コンパが終わって、私は稲盛さんと一緒に帰途についた。そのときに稲盛さんはこう言った。
「本当に今日は久々に怒った。だが、みんな孫みたいなものだから厳しく言わないとしょうがないな」
と。確かにその時は凄い迫力だった。しかし、そこには、本当の孫に対するような深い愛情があったと思う。彼らも稲盛さんの本気と愛情を感じたに違いない。
その後、運航本部長から
「ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。しかし、コンパに参加したメンバーは本当に喜んでいました」
と連絡があった。
「これまで経営トップは都合が悪いと担当役員に任せきりで逃げていた。でも、稲盛さんは直接出てきて意見を聞いてくれた。駄目なことは駄目とはっきり言ってくれた」
と感激しているというのである。本音で話す、勇気をもって行動する、困難から逃げず真っ正面から取り組むといったことを稲盛さんは常々口にしているが、それを自ら体現された。また、そこには愛情もあった。
その姿を見てパイロットの卵たちも頑張ろうと思ってくれたである。結局、JALの再建は順調に進み、訓練は再開することができた。稲盛さんは彼らとの約束をきっちり守ったのである。
『JALの奇跡』(大田嘉仁・著 致知出版社)
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