今回参加した株主総会はドトール・日レスホールディングス<3087>。都内の高級ホテルで行われ、第一会場だけでも数千人が入る広さでした。第四会場まで用意されていたというから驚きです。
会場内は、全体的に温和な雰囲気。株主からの質問も、応援に近いものが多かったように感じました。ドトール・日レスの株主は、そもそも、ドトールや日レスが展開している飲食店を利用しているファンが多いのでしょう。(『平林亮子の晴れ時々株主総会』平林亮子)
社長がすべての質問にしっかり回答。ただお土産は少し寂しくなった?
株主は「お土産」を楽しみにしている!
株主総会への会場へと向かう途中で、小さな紙袋を持ったたくさんの人たちとすれ違うことがあります。そうです。株主総会には出席せずに、株主総会のお土産だけ受け取って帰っていく株主さんがいるのです。
今回も、たくさんの株主さん(と思われる人々)とすれ違いました(笑)。小さな白い紙袋を持った方々と、どれくらいすれ違ったことでしょう。お土産を中止したら参加者が減った株主総会もありますし、お土産を楽しみにしている人がどれだけいるかがよくわかります。
実際、今回の株主総会でも「年々、お土産が少なくなっているような気がします」という意見が株主さんから飛び出しました。
今回の株主総会は、第四会場まで用意されていました。私は第一会場にいましたが、第一会場だけで2000人くらいいたと思われますので、第四会場まであったとなれば、相当な数の株主さんが参加していたことでしょう。仮に1万人の株主が集まるとして、1人あたり100円のお土産を持たせると100万円。1000円のお土産で1000万円。規模の大きな企業であれば、そのくらいの予算は組めると思います。
もちろん、それを袋詰めしたり、会場まで運んだりするといった、準備のための手間や人件費を考えると、そんなに単純な話でもありませんが。
ただ、今回のお土産には、なんとなく寂しさを感じました(笑)。店舗で使える1000円分の金券が入っていて、そのほかに缶コーヒー1つ。それなりの額にはなるものの、お店のロゴも入っていない白い紙袋に入っていて、見た感じが寂しかったのです…。
もしも自分が株主総会の担当者で、お土産について考えるとしたら、どんな工夫ができるかな、などと考えてしまいました。株主総会出席者限定のノベルティグッズを作るとか、何種類かの中から選べるようにするとか。
自分だったらどうするか、という視点を持って株主総会に出席するのも面白いと思います。
会場からは笑いも。印象的だった株主からの質問
さて、今回参加した株主総会はドトール・日レスホールディングス(以下「ドトール・日レス」)。会場内は、全体的に、温和な雰囲気。株主からの質問も、応援に近いものが多かったように感じました。ドトール・日レスの株主は、そもそも、ドトールや日レスが展開している飲食店を利用しているファンが多いのでしょう。
そんな中、印象的だった株主からの質問が2つ。
1つは、「株主総会での株主からの質問に答えるのは、いつも星野社長ですね。話したがりなのですか?」という趣旨の質問。会場があたたかい笑い声で満たされました。
社長からは、「私が話したがりだからということではありません。質問内容によっては他の役員がお答えします」と笑顔で回答がありました。
社長がすべての質問に対応できるというのは、それだけ、きちんと経営しているという証拠だと、私は解釈しています。大きな組織では、日々の判断や権限は委譲されているでしょうけれど、私の知っている上場企業の社長さんや役員さんは、みんな、会社全体をきちんと理解していて何を聞いても答えられる方ばかりです。
さて、もう1つ印象に残ったのは、「新任の取締役候補、監査役候補の意気込みを聞きたい!」という質問というか、要望です。
社長は、「選任後に挨拶します!」と回答しましたが、このやり取りが印象に残ったのは、今回、新任取締役候補に40代女性がいたためです。時代の変化を感じました。
2015年に出席した株主総会では、いろいろな企業で、「女性の活用はどうなっているのか?」「女性の役員がいないが、会社の方針を聞きたい」という質問が株主から寄せられていました。
そして、2016年は、ドトール・日レスのような大企業で40代女性取締役が生まれました。
女性はこれまでも活躍していたと思いますし、取締役になっただけで、「活躍している」と結論付けられるわけでもないでしょう。とはいえ、規模の大きな上場企業で、その企業に入社して昇進して、女性役員になるという女性の働き方が生まれてきたというのは、大きな変化だと思います。
男性が中心になって築いてきた「会社」という組織の中で、女性が上手に力を発揮できるのかどうか、正直、私にはわかりません。もしかすると、女性が活躍するためには、役員になるのではなく、違う方法が良いのかもしれません。
ただ、それも、チャレンジしてみないことにはわかりませんから、こうした新しい流れを、会社も社会も、まずは温かく見守り、応援してほしいと思います。
ちなみに、ドトール・日レスの(女性)取締役となった合田知代氏は、子会社の取締役を何年も務めています。その上でのホールディングスの取締役への起用ということですから、経験も実力もしっかりと評価されてのことと推測します。取締役に選任された後の挨拶も、堂々としていて、とても素敵でした。
女性も男性も、適材適所で活躍できる社会であることを願います。
Next: ドトールのヘビーユーザーは本当にお得!変更された株主優待への質問と回答
新しい株主優待
ドトール・日レスといえば、株主優待を楽しみにしている株主も多いと思いますが、今年から、ドトールバリューカード(一定のポイント付き)に変更になりました。私の手元には、1000ポイント(1000円分)を付与されたバリューカードが届きました。保有株式数によって付与されるポイントが変わります。
