ついつい買っちゃう秘密~ハロウィンよりクリスマス
歩いているだけでもロフトが楽しい秘密は、魅力的な商品だけではないという。
例えば、角度のついた独自の棚の置き方。「斜めになっていると、お客様の目が当たる場所が非常に増えるんです」(安藤)と言う。一般的な売り場は直線的に棚を並べることが多いが、ロフトの売り場はあえてギザギザに棚を置き、客がなるべく多くの商品に出会えるようにしてある。
安藤は、独自の売り場作りでもロフトの好業績をたたき出してきた。売り場のあちこちにあるプレートもそんな作戦の一つだ。
あるコーナーに掲げられているのは「ENJOY GAME」。クリスマスはゲームを楽しみませんかという提案だ。家族で楽しくなれそうなゲームを厳選して集めてある。一方、「WARM LAND」というプレートが掲げられたコーナーは「おしゃれに温まりませんか」をテーマにしている。
こうした、ジャンルに関わらず、テーマで商品を集めることを、ロフトでは「房(ふさ)」と呼んでいる。
「ブドウの房はいくつもの粒が集まってできているじゃないですか。一房、一房がテーマを持っていて、それを粒が構成している」(安藤)
売り場を、客の生活に寄り添ってつくるのがロフト流なのだ。
「今の暮らしの楽しみを追求するテーマは何かと考えて、それに面白いタイトルをつけて、商品を合わせていく」(安藤)
その安藤が今年、売り場作りの変更を指示していた。ハロウィン直前の10月の取材中、安藤は「今ハロウィンはああいう状態じゃないですか、渋谷とかも大騒ぎで。我々はそんなに取り組みたいモチベーションはなくなったので、もう一度クリスマスをゆっくり楽しんでもらえる商品を増やしています」と語っていた。安藤は近年のハロウィンの大騒ぎを快く思っていないようだった。
ロフトは今まで以上に力を入れ、クリスマスの売り場を充実させることにした。テーマは、家族で過ごす暖かなクリスマス。完成したロフトの売り場は、クリスマスとは思えない輝きに溢れていた。ロフトの思いは常に人々の気持ちを豊かにすることにある。

~村上龍の編集後記~
「今年はハロウィン関連商品を置くのを止めた」という姿勢は印象的だった。渋谷の喧噪が嫌いというわけでもなく、結果的に「流行を追う」形になるのがいやだったのだろう。
80年代後半のロフトは衝撃的だった。安藤さんを含め三人の若者が世界中から商品を仕入れた。直営だけで100店舗に拡大した今もなお、その価値観は、維持されている。「他がやらないことをやる」ということだ。
手帳は圧倒的で、マニアックなものもあるが、コンセプトは繊細だ。奇をてらわず、客の想像を超える、それが安藤さんの「雑貨道」である。
<出演者略歴>
安藤公基(あんどう・こうき)1958年、東京都生まれ。中央大学卒業後、1981年、西武百貨店入社。1987年、渋谷西武ロフト館開業。2008年、仙台ロフト、梅田ロフト館長。2016年、社長就任。
(2019年12月5日にテレビ東京系列で放送した「カンブリア宮殿」を基に構成)