ZOZOのサイトには、「靴選びにおいては、着用サイズの「大きい/小さい」や、甲高・幅広・外反母趾などの、人それぞれの足の形状によって、快適な履き心地が異なるため、ECで購入する際の「サイズ選びの不安」や、「試着の必要性」などの課題が衣服に比べ多くあります」と書かれています。
確かに、リアル店舗で既成の靴を買っても、試しばきをして、「ぴったりだ」と思って買っても、実際に履き始めると、甲が当たって痛かったり、幅が広すぎてスカスカだったりと、面倒なことは多いですよね。ビジネス用の革靴だとなおさらです。
私はこの前、ふるさと納税の返礼品で、初めて靴をオーダーメードしました。オーダーメードだと、足のサイズだけではなく、足幅の広さや甲の高さなど、かなり細かく聞いてくれます。そして、実際に出来上がった靴を履いてみても、かなりぴったりとフィットするのです。
しかし、靴をネットで買う場合は、「試しに履いてみる」ということができないので、「買ったはいいが、履いてみたらフィットしなかった」ということになりがちです。なので、これまでは、「服はネットで買うけれど、靴はちょっとな」という人も多かったはずです。
この、「サイズが合わないかもしれない」という不安が、前半で述べた「お客様が失う損失」です。ZOZOではそのようなお客様の心理的な損失、すなわち、「困りそうなこと」を解消しようとしているのです。
伊勢丹が靴売り場で売っているコト
この動きに目をつけたのが、三越伊勢丹ホールディングスです。紳士靴向けの計測器を伊勢丹本店に入れたとのこと。15秒ほどで計測できるらしく、その後に、顧客の足に合う商品を推奨するそうです。
この背景には、スーツをぴったり着るというような人が減り、また、カジュアルな服装で通勤する人たちが増えていることから、革靴の需要が減っていることがあります。確かに、ベンチャー企業やIT関連の人たちでいえば、Tシャツにジーンズというスタイルが一般的ですよね。
反面、オーダースーツも比較的安価に作れるようになったり、以前このメルマガでも紹介した鎌倉シャツの、オンラインでのオーダーもできるようになってきたりと、ビジネスファッションにこだわりを持つ人たちが、増えていることも事実です。このような、伸びている市場を狙っての、伊勢丹の靴のサイズオーダーです。
デパートの靴売り場では、どこでもほぼ同じような品揃えになってしまいます。立地条件や、ポイントシステムも大事ですが、このようにフィットする靴を選べる、という「お客様の損失回避」があると、ちょっといい靴は伊勢丹で買おうかな、という心理が働きますよね。
マーケティングでやるべきは、大きいか伸びている美味しい市場を見つけて素早く参入すること。そして、お客様の悩みや課題を解決してあげることです。今回の伊勢丹は、ZOZOのテクノロジーを見て、さらにこの2点に目をつけた施策をとっている、というわけです。
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