今回は、首都圏の駅前や繁華街で「熱烈中華食堂 日高屋」などの中華料理店を中心に展開するハイデイ日高<7611>について、現在と将来の企業価値を分析してみましょう。
以前に王将フードサービスを分析したときも、この業界は原油価格の影響を受けやすいことを示しましたが、最近の為替相場は円高傾向にあります。円の実質実効レートは円高がまだ続くことを示しており、長期的には、原材料費の調達は安く済む可能性が高いと考えます。
今後、国内に顧客を持ち、円高により利益を得ることができる銘柄は投資のうまみが増していくでしょう。ハイデイ日高もそんな企業の1つと言えます。(『バフェットの眼(有料版)』八木翼)
会社名:ハイデイ日高<7611>
現在株価:2,502円(7月8日終値=本稿執筆時点)
投資家にとっての「日高屋」の魅力、王将や幸楽苑との差とは?
Q1:その企業は消費者独占力を持っているか
そもそも中華というのは、大抵の人がおいしいと感じるものです。そんな中で、ハイデイ日高が目指したのは、10人が10人おいしいと言ってくれる料理ではなく、10人のうち5~6人がおいしいと言ってくれる程度だけれど、値段が安い料理です。
また、「幸楽苑」や「餃子の王将」と明確に違う戦略として、都心を攻めていることが挙げられます。そのため、駐車場のある店舗はあまりなく、これが安心して飲酒できる要因にもなり、顧客単価を引き上げているのです。
明確な消費者独占力を持っていると言えます。
Q2:その企業を理解しているか
理解しています。中華レストランです。それ以上でも以下でもありません。
現在は、関東をメインに出店しており、「日高屋」「来来軒」「中華一番」「ラーメン日高」「焼鳥日高」「かつ元」といった店舗を出店しています。
中華居酒屋版のファーストフード店といえるでしょう。
Q3:その企業の製品・サービスは20年後も陳腐化していないか
いちど顧客に受け入れられた飲食業が、陳腐化する可能性は低いです。
人は、毎日食事を選択する必要があり、外食に頼るのであれば、その選択は「行ったことがある場所」に偏ります。
賞味期限切れや異物混入など、大きな品質問題を抱えていたマクドナルドの業績もすでに回復してきており、人々はもうあの事件を忘れて、お昼の選択肢の中に入れています。
日高屋が選択される理由は何でしょうか?それは安くて、うまくて、お酒が飲めて、立地がいいことです。
出店は、マクドナルドや吉野家などが進出している近くを狙い(すでにマーケティング調査済みである場所)、調査の手間を省いています。
さらには、「幸楽苑」や「餃子の王将」と違い、積極的に飲酒をさせて客単価を上げています。どちらかと言うと、飲み屋的な需要を喚起する点では「サイゼリヤ」に近いのかもしれません。
ブランド力を持ちつつある日高屋が陳腐化する可能性は、非常に低いと言えるでしょう。
Q4:その企業はコングロマリットか
中華、居酒屋事業に特化しており、コングロマリットではありませんね。
さて次ページからは、より詳しくハイデイ日高の業績を分析してみます。素晴らしい数字が飛び込んできますよ!
