今夜22時半より「2月米雇用統計」が発表されます。金利動向が不安定で株式市場が荒れていますが、そんな中での最重要指標の発表となりますから、注目していきましょう!(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)
金利高でドル高加速!為替市場は緩和縮小、利上げ意識のトレードに
年末から続いていたドル安が一服、徐々にドルが買い戻されるという流れになっています。
背景としては、米長期金利(10年債利回り)が挙げられますが、それ以上にポイントとなっているのが中央銀行、FRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和縮小)観測でしょう。
バイデン大統領が誕生した年末には、1.9兆ドルという大規模な追加経済対策による赤字拡大を意識したドル売りというのが続いていました。
しかし、ここに来て想定以上にワクチンの生産・供給が進んだことから、当初よりもずっと早く米国経済は回復し、政府の財政政策や中央銀行の量的緩和が必要なくなるのではという見方が強まっています。
米ドル/円 日足(SBI証券提供)
これまではワクチンの供給不足が叫ばれていましたが、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンが承認されるなど、米国では年内にも余るほどのワクチンが供給されるのではと見られています。
一方、日本は英米、欧州と比べてワクチン接種の進展が遅れており、経済の停滞が想定されることから、まだまだ緩和的な政策が必要との見方で円売りとなっています。
このように当初の想定とは異なる材料が出てきたことで、ドルがジワジワと買い戻される結果となっています。
そして、FRBの2大責務の1つである雇用の最大化が達成されれば、いよいよテーパリングということで今夜の雇用統計は非常に重要な意味を持つことになります。
Next: 先行指標は改善傾向が見られるも、期待されていたほど順調ではない
改善傾向は見られるが期待されていたほど順調ではない
それでは、先行指標や事前予想値を確認していきましょう。
図1:先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
全体的にはまずまずといった感じですが、市場がテーパリングを懸念するほどの強さというのは見られません。民間会社の発表する全米雇用報告も雇用者数は横ばい気味ですし、新規失業保険の申請件数も高止まりしたままです。
実際問題として、ここ数ヶ月の雇用統計は強めの数字が続いているものの、中身を見ると政府系の雇用が増えているだけで、民間雇用というのはあまり増えていないという現実があります。
事前予想値は前回からの反動期待もあって非農業部門雇用者数が+18.2万人と強めの数字となっていますが、ハードルとしてはなかなか高めの印象があります。トレードは下触れを想定して取り組みたいところでしょう。
ややスピード違反気味の上昇だが、引き続きドル円は「押し目」狙いで
未明のパウエルFRB議長の会見で期待されていた金利上昇の押さえ込みがないどころか、当面は静観する構えということで米長期金利の上昇に弾みがつき、ドル円も一足飛びで108円台まで上昇しています。
何度も繰り返していますが、ルールが変わってトレンドに変化があった時は、素直にそれに従った方が良いでしょう。
マーケットはかなり先を織り込んでいますから、仮に今回の雇用統計が弱くても無視する可能性すらあります。
ドル円は8ヶ月ぶりの水準に突入。流石に上昇ペースが早すぎるので、今日の雇用統計の数字次第では一旦調整下落もあり得ますが、非農業部門雇用者数が予想を大きく割り込む、マイナスになるというならともかく、プラス圏であれば過去のこととして、ワクチン普及後の未来を先取りした値動きが続く可能性は十分でしょう。
したがって、トレードとしては押し目買いを意識したいところでしょう。
Next: 今夜は「押し目買い」を意識。1ドル=107.00~110.00円を想定
今夜は1ドル=107.00~110.00円を想定
非農業部門雇用者数が+10万人未満となった場合は少し様子を見たいですが、多少割り込んだ程度で調整してくるならチャンスでしょう。
まずは107.20~107.60円レベルを1つの押し目と考えて、軽めに買って様子見。ずるずる崩れて107円台を割り込んでしまうなら一旦撤退です。
週末ですし流石に雇用統計で調整しそうなので、今の高値で掴む必要はないように思いますが、先を織り込む動きが続いていますから、その将来を完全に否定するような雇用統計の数字が出てこない限りは、ドル円、クロス円は押し目狙いでトレードしていきましょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年3月5日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による