民主主義の沽券にかけて中国と一戦交える覚悟のアメリカ
では、アメリカは、習近平氏が期待するように、本当に撤退するのでしょうか?
答えはNOです。
それは、トランプ大統領の“功績”とも言われる台湾の国防能力のかさ上げにより、中国からの攻撃にある程度は持ちこたえることが出来るようになっているという事実が存在します。
バイデン政権になっても、台湾への肩入れと軍事的な支援は停止されず、逆に拡大傾向になるようですので、対中フロントラインとしての台湾を強化する方針は加速する模様です。
そして、第2次世界大戦後、その勢力の衰退は見られるものの、今でも民主主義・自由主義陣営の盟主としての地位は変わっておらず、アメリカはその立場から、台湾有事の際には必ず中国と戦うことになります。
そしてその姿勢は、台湾を護るという一義的な目的のみならず、アジア地域のアメリカの同盟国に対しても、“有事の際には、アメリカはフルにコミットして、皆さんを護るよ”というメッセージを送ることになります。
ゆえに、戦わなければ、アメリカはアジアを失うことになり、アジア各国は(日本を除けば)、中国の影響下に置かれるRed team入りを果たすことになりかねません。
以前、オバマ政権時代に、中国の軍のトップが【太平洋2分支配論】(アメリカと中国で太平洋の支配を半分ずつにしようとのアイデア)を提案しましたが、それが現実のものになるかもしれない瀬戸際とも言えます。
また、バイデン政権では、ホワイトハウスや国務省、国防総省、そしてCIA/DIAなどの情報機関に非常に分厚い中国専門家のチームを配置し、中国の行き過ぎた野心の動向を随時監視し、有事の際に、大統領が即時に対応できるだけの体制を、この政権初期という時期にもかかわらず、すでに揃えています。
習近平国家主席は【アメリカは、決して中国との戦争は行わず、台湾からも逃げる】という甘い見解を持っていると聞きますが、アメリカ側の姿勢を見て聴く限りは、いざとなったら民主主義の沽券にかけて中国と一戦交える覚悟があるようです。
もし2020年代、言い換えると2030年までに台湾を巡る米中での衝突が起きなければ、デリケートな安定と緊張が保たれる希望も見出せますが、実際にはどうでしょうか?
2023年に第3期目を目指す習近平国家主席にとって、宿願である台湾の統合(大中華帝国の大復興)のめどが立たない場合、求心力が一気に低下することも考えられることから、今年から来年に何らかの動きを取る可能性があります。もしくは2023年の全人代を乗り越え、めでたく3期目を務めることになったら、次の5年の間に、確実に台湾を狙いに来ると、私は見ています。
彼が就任来、繰り返すOne China政策もそうですし、このところ頻出する【大中華帝国の大復興】というコンセプトの達成と実現に残された最後の1ピースが台湾です。
もし、アメリカやその同盟国(日本も含む)が明確に台湾の自由を守る姿勢を打ち出すことが出来なければ、恐らくアジアの大半が、中国の紅色に染まることになるかもしれません。
アジアはもちろん、アフリカ、中東などでも高まる米中対立の緊張。習近平国家主席が描く未来図がかなえられるのだとしたら、それは、欧米を中心とする自由民主主義体制の結束の終焉を意味するのだと、私は思います。
皆さんはどうお考えになるでしょうか?またご意見、ぜひお聞かせください。
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