5月上旬に新規事業のアイディア募集を行うと、すると6,000案件の提案があり、そのなかから10件に絞り集中することとなりました。これが起り得るのは、HISにベンチャー魂つまり「夢と冒険」を求めてやり抜く姿勢が“文化”として根付いているからのことで、“いい意味の破壊”が、企業全体に浸透されているからのことです。
さらに言うと“いい意味の破壊”は“日常の革新”として進行しており、ホテルの人材不足を見つめてのロボット化が始まっていました。そしてここでの結実が、在宅勤務の不都合を反転させることのできるコミュニケーション・ロボット「temi」の登場でした。現在、子会社においての販売台数は前年比3.5倍と好評だそうです。
また、ラスベガスHISが苦肉の策として手探り状況で始めた「オンライン体験ツアー」が、大逆転の切り札になりそうなのです。観て、食べて、買ってが自由に選べるオンライン体験で、それも格安の10ドル~20ドルなので、すごく喜んでもらえ伸びているそうです。澤田さんは、これを現事業を超えるビジネスだと位置づけます。
ここで、さらに10件の絞られた事業計画が並行し進められています。スマート農業計画、培っているロボット化のIT技術を活用する農業研究の一環として、とりあえずトマト栽培を。そばづくりを習得して、海外店舗を通して日本の食文化の拡大を。どんどんつぶれている旅館、ホテルを買い取って再生を。等々です。
顧客と時代の欲求を満たすため、自身の持てる強みを最大限活用してイノベーションを行うことは“捨て身”の基本戦略です。HISは、なんとしても食いつなぎ、この危機の状況をフルに機能させたら、全社員が経験豊かな共同体意識の共有する知識労働者に変身して、過去のどの企業とも違った“強みを持つ企業”に成長します。
ただ、旅行業の回復もそろそろ始まっている様子で、最大のピンチを最大に活かし切る前に、好況へと転換するかもしれず。絶好の機会である「不況さらによし」とならないのかもしれません。
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