実は怖くない。人気税理士が紹介する税務調査リアルドキュメント
(2)どのような項目がチェックされるのか?
税務調査では時間の許す限り、通常の対象期間である3期間分の経理処理等を網羅してチェックされます。具体的な項目を列挙すると次のようなものがあります。
(法人税関係)
- 売上の計上漏れや除外はないか?今期計上すべき売上高が翌期に計上されてないか?
- 帳端分(請求書締日~決算日の売上高)の漏れがないか?
- 在庫・仕掛品・仕掛工事や制作中の案件に関して正しく評価して在庫計上されているか?
- 出張旅費規程は作成されているか?
- 交際費・会議費・福利厚生費を正しく区分経理しているか?
- 修繕費の中に資産計上して減価償却すべきものはないか?
- 保険料の中に資産計上すべきものはないか?
- 融資の信用保証料の繰延前払処理は正しいか?
(消費税関係)
- 課税・非課税・不課税の区分は適正か?
- 外注費について雇用契約と判断できるものはないか?
- 簡易課税に関して業種区分(第一種~第六種)に誤りはないか?
- 一般課税に関して仕入税額控除の要件(帳簿・請求書等)を満たしているか?
(源泉所得税関係)
- 架空人件費の計上はないか?
- 「扶養控除等申告書」の提出はされているか?(※源泉徴収を適正に行うための必要書類であり、これがないと高い税率で徴収されることになる。)
- パート・アルバイトも正しく源泉徴収しているか?
- 退職金に関して源泉徴収されているか?「退職所得の受給に関する申告書」は作成されているか?
- 役員退職金に関する株主総会議事録や役員退職金規程が作成されているか?
- 非常勤役員の給与は不相当に高額ではないか?
- 給与課税(=源泉徴収)されるものに漏れはないか?(賄いなど)
業種ごとに重点的に調査されるポイントはあるものの、基本的に網羅的にチェックされると考えて下さい。
なお、調査において指摘された事項について、それを実際に修正することを『修正申告』と言い、次回以降改めるという行政指導に留まることを『指導』と言います。調査官のタイプにもよりますが、『この指摘事項はおかしい!』と思われた場合は徹底的に対抗することをお勧めします。交渉してそれが100%通るという保証はありませんが、全面的に受け入れなければならないとも限りません。
もちろん、プライベートで使われるようなブランドの衣服やカバン、腕時計等はまず交渉の余地無し。一方、車の減価償却費やゴルフ代、飲み代等は実態があれば経費性に何ら問題はありません。
『接待交際費のうち20%はプライベート使用分と考えて否認します』と言うタイプの調査官が稀にいます。調査官の言動は何事も正しいように聞こえるかもしれませんが、むやみやたらにこれに乗ってはいけません!この20%という否認率が実際に妥当なのかどうか?については、あくまで税務当局側に『経費性がないこと』を立証する責任があります。本当にこの20%分が完全プライベートなものであれば調査官の言い分は正しいですが、事実関係をしっかり説明して対抗出来るよう日頃から心掛けておきたいものです。
最後に付け加えておくと、世の中の多くの社長がそうであるように、税務調査に対して拒否反応を示すのは仕方がありませんが、調査官に対して異常なほどの敵対心を示すのも好ましくありません。彼らも人間。当然、調査能力が高い調査官もいればそうでない人もいます。優しくて融通がきく調査官もいればそうでない人もいます。なるべく双方が紳士的な態度で調査を卒なく進めてスムーズに合意に至り、調査が終結するのが会社にとって一番良いことです。
image by:shutterstock
税務調査
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