Next: ニトリやABCマート以来のビッグウェーブ到来か!? 驚異的な成長率
Q5:その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長しているか
さて、大前提としてですが、10年分の1株あたり利益を計算すると、株式分割があり、ちょっとめんどくさいので、私の方であらかじめ処理したことをご了承ください。
実はハイデイ日高は、過去10年の有価証券報告書を並べただけでは、同じ1株の価値を比べられません。
平成24年3月1日付
平成26年3月1日付
平成27年3月1日付
平成28年3月1日付
で、それぞれ1株につき1.2株の株式分割を行っているのです。なんともわかりにくい(笑)
日経新聞のサイトなどには、この事実は表示されず、まるでEPSが下がったかのように出ているので、勘違いする人も多いのではないでしょうか?ある意味、ライバル投資家を振るい落としてくれるので、ありがたいとも言えますが…。
そうして見ると、素晴らしい数字が飛び込んできます。年平均EPS成長率は24.5%です。ちなみに、私が以前に分析した同業他社である王将フードサービスは成長率が12.1%ですから、その倍の勢い。
ちょっと恐ろしいですね。私自身の投資遍歴を振り返ってみても、文句なしに成功したといえる、ニトリやABCマート以来のビッグウェーブの予感です(笑)
決算年 EPS(円/株)
2015 114.89
2014 95.49
2013 88.98
2012 84.4
2011 67.6
2010 65.6
2009 49.2
2008 42.7
2007 39.0
2006 30.9
年平均EPS成長率:24.5%
Q6:その企業は安定的に高いROE(株主資本利益率)をあげているか
決算年 ROE
2015 15.4%
2014 14.4%
2013 15.0%
2012 16.0%
2011 14.4%
2010 15.8%
2009 13.3%
2008 12.7%
2007 12.8%
2006 11.1%
平均ROE:14.1%
高いですね。そして、なによりも安定しています。これもやはり素晴らしいです。
大抵の企業は、自己資本率が高くなってくるとともに、ROEの成長にも陰りが見えるものですが、ハイデイ日高の場合は加速しています。新規出店効果だけではなく、顧客が離れず、利益が蓄積されていることが見て取れますね。
Next: Q7:ハイデイ日高は強固な財務基盤を有しているか?
Q7:その企業は強固な財務基盤を有しているか
財務基盤を見る際は、自己資本率が良く使われますが、それはバフェット的にはNGです。長期債務に対して、どれだけ稼ぐ力を持っているかが重要と考えています。
今期の長期負債(円):450,000,000
今期の税引き後利益(百万):2,758,682,000
長期負債/税引後利益(年) :0.16
※長期負債を税引き利益で返済するのに必要な年数
ハイデイ日高の場合、全く問題ありませんね。
Q8:その企業は自社株買い戻しに積極的か
自社保有株式は、発行していないとみなしています。
今期発行済み株数:20,068,980
10年前の発行済み株数:20,068,980
過去10年間に減少した株数:0.00
減少した割合:0.00
特に自社株買戻しはしていないようですね。もっとも、成長中の企業ですので、自社株買戻しにこだわる必要は全くありません。
Q9:その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか
インフレ率を上回っていません。徹底的に安値を模索し、利益を確保するビジネスです。ビジネスモデルとしては、ウォルマートに似ています。しかしブランドは確立されており、顧客は確保されています。
Q10:その企業の株価は、相場全体の下落や景気後退、一時的な経営問題などのために下落しているか
PER:18.55倍
足元の株価は下落はしていません。しかし、高すぎるというわけでもありません。この利益率のレベルの企業では、むしろ安いのではないのでしょうか?例えば現在ニトリなどは、PER25倍を優に超えているからです。
Next: Q11:株式の利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと比較せよ
Q11:株式の利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと比較せよ。
以下は計算です。まずは株主資本の予想成長率を求めましょう。
【1.予想成長率を求める】
(必要な値)
10年平均ROE:14.1%
配当性向:25%
(式)
株主資本の予想成長率=10年平均ROE(1-配当性向)
(答え)
株主資本の予想成長率:10.6%
【2.予想BPSを求める】
さらに、今求めた、株主資本の予想成長率を使って、10年後の予想BPSも求めます。
(必要な値)
直近のBPS:787.37
株主資本の予想成長率:10.6%
(式)
10年後の予想BPS=直近のBPS×(1+株主資本の予想成長率)^10
