オリエンタルランドの人件費
オリエンタルランドの人件費は2020年3月期の有価証券報告書によると、
- 142億円(給与・手当)+業務委託費(91億円)=約233億円
となっています。このうち、仮に700人の退職・契約期間を満了とした場合、年間約39億円の人件費が削減できる試算になります。(※対象1000人のうちの7割が対象・契約期間満了とした場合)
こうして見ていけば、今回の人件費削減という決断をしなければならない、オリエンタルランドが差し迫った状況であることが伺えるでしょう。
しかし、投資家はオリエンタルランドに期待を持って見ています。
計画的に資金調達を行う企業努力
オリエンタルランドは、常に最悪のシナリオを想定している企業ではないかと筆者は考えます。
オリエンタルランドは9月10日に総額1000億円の社債の発行条件を決めました。同社としては1998年以来、22年ぶりの大型発行です。調達資金は24年3月期に完成予定のパーク拡張工事などの投資に充てる予定だそうです。
また、銀行からの融資も確保しています。銀行があらかじめ設定した金額の上限内でいつでもお金を借りられる融資枠(コミットメントライン)の契約を結んでいるのです。
オリエンタルランドは投資資金を営業キャッシュフローでまかなう計画でしたが、入園者数の制限で収入が減少したことから、コロナの影響の長期化も見据えて、5月には銀行との間で2000億円の融資枠を設けました。
今なお混乱が続く状況ですが、計画的に資金調達を行っていることが分かります。
GoTo “東京解禁”で観光・旅行業界の景色は変わる!
菅政権下で、コロナを制し経済を回す方針であることに変わりはありません。そんな中、10月よりGoToに東京発着の旅行が加わります。
東京は感染者の人数が多いことから観光の選択肢としては敬遠されてきていましたが、東京解禁は大きな意味を持ちます。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは千葉県に位置しますが、GoToに東京都が解禁となれば全国的に人の移動が急増するのは間違いないでしょう。
そして、東京への人の流入増加の一部は近郊都市への波及効果もあると見られています。オリエンタルランドもその恩恵を受けるひとつだと見られています。
「美女と野獣」をテーマとした大型アトラクションなどがオープン
9月28日には「美女と野獣」、「ベイマックス」などの新アトラクションがオープンしました。もともと4月に開業予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていたエリアだけに、ファンからの注目度はとても高いようです。イベントやパレードを引き続き自粛する中で、人気を集めることは確実でしょう。
この先、21年度には「トイストーリー」シリーズをテーマとするホテルや、23年度には「アナと雪の女王」を含めた3つのエリアやホテルのオープンを計画しています。コロナの影響を大きく受けながらも、中長期的にも集客力をより高める努力を続けています。
SNSを見ると、「東京ディズニーリゾートが営業しているというだけで元気をもらえる」というようなツイートを多く目にします。このようなご時世ではありますが、オリエンタルランドの存在そのものがたくさんの人に勇気と元気を与えているのです。同社には夢の国を守っていかなければならないという使命のようなものがあるかもしれません。
今回の人員削減の判断は確かに厳しいものではあります。しかし、夢の国を愛しているからこそ、みんなで受け入れていく必要があるといえるでしょう。
image by : 著者提供