シャトレーゼに見当たらない「死角」
商品のクオリティはどの分野も、競合として設定する、デパ地下や各地のスイーツショップや和菓子店の一番店に肩を並べ、追い越すことを目指している。
「商品企画では、名のあるパティシエや和菓子店のつくる商品を購入して、日々研究していますね。そのレベルの商品でないと売りません。コンビニは競合ではないです」(シャトレーゼ販売戦略部部長 広報・通販統括/中島史郎氏)。
機能性の商品は、間口が狭く大量に売れるわけではないが、非常に喜ばれる。卵、牛乳、小麦粉を使わないアレルギー対応の商品は、通常の工場ラインを一旦止めて、ほんの少しでもこれらアレルギーを引き起こす物質が残っていないように完璧に洗浄。つくり溜めをして、瞬間冷凍で保存する。
糖尿の人向けの糖質カットのあんこは、小豆自体が糖質なので食物繊維を使い、小豆汁で香りを付ける。研究開発チームが2、3年かけて製法を編み出した。
「食品アレルギーを持つお子様が増えているので、お母さま方からは喜んでいただいています。誕生日のデコレーションケーキ、クリスマスケーキ、七五三のお祝いと、折にふれて買って行かれますね」(前出・中島氏)。
全ての顧客がスイーツを食べて笑顔になるのが、お菓子屋の喜びと、経営理念の体現として、機能性商品を製造販売している。
シャトレーゼはこれまで郊外に出店してきたため、SNSで「シャトレーゼの店があるのは田舎なのか」が話題になって、書き込みが連綿と続いているほどであるが、新業態「ヤツドキ」は最初から銀座に出店したように、手強いライバルひしめく都心部に広めるべく構築した。
ブランド名は、おやつの時間と八ヶ岳の恵み、末広がりの「八」を意味する。家賃が高い都心部で、電車と徒歩で買いに来る、手土産やオフィスの需要を想定し、商品数は70~80に絞り込む。
一般のシャトレーゼの店でも人気のアイスなど数々のスイーツや、自社で経営する山梨のワイナリーから直送するワインも販売している。車で来る人がいないような立地なので、150円で専用の瓶を買えば、740円で詰め替えを購入できる格安のワインは、入口から入った正面に陳列し前面に出している。

ヤツドキのワイン
「ヤツドキ」オリジナル商品として開発した、「八ヶ岳南牧村契約農場 しぼりたて牛乳のカスタードシュー」(250円)は、発酵バターの芳醇な香りが特徴の皮に包まれ、濃厚な北海道産純生クリームや、臭みがなくコクのある特別飼育卵も使うなど、素材にこだわって贅沢な味に仕上げた。
「八ヶ岳明野村契約農場 うみたて卵のプリン」(250円)も、南牧村の牛乳、特別飼育卵、北海道産純生クリームを使っている。
さらに、「国産和栗の生モンブラン」(640円)は、店頭での仕上げにこだわった商品で、南牧村の牛乳、特別飼育卵のカスタード、北海道産純生クリームを使うのはもちろん、和栗を収穫後に最小限の加熱で加工して旬のおいしさを引き出した栗の渋皮煮や栗ペーストをふんだんに使用している。

国産和栗の生モンブラン(ヤツドキ)
このような新しいチャレンジばかりでなく、海外もシンガポール、香港、インドネシアなど9ヶ国に60店を出店し、拡大中である。
こうして見ると、シャトレーゼには死角が見当たらない。強いて言えば「ヤツドキ」が都心部店の経験不足ゆえ伸び悩む可能性もないではなく、韓国の店舗が国の事情で厳しいとも推測されなくもないが、一大事には至らないだろう。
まだ四国をはじめ9つの県に店舗がなく、しばらくは出店の余地がある。価格以上の価値がある商品を供給し続ける限り、未来は明るい。
image by: シャトレーゼ , 長浜淳之介