新型コロナウイルスの感染拡大に関連した解雇や雇い止めが止まりません。厚生労働省の統計によると、すでに4万人を突破し、毎月1万人ペースで増えているといいます。職を失った場合、失業手当を受給することが大切ですが、雇用保険の失業給付と年金を同時に受けることはできるのでしょうか?メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんがその疑問に答えるとともに、お得な裏ワザを紹介しています。
失業手当と年金を同時に受給することはできるのか?
65歳前の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金。以下、特老厚と老齢厚生年金は同一のものとします)と雇用保険からの失業手当(基本手当)の同時受給はできない事は今まで申し上げてきましたし、事例としても取り上げてきました。
失業手当を貰うならば特老厚は全額停止になる。
老齢の年金は本来は退職して完全に隠居した人に対して支給されるものであるのに対して、働きたいんだけど職がまだ見つかっていない人に支給するのが失業手当。職を探してるという事は引退したわけではないので、失業手当を優先的に支給する事にしています。
昔(平成10年3月31日までに老齢の年金の受給権が発生した人)は同時受給できる時はありました。ただ、景気がますます悪くなってきた時代でもあり、社会保障の二重払いだとの指摘もあって同時には受給できなくなった。さらに、同時に貰えると職を探す意欲を阻害する要因にもなっていたので、改正されて現在に至ります。
ところで、65歳前から老齢の年金を貰える人というのは支給開始年齢が完全に65歳に引き上がる2030年をもって居なくなります。なので失業手当と年金との調整というのはその時にほぼ無くなる事になります。
まあ、65歳以降も雇用保険に加入できるようにはなったので、今後失業手当が65歳以降も普通に貰えるようになれば、65歳以降の年金と失業手当を調整するというような事が出てくるかもしれません。雇用70歳というのが定着してくればそうなるかもしれないですね。
なお、支給開始年齢が完全に65歳になった後も、60歳を過ぎればいつでも減額した年金を受け取れる「年金の繰上げ」はできるので、その年金の繰上げをした人が失業手当を貰おうとする時は年金が全額停止という事は普通にあり得ます。
年金と失業手当は同時には貰えませんが、今回は同時に受給する場合と、特別支給の老齢厚生年金と失業手当を同時に受給したような形になる場合を見ていきましょう。ちょっとした合法的な裏技ですかね…。
年金と失業手当を同時に受給する場合
1.昭和34年7月14日生まれの男性(現在は61歳)
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この男性の厚生年金支給開始年齢は64歳です。64歳からの特老厚は108万円とし、65歳からは国民年金から老齢基礎年金70万円と老齢厚生年金の差額加算1000円、配偶者加給年金390,900円が支給されるものとします。
この男性は60歳以降も再雇用で引き続き標準報酬月額20万円の給与で働いてるものとします。ちなみにこの男性はしばらく年金が貰えないですが、生活資金が足りなかったので早めに年金を貰う年金の繰上げを60歳時に請求したものとします。
老齢厚生年金(報酬比例部分)は64歳から貰いますが、それよりも48ヵ月早く貰う事になるので0.5%×48ヵ月=24%の年金減額となる。老齢基礎年金は本来支給の65歳より60ヵ月早く貰うので、60ヵ月×0.5%=30%減額になる。
老齢厚生年金の差額加算も本来支給の65歳より60ヵ月早く貰うので、1,000円×(100-30)%=700円となる。
ただし、差額加算の減額分300円は差額加算からは引かずに、当分の間は報酬比例部分から差し引く事になっており、全額の1,000円で支給する。
よって、60歳時には繰上げ老齢厚生年金(報酬比例部分)は108万円×(100-24)%=820,800円となり、繰上げ老齢基礎年金は70万円×(100-30)%=49万円となる。
60歳から(報酬比例部分820,800円ー差額加算の減額分300円)+差額加算1,000円+49万円=1,311,500円(月額109,291円)
加給年金は減額対象外であり、通常通り65歳からの加算となる。
なお、60歳以降に在職しながら老齢厚生年金を貰う...