「確率」を理解できぬ大人たち。なぜ日本人は数学的思考が苦手なのか?

 

さて、私たちは今から確率というものを定義することになります。数学において最初にすることは「定義」です。数学は定義をしないと始めることができない学問ですから。

例えば皆さんは直角三角形の性質を表す「三平方の定理」をご存知でしょうか。

私たちはこの定理を覚える(あるいは理解する)ことが数学だと思ってしまいがちですが、そうではありません。

そもそも直角三角形がどんな三角形なのかが明確に定められてないと、直角三角形の性質を研究することなどできません。つまり「三平方の定理」も誕生していません。

数学で最初にすることは、定義なのです。

そこである教科書に書かれている確率の定義を確認してみましょう。

いきなりこのような記述から始まっています。

重要なのは「いきなりこの記述から始まっている」ことです。

【同様に確からしい】
ある試行においてどの根元事象が起こることも同程度に期待できるとき、これらの根元事象は同様に確からしいという

【事象Aの確率】
ある試行において各根元事象が同様に確からしいときについて、起こりうるすべての場合の数をN、事象Aの起こる場合の数をaとするとき、(a/N)を事象Aの確率といい、P(A)で表す。

P(A)=(事象Aの起こる場合の数)÷(起こりうるすべての場合の数)=(a/N)

おそらくあなたも学生時代にこのような記述を読まされ、これを理解しようと務めたことでしょう。

ここで書かれている定義に間違いはありません。数学的には正しいことしか書かれていません。

しかし私はこの教科書の定義にはある大きな欠落があると思っています(作成者には申し訳ありませんが)。

それは、以下の2つが記述されていないことです。

  1. そもそもこれは何を目的にして始まった話なのかを説明していない
  2. P(A)が何を意味するのかが説明されていない

ああ、これでは数学から離れる子供や学生が増えるわけだと思ってしまいます。

数学を理解している私でも、いきなりこんな記述を読まされたら「へ? なんの話?」と思います。

私からきちんと(極めてシンプルに)説明しましょう。

例えば、昔も「賭け事」が存在しました。

いかに賢く賭け事を制するか。これは人々の関心を呼びます。

ある数学者がこのテーマで研究を始めました。

そこで必要になったのが、「その出来事はどれくらい起こりやすいか」を把握する方法です。

結論としては、P(A)という数値により「その出来事はどれくらい起こりやすいか」を表現する方法としました。

それが確率と呼ばれるものであり、P(A)が大きいほど「起こりやすい」と評価するようにしました。

いかがでしょう。

そもそも何の話からスタートしているのか。なぜ確率というものを定義するのか。その数値の意味は何なのか。あなたに伝わっていれば幸いです。

そういう意味では、(申し訳ありませんが)一般的な数学の教科書はストーリーが書かれていないなと思います。

人間はストーリーで理解する。

これはビジネスに限らず様々な分野で語られていることであり、私もその通りだと思います。

もっとストーリーを使った数学を学ぶ素材を作って欲しいものです。(メルマガ『深沢真太郎の「稼ぐ力がつく! 数学的思考の授業」』2021年2月9日号より一部抜粋)

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