クーデター直前にビルマを訪問していた中国外相
その中国との密接な関係は、NLDの成果と思われてきましたが、その密接な関係の下でも、常に国軍と中国との強い絆は存在しました。
新型コロナウイルスの感染がミャンマー国内でも広がる中、各国はNLD主導の民主化プロセスを止めてはならないと、支援を続けました。ロヒンギャ問題は懸念として残る中、欧米と中国の綱引きがここでも行われてきました。
欧米側のテコ入れの証がクーデターの前週にスピード決済された3億5,000万ドルに上る対コロナ緊急支援です。昨年に供与された3億5,000万ドルと合わせ、合計7億ドルが、他の国相手では起こりえないほど迅速に決済されたのは不思議です。中国もIMFの主要国ですので、この緊急支援には全面的に賛成し、後押ししたとのことですが、何か疑問が湧いてきます。
今回のクーデターを受けて、国軍が全権を掌握した今、NLD時代に受け取った7億ドルの緊急支援をIMFが回収することは不可能と思われますが、ここで得をするのは誰でしょうか?
間違いなくミャンマーの国軍とその政権は得をします。そして、本当に得をするのは、借金の焦げ付けを、IMFからの支援で補填できる可能性がある中国ではないかと考えるのは、私のうがった考え方でしょうか?
私は今回のクーデターに中国の色濃い影を感じてしまいます。
まず、今回のクーデターに対して「我々はミャンマーの有効的な隣国」と発言して静観し、中国の外交方針でもある内政不干渉の原則を明確に示しました。
また、2月2日に英国の呼びかけで開催された国連安全保障理事会の緊急会合(オンライン)の議論の中身を非公開に留めることを主張し、会合でも反国軍の議決を時期尚早で危険とまで発言して、葬り去りました。
国連安保理決議を背景にした対ミャンマー制裁は一応回避しましたが、欧米諸国及び日本やインドが独自に制裁を課す場合には、中国は国軍の後ろ盾として支援し、より関係、そしてコントロールを深めていくものと思われます。
もちろん、実際にどう動くかはわからず、国軍の勝手な淡い期待に終わる可能性も否定できません。
しかし、クーデター直前に中国の王毅外相がネピドーを訪問し、また、ミン・アウン・フライン国軍総司令官も何度も中国を訪問していることで、何かしら事前の打ち合わせがあったのではないかと勘繰りたくなります(一応、北京サイドはノーコメントとしつつも、「あくまでもコロナ対策での協力を申し出ただけ」ではないかとの非公式コメントを得ることが出来ました)。
では、中国サイドにはどのような思惑があったのか?