行き詰まった日本のアパレル。原因から考える非日常服の可能性

 

日常使いの昼間の服ならば、毎年変化させる必要はない。例えば、アメリカンカジュアルの服は、工業製品のように企画生産された。ジーンズもTシャツも工業製品である。

そんなアメリカも豊かになると、ヨーロッパへの憧れが生まれ、パリコレの服をコピーし大量生産するようになった。そのノウハウが日本に伝えられて、日本のアパレルの基盤となったのである。

現在、日本のアパレルは工業製品に近づいている。消化率やリスクヘッジを気にすると、必然的に商品は同質化する。ファッションへの憧れ、新しいものへの憧れが消えてしまえば、限りなく工業製品に近づくだろう。

アパレル製品が工業製品になるということは、アパレルがファッションを捨てたということになる。ファッションを捨てて、アパレルが生きる方法と、ファッションが生きる方法は異なる。日本のアパレル企業はどちらを選ぶのだろうか。

5.非日常の服の可能性

オートクチュールは非日常の服だった。これまで、我々は昼間の服、日常の服ばかりを考えてきたが、現代社会において、非日常の服の可能性はないのだろうか。

たとえば、舞台衣装やアイドルの衣装、アニメやゲームのキャラクターのコスチューム、ユルキャラのデザイン等である。海外から見ると、日常の服よりコスプレやロリータの方が日本文化を反映させたオリジナルである。

こうした服は日常着にはならない。しかし、観光、イベント、地域起こし等組み合わせることでビジネスの可能性が出てくる。日本の非日常と言えば「祭り」だ。もし、デザイナーが毎年祭り衣装のコレクションを作ったら、どうだろう。

土産物としても、単純な観光地の名称が入ったプリントTシャツではなく、オリジナルのアパレル製品が地域から世界に発信されれば、重要な観光資源になるだろう。

あるいは、沖縄の文化を取り入れた、マリンリゾートのコレクションを作る。ハワイには固有の文化に基づくテキスタイルがあるが、沖縄にもあるべきだろう。同様に、北海道のスキーリゾートのコレクションをアイヌ文化を反映させて作れないだろうか。

日常服は、ベーシックを基本にトレンドがスパイスになる。非日常の服は、文化や歴史、地域を基本にデザイナーの個性がスパイスになるのではないか。

image by: Tofudevil / Shutterstock.com

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