(答え)
10年後の予想BPS:63996.6円 ¥2,150.1
【3.予想EPSを求める】
この10年後の予想BPSに、平均ROEをかけます。すると、10年後の予想EPSが得られます。
(必要な値)
10年後の予想BPS:¥2,150.1
10年平均ROE:14.1%
(式)
10年後の予想EPS=10年後の予想BPS×10年平均ROE
(答え)
10年後の予想EPS:¥302.95
【4.10年後予想株価を求める】
さて、予想EPSを求めたら、これに10年平均PERを掛ければ、10年後の株価を求めることができます。
(必要な値)
10年平均PER:13.9
10年後の予想EPS:¥302.95
(式)
10年後予想株価=10年平均PER×10年後予想EPS
(答え)
10年後予想株価:¥4,207.92
【5.年間期待収益率を求める】
10年後の予想株価を使って、年間にどれくらいのリターンが期待できるのかを計算します。
(必要な値)
10年後の予想株価:¥4,207.92
現在の株価:¥2,502
(式)
年間期待収益率=((10年後の予想株価/現在の株価)^1/10)-1
(答え)
年間期待収益率:5.3%
【結果】
あまり高くありません。これは発展途上の企業にはよくあることなのですが、過去10年の平均PERが低すぎるのです。
有価証券報告書に記載されているPERを使っていますが、10年分を平均したPERは13.9倍です。
例えば株式市場で人気が出れば、PERは平均して高い値となります。そうなれば、予測も高くなるわけですが、こればかりは先が見えませんね。
ちなみに、過去のPERが30倍であれば、予想成長率は13.5%まで跳ね上がります。
Next: Q12:株式を疑似債券と考え、期待収益率を計算せよ
Q12:株式を疑似債券と考え、期待収益率を計算せよ
【1.10年後BPSを求める】
まず10年後のBPSを求めます。過去10年の平均EPS成長率に1を足して、10乗したものに、現在BPSをかけます。これが10年後のBPSとなりますね。
(必要な値)
年平均EPS成長率:24.5%
現在BPS:787.37
(式)
10年後BPS=年平均EPS成長率^10×現在BPS
(答え)
10年後BPS(円/株):7034.3
【2.10年後EPSを求める】
今求めた10年後BPSに過去10年平均ROEをかけます。これが10年後のEPSです。
(必要な値)
過去10年平均ROE:14%
10年後BPS(円/株):7034.3
(式)
10年後EPS=10年後BPS×過去10年平均ROE
(答え)
*10年後EPS(円/株):991.1
【3.10年後予想株価を求める】
さらに、過去10年の平均PERをかけることで、10年後の予想株価が算出されます。
(必要な値)
過去10年平均PER(倍) :13.9
10年後EPS(円/株):991.1
(式)
10年後予想株価=過去10年平均PER(株価/EPS)×10年後EPS(円/株)
(答え)
*10年後予想株価:13,766.8
【4.年間期待収益率】
この予想株価を現在株価で割り、0.1乗し、マイナス1したものが、年間期待収益率となります。
(必要な値)
10年後予想株価(円/株):13,766.8
(式)
年間期待収益率=((10年後の予想株価/現在の株価)^1/10)-1
(答え)
*期待収益率(%/年):18.6%
【結果】
こちらは高い値を記録していますね。投下資本がしっかりと稼いでくれていることを示しています。
ROEの成長が、EPSの成長に大きく寄与していますね。通常であれば、投資資本に対し一定のROEを出すことができれば、投資資本がEPSを上昇させるため、安定してEPSが成長します。
その上にさらに、ROEの上昇というEPS上昇の要因が加わっています。
調理工場の稼働能力を超えない範囲であれば、店舗が増えるほど低い利回りで投資することができ、ROEがまだ伸びる可能性がありますし、高いROEを維持することができるのであれば、それも素晴らしいです。
Next: 結論:ハイデイ日高への投資はあり?なし?
結論:ハイデイ日高への投資はあり?なし?
今回、詳しく分析してみて、ハイデイ日高はかなり業績好調であることが分かりましたね。株価がもう少し低くなってほしいところですが、仮に今買っても成長は見込める水準だと思います。
ハイデイ日高<7611> 月足(SBI証券提供)
私は、気になった会社の株価が下がった時に買えるようリストにまとめていますが、このハイデイ日高という会社も、株価下落の際は即座に買い検討ができるよう、リストに入れておきたいと思いました。
継続は力なり!ダメでもともと(笑)八木翼でした。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年7月12日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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