この曜日のこの時間で、この天気だとこの辺にお客様が多いので、そのエリアにいってください」と、会社側からドライバーに向けて、情報が渡る仕組みを使っている企業もある。逆に考えると、お客様を拾うことにのみ、売上を上げるための注力が向いてしまう。
このグラボックスの仕組みは乗車代に追加しての売上になる。顧客サービスになるがゆえに、リピートの可能性も上がる。
グラボックスではメーカーと提携をしていて、メーカーがアピールしたい新商品などを、サンプルとして、無償で提供できる仕組みにもなっている。箱の中の商品の3割はこのテスト製品で、それらが無料で提供されるためそれも顧客サービスにもなる。
売上純増のためにすべきこと
このサービスは、今までありそうだが、なかった施策だ。少量ではあるが、売上増に結びつく。こういうことを思いつくのは簡単ではない。
そこでマーケティングの原点に戻って考えてみる。UBERでの顧客体験を大分類で分けると、スマホで探し、到着まで待ち、目的地まで乗車、下車し、スマホで完了メールを受信、となる。次に、乗車中の顧客体験をさらに分解すると、車中で話をするか、スマホを見る、景色を楽しむなど。
顧客体験の各フェイズの中で、「自社ができるかことは何か?」を考えてみる。UBERのケースで言えば、「お客様が何もしていない時間にできることはないか」という発想を持つことができれば、そこから企画やアイディアが出て、実現までは近い。
その意味では、いろいろな他の業種でも応用できる、顧客サービスの一例だ。
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