変わらない・変われない日本-どこへ向かうのか?
私たちの日本は、この10年間どうだったでしょうか?
東日本大震災、福島第一原発の事故からの10年間は、様々な側面で漂流しつつ、何とか立ち位置を定めようとした10年間だったように思えます。
エネルギー政策、特に原発をどうするのか?という側面については、わざとかどうかは分かりませんが、あえて結論を出さず、脱炭素の旗印の下、再生可能エネルギーの利用拡大を謳いつつ、欧州各国から叩かれる石炭火力発電を盾にして、一度は下火になった原発再稼働の推進と新規建設の可否といった議論が復活してきています。
その是非の判断はお任せしますが、日本の変わらない部分の典型例かもしれません。
経済はどうでしょうか?
のらりくらりとしながら、それなりの回復を遂げています。ただし、雇用体系は大きく変わり、そして個人所得をベースにした貧富の差は広がりました。GDPは中国に追い抜かれ、振り返ればインドが近づいてきているように思われますが、それでもまだ世界第3位の経済大国です。国際社会において、決して捨てたものではありません。
政治はどうだったでしょうか?
評価が分かれるところですが、これまでの10年間のほとんどは、安倍政権下での政治運営でした。安定をもたらし、経済を回復させ、外交面での日本のプレゼンスを挙げたという成果は評価できると思います。
しかし、何かを生み出したか?と言われれば、私はわかりません。ただ、あのトランプ大統領を上手に扱い、日本をトランプ政権のアメリカの“敵”にしなかった点は、大きな成果ではないかと思います。
ただ、この10年の間いろいろとあったにもかかわらず、日本は大きくは変わらず、また変わりたくなかったのではないかと思います。それで何とか東日本大震災後の10年を生き延びたといえます。
しかし、コロナが世界を襲い、私たちの在り方を再度問うようになった今、日本の“変わらない・変わりたくない”が、国際情勢の現場でどの程度通用するかどうかは疑問です。
外交上、アメリカと密接な関係がありつつ、中国とも面白い距離感を保てる国は恐らく日本ぐらいで、非常に稀有な存在だと思います。
中国の経済力は、日本とて無視できない相手ですので友好的な関係の深化は望ましいと思いますが、尖閣諸島問題に現れるように、明らかに安全保障上の危機の根源となっているのも中国ですので、今後、どのような付き合い方をし、どのように中国に働きかけていくのか、日本の戦略と実力が試されるのだと考えます。
東日本大震災と原発事故から10年経ちますが、まだその傷は癒えていません。しかし、混乱を極める世界・国際情勢は、私の個人的な意見と希望でもありますが、特殊な立ち位置を確保し、大きな経済力と影響力を持つ日本を必要としていると考えます。
これから10年の間に、どのように国際社会において振舞うのか。変えるべきところは変え、維持するものはしっかりと残し、明確な方針を示すべきではないかと期待しています。
この10年間、皆さんにとってはどのような時間だったでしょうか?
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