日本のアパレルを薄利多売から脱却させる「一点モノ」の潜在能力

 

4.アート服のビジネスを考えよう

服でもこういう考え方はできないだろうか。最初から量産品を作るのではなく、一点もの、少量生産、量産の三段階を考える。ファッション専門学校の卒業製作やデザインコンテストに登場する服は、実用には適さない一点ものである。こうした服をアートとして販売、あるいはレンタルすることはできないだろうか。

例えば、服を「人間が着られる柔らかい彫刻」と定義する。そうなれば、鎧のような金属製の服から、小林幸子の舞台装置のような衣装、コスプレに近い衣装まで、幅が広がる。金属、皮革、プラスチック、シリコン、和紙、ゴム、石など、様々な素材を駆使した着られる彫刻である。この彫刻をボディに着せて、現代絵画や彫刻のようにビルの入口に並べる。あるいは、高級ホテルのエレベーター口の横に配置する。建築の一つの要素としての服である。

あるいは、収集対象としてのコレクションを想定した服はどうだろう。一部のロリータファッションはコレクション用に購入されているらしい。この場合、例えば、人形が着るようなミニチュアでも良いのかもしれない。

服がアートとして成立するか否かは、リセールの価格で決まるだろう。例えば、プレミアがついて、最初の価格より高く流通するようになれば、アート投資の対象になる。海外生産で安く作って安く売ることばかりを考えずに、いかに高く売るかを考えることが必要だと思う。ファッションが再びアート価値を持てば、新たなファッションビジネスが生れるに違いない。

編集後記「締めの都々逸」

「オート・クチュール 見たことないが 何やらきれいで ありがたい」

現代社会って、一点モノを作ることはほとんどないですよね。必ず複製品を大量に作る。しかも、再現性を求めるんです。大量に作らないと、流通に乗らない。しかし、ネット社会ならば、一点モノでもいいですよね。できれば、最低価格を決めてオークションを行う。落札者がいなければ、売らなければいいのです。

そういえば、東京コレクションのスポンサーって楽天ですよね。楽天オークションでコレクションの一点ものを販売すれば面白いのにね。高値で落札されれば、それもニュースになるし。そもそも、プロの評論家がいない東京コレクションでブランド価値が出るとしたらオークションしかないんじゃないかな。(坂口昌章)

image by:Alena Vezza / Shutterstock.com

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