死人に口なしか。故人の元助役に責任なすりつけ逃げる関電の卑劣

 

ジャーナリスト、今西憲之氏が2012年3月、原発取材で高浜町を訪ねたさい、地元の建設業者から聞いた話を次のように記している。

「森山おじいさんのすごいところは、高浜町から関電に請求書のようなものを送りつけて『○○億円、ください』って平気でやること。もちろんその前に、関西電力のトップとは話をつけているのでしょうが、現場はびっくりですよ。高浜町への寄付なんて、億単位でバンバンとってくる」(中略)「森山さんの紹介がなきゃ、地元で工事も入れてもらえんよ。町長や町議の選挙だって、森山さんのところに挨拶にいかなきゃ当選できない。イベントでは一番の貴賓席に森山さんが座っていて、町長がわざわざ、挨拶していたさ。影の町長と呼ぶ人もいる」(前出の業者)
(アエラ・ドットより)

森山氏は関電から高浜町への寄付を億単位でとったうえ、地元の工事業者を関電に斡旋し、町長、町議選の票集めにまで影響を及ぼしていたというのだ。

岩根社長は「森山氏の呪縛から逃れたかったができなかった」とまで言い切った。実に奇怪きわまる話だ。

原発訴訟の中心的存在である河合弘之弁護士はこう推測する。「原発の安全対策工事は数百億円の大盤振る舞いだし、金額査定も非常に甘い。水増しした超過利益が元助役のところに行き、自分だけでもらってはまずいし、今後きちんと押さえておく必要があると考えた元助役が八木会長やその他に渡したというのが実態だと考えられる」(AbemaTIMES)

弁護士の郷原信郎氏も手厳しい。「ここまで来ると、あらゆる法令を使って刑事罰を科すことを検討するしかないと思う。大阪地検特捜部は寝ている場合ではない。」(同)。

福島第一原発の事故が起きた後、新規制基準に対応するため、関電は高浜原発だけで5,000億円をこえる安全対策工事費を投じたといわれ、「特需」の恵みにあずかった地元企業の一つが吉田開発である。

こうした新基準対応工事の「特需」は原発再稼働が予定される地域ならどこでも生まれていたはずで、各地に森山氏のような剛腕がいたかどうかはともかく、原発利権をめぐる“強欲伝染病”が日本じゅうで猛威を振るってきたに違いない。

水増しした工事代金の一部が森山氏を通じて、関電経営陣のもとへ戻ってくる仕組みだったとまでは思わないが、疑われても仕方がないのではないか。森山氏個人にも問題はあっただろうが、亡くなった人から弁明を聞くことはできない。

そもそも、森山氏のようなモンスターを生んだのは電力会社や経産省や政治家ではないのだろうか。

こうなってくると、政府と財界が推し進める原発再稼働が、国や国民のためではなく、ひたすら目先のカネを追い求める胡散臭い動きに見えてくる。

原発推進の財界総本山・経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は今後の影響を心配するのか、いつもの歯切れの良さを引っ込めた。

「八木さんも岩根さんもお友達で、うっかり変な悪口も言えないし、いいことも言えない。コメントは勘弁してください」。

お友達だから批判できない財界トップ。お友達だから権力乱用で破格の優遇をする総理大臣。アンフェアな社会づくりに長けたリーダーたちのもとで、いつまでも古色蒼然たる原発利権がはびこり、国力は他国にどんどん追い越されてゆく

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