今週はほとんど材料がない中で、4/21木のECB理事会&ドラギECB総裁会見だけが重要イベントになりますが、コンセンサスではノーアクションです。株価が強含んでいる間は追加緩和はなさそうですし、要人発言もリップサービスはなくなると見ています。(『元ヘッジファンドE氏の投資情報』)
注目のECB理事会・ドラギ総裁会見(4/21)見通し
先月の「緩和打ち止め発言」は何を意味する?
1月理事会後の会見でドラギECB総裁が宣言したとおりに、先月上旬のECB理事会では追加緩和が決定されました。しかも、マーケットにとっては最大限のご褒美とも言える国債買い入れ額増額まで含まれていたのでほぼ満額の回答です。
しかし、ドラギECB総裁は会見上、利上げ打ち止めとも取れる発言をしてしまったことで、マーケットには「ECBの追加緩和打ち止め観測」が急速に台頭してしまいました。
去年の第1回量的緩和時、昨年10月理事会後の会見で発言をした追加緩和時、そして今回3月の追加緩和時のチャートを見ると、今回ユーロは緩和後に上昇しているのがわかると思います。
ユーロ/米ドル 週足(SBI証券提供)
緩和をしたユーロが買われ、利上げをして次の利上げがいつかが課題なだけのドルが売られているのは、ECBの緩和が出尽くしと取られたからに他なりません。
尤も、国債は直後は失望で売られたものの、追加緩和の買いパワーで、ドイツ国債などはこの1年の高値圏に戻りました。
あれほど緩和に積極的なドラギECB総裁がなぜ唐突にマーケットを冷めさせるような追加緩和打ち止め発言をしたのでしょうか?先月ECB理事会以降の注目点は、この「なぜ打ち止め発言をしたのか」という点につきます。
3つの可能性
考えられる可能性は3つあります。
- 物理的に無理と考えている
- 米国やG20の圧力でこれ以上の緩和が通貨安政策と取られかねない
- マイナス金利をこれ以上拡大させると、緩和をする真の目的である欧州金融機関救済の逆効果になる
当初、私はマイナス金利のみ打ち止め発言をしたため、欧州金融機関が噂ではなく本当に危機的なのかもしれないと予想しましたが、直後にプラート理事が「必要なら追加利下げは可能」と発言しています。
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揺れるECB要人発言、その真意はどこにあるのか?
この3週間ほどECBの要人たちは、繰り返し更なる追加緩和を匂わせる一方で金融政策の物理的な限界についても言及していました。
なので、打ち止め発言は、「これ以上マイナス金利を拡大させると実体経済に悪影響を及ぼしかねない」という物理的限界があったのだろうと思われました。
しかし、先々週までに出た発言では追加緩和への意欲だけで物理的限界については触れられていませんでしたので、マイナス金利拡大が欧州金融機関にネガティブになる側面に配慮した可能性が高いと予想していました。
その後追加緩和に前向きな発言が増えたのは、追加緩和出尽くしと取られることも、欧州金融機関にとってネガティブになるからでしょう。
実際、欧州株が上昇した先週は、従来より追加緩和に消極的な発言が増えています。
いずれも早急な追加緩和の必要性に対し言及をしていませんし、オーストリア中銀総裁は「物価上昇は中期的に考えるべき」と発言しているので、立て続けに追加緩和をするのに明らかに否定的です。
今週のECB理事会で追加緩和はない
株が上がると突如豹変する以上、追加緩和へのリップサービスは多分に欧州金融機関対策でしたし、先月のECBでドラギECB総裁がマイナス金利幅拡大の打ち止めに言及したのも欧州金融機関対策だった可能性が極めて強いです。
とすると、株価が上昇している中で行われる今週のECB理事会で、追加緩和が決定される可能性はきわめて低いでしょう。
目下、ECBの(公表できないけれど本心の)関心は欧州金融機関の経営不安対策であり、物価上昇は中長期的な目線で考えている可能性が高い以上、株価が強含んでいる間は追加緩和はなさそうですし、要人発言もリップサービスはなくなると見ています。
『元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2016年4月18日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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日本株のファンドマネージャーを20年以上、うち8年はヘッジファンドマネージャーをしてきたE氏による「安定して稼ぐコツ」「相場の見方」「銘柄情報」を伝授していきます。