ドトールバリューカードは、ドトールで使うことのできるプリペイドカード。チャージ時、商品購入時(利用時)ともにポイントがつくので、ドトールをよく利用するのであれば、本当にお得です。バリューカード会員の登録をすれば年間の購入額に応じて、チャージ時のポイント付与率が変わります。最大10%のポイントが付くのはすごいですね。
この点、株主から「毎年、1枚、バリューカードが送られてくるということですか?私はもう持っているし、何枚も持っていてもしょうがないのですが」との質問が。
私は株主優待でもらえるから、と、バリューカードを今まで作らなかったのですが、もう持っている人にしてみれば、ポイントは欲しいけれどカードは必要ないですよね。
社長からの回答は、「毎年、1枚、送付する予定です。ぜひ、周囲の人にプレゼントしてあげてください!」とのことでした。
余談ですが、サンマルクカフェを運営しているサンマルクホールディングスの株主優待は、20%オフカードです。もともと、コーヒー一杯200円ほどでいただけるサンマルクで20%オフになるのですから、本当に安くて便利なカードです。
そうそう、ドトールのバリューカードについては、枚数限定のブラックカードなるものがあるらしく、以前から利用頻度の高かったドトールのヘビーユーザーはブラックカードを入手できたようです。
この点、「私はブラックカードを入手できたはず(入手する権利があるヘビーユーザー)なのに入手できなかった。今、ネットオークションで高値で売買されている」と訴えていた株主がいました。
ドトールバリューカードのブラックカードについて、インターネットで調べてみるとどうやら、当初からポイント付与率が10%で、年間購入額にかかわらず、ずっと10%が続くという特別なカードのようです。
ドトールバリューカードもクレジットカードも、特別なのは「ブラック」なのですね。
大株主に注目!
ドトール・日レスは、その名の通り「ドトール」と「日レス」がグループになった企業。そのため、ドトールの創業者と日レスの創業者が、大株主として名前を連ねています。
一番の大株主は、昨年同様、大林豁史 (おおばやしひろふみ)氏。日レスの創業者です。大林氏は「最強の外食チェーン」の異名を持つ日本レストランシステムを創業して育てた方。大林氏は、東大卒で証券会社出身。勝手な解釈ですが、シェフというより経営者なのでしょう。徹底したレシピの管理など、コストや品質を一定に保つ仕組みを作り上げた方のようです。
二番目の株主も昨年と変わらず、株式会社マダム・ヒロ。これは、大林氏の奥様の企業のようです。そして、ここまでで、株の20%超を保有している状態。
三番目の株主は、昨年はドトールの創業者、鳥羽博通(とりばひろみち)氏でしたが、今年は、株式会社バードフェザーリンク。バードは鳥、フェザーは羽毛ですから、鳥羽氏の関連の会社でしょう。
昨年3位の鳥羽博通氏は5位に。鳥羽博通氏の株数が減り、その分、バードフェザーリンクの株式数が増えていますから、この二者間で売買があったのでしょう。相続対策かもしれません。
そのほかに、日本たばこ産業、山内実氏、鳥羽豊氏(ドトールの創業者、鳥羽博通氏の長男)が名を連ねていて、安定株主に支えられた企業と言えそうです。
Next: ドトール・日レス業績分析~営業利益、経常利益ベースでの増収減益をどう見るか
ドトール・日レスの業績メモ(百万円未満切捨)
ドトール・日レスの平成28年2月期の業績は以下の通り。
売上高:124,796百万円(1,247億9,600万円、前期4.0%増)
営業利益:9,466百万円(94億6,600万円、前期1.4%減)
経常利益:9,491百万円(94億9,100万円、前期5.9%減)
当期純利益:5,456百万円(54億5,600万円、前期4.5%増)
総資産:120,529百万円(1,205億2,900万円)
純資産:95,834百万円(958億3,400万円)
自己資本比率:約79.4%
執筆時点での時価総額:約951億円
営業活動によるキャッシュフロー:10,362百万円
投資活動によるキャッシュフロー:△4,713百万円
財務活動によるキャッシュフロー:△1,897百万円
キャッシュフローから妄想できることは、
- 営業活動によるキャッシュフローがプラスであることから、本業でしっかりお金を得ている
- 投資活動によるキャッシュフローがマイナス(△)であることから、投資をした
- 財務活動によるキャッシュフローがマイナス(△)であることから、配当をした
といったところでしょうか。
なお、営業利益、経常利益ベースでは、増収減益。売上は伸びましたが、人件費などの増加により減益となったようです。それでも、投資有価証券の売却益(特別利益)により、当期純利益は増加。できるだけ「増益」を維持したい、という意思のあらわれかもしれません。
ドトール・日レスホールディングス<3087> 日足(SBI証券提供)
編集後記~今回のお土産~
今回のお土産は、前述した通り「ドトール レアルカフェオレ」と「洋麺屋五右衛門の500円オフ券✕2枚」。昨年は、これに加えて「D&Nコンフェクショナリー 東京ぼーの」というお菓子がありましたので、確かに、少し寂しくなった印象でした(笑)。
『平林亮子の晴れ時々株主総会』(2016年6月6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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このメルマガでは、毎月どこかの上場企業の株主総会に個人株主として出席している公認会計士の平林亮子が、株主総会での体験を基に、株式会社や上場企業について思ったところを自由に語らせていただきます。