なぜ松下幸之助は、26人中25番目の取締役を社長に大抜擢したのか

 

2.高橋荒太郎さん(経理・マネジメントのプロ、松下の大番頭)

松下の経理制度・組織をつくりあげて近代的な経営システムの基盤をつくり、また主要事業も任せられて成し遂げています。松下さんが社内で唯一「さん付け」で呼んだ人で、経営理念について最も熱心で「ミスター経営理念」とも称され、松下さんにとっては得難い共感者である補佐役です。

高橋さんは朝日乾電池という会社で若くして常務をしていたのですが、同社と松下電器が業務提携しさらに資本交流も行われた時に、ただ一人請われて本社の監査課長として移籍することになったのでした。両社は事業上で交流が頻繁で、松下さんは高橋さんの力量を知っており、どうしても得なければならない人材として獲得したのでした。

高橋さんのその考え方「人の大事さ」「衆知を集めた全員経営」は、幸之助さんの経営理念と軌を一にしています。高橋さんは余り自己顕示欲がなくおもてに出ることはなかったのですが、経理および科学的管理法等の専門的知識・見識・実績においては深くて松下の組織・制度について先端を行く企業に育て上げました。

世界でも稀なこの時代の事業部制がうまく機能できたのは、幸之助さんの経営理念が機能されたこともありますが、マネジメントとして高橋さんのつくり上げた経理制度や目標予算管理や他では成功されたことのない本部経理(経理社員)制度が構築されたことによります。「経理のことは、とにかく任すから」の一言から起こったことです。

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