【裁判傍聴記】女性宅から下着を盗んだ男「変な人と思われたくない」苦悩の選択とは?

 

そして被告人質問が始まった。こんな部分があった。

弁護人「(被害女性と)一度も話をしたことがないのですか?」
被告人「してません」
弁護人「なぜ」
被告人「突然話しかけても迷惑…変な人と思われるので…」

部屋に侵入して下着を盗み、自慰行為をして精液をかけ…そっちのほうが何万倍も「変な人」ではないのか、とは弁護人は突っ込まなかった。

小心な者は、というか小心な者ほど、自分だとバレなければ、つまり匿名の立場になれば、大胆な犯罪をやってしまう、そういう要素もあるのかも。

弁護人からの主質問は、普通にありきたりに(※)6分間で終わった。 ※私のようなひねくれたマニアからすれば、ということね。

検察官と裁判官は合計10分間かけた。よくある性嗜好障害が疑われ、本心の意思では再犯を防げない、カウンセリングを受けろ、ということが中心だった。

私は違和感を覚えた。前歴2件が女性下着の万引き、という話は出なかった。

本件は、いわゆる規範意識の薄さ、また、これをやったらどうなるか先を見通して自己をコントロールする、その能力の弱さ、に原因があるんじゃないか。

性嗜好障害の者が次々再犯して法廷へ出てくる、それをよく知っている検察官、裁判官は、本件被告人のなかにその萌芽を認め、ということもしれないが、だったら適切なクリニックを紹介してやれよ!と私は思う。

求刑は懲役1年6月。判決は翌々週と決め、36分間ほどで閉廷。

被告人の母親かと私が思った女性は、被告人を待たずにさっさと法廷を出て、大廊下を歩き、エレベーターに乗った。どこからどこまで、母親としてはおかしいふるまいだった。母親じゃなかったのだろう。

この夏休み、「コロナで帰省も行楽もできないのでちらっと裁判所へ」という感じの方がぽつぽつおいでのようだ。

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