米トイザラスが破産を申請しました。要因としてAmazonほかネットショップが実店舗の需要を奪ったためと言われていますが、それだけではありません。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
潰れる企業と生き残る企業は何が違うか?米トイザラス真の問題点
ビジネスそのものはまだまだやれる状況だった
米トイザラスが破産を申請しました。その原因は、Amazonをはじめとするネットショップが実店舗の需要を奪ったためと言われています。
確かに、トイザラスの売上高は減少していました。2012年に135億ドルあった売上は、2016年には115億ドルになりました。この間、景気は回復していることから、ネットショップの台頭という構造的な要因があったことは否めません。
出典:Annual Report ($ million)
しかし、改めて業績を確認すると、営業利益は2014年に1.9億ドル、2015年に3.7億ドル、2016年に4.6億ドルと順調に回復しています。売上高が減る中で、コスト削減は進んでいました。ビジネスそのものはまだやれる状況だったのです。
本当の要因は「財務状況の悪さ」
それでも、2016年の最終利益は2900万ドルの赤字です。4.6億ドルの営業利益はどこへ行ってしまったのかと言うと、ほぼ同額の利払費によって消えてしまっています。
借金が多すぎ、財務状況が悪いせいで借入金利も10%近くにまでのぼっていました。
出典:Annual Report ($ million)
ここまで財務状況が悪化した要因は、過去の無謀な投資にあります。店舗数を拡大するために、土地や店舗を担保にして借金を膨らませました。
当時の見通しが甘かったと言えばそれまでですが、財務状況の健全性をすっかり忘れてしまったことも大きな要因でしょう。
Next: 投資家は、環境の変化にも耐えられる「潰れない会社」を探せ
「よりリスクの小さい」企業を探すには
財務状況が悪い企業は、ビジネス自体は何とかやっていけても、ちょっとした環境の変化により途端に生き残っていけなくなる可能性が高まります。逆に言えば、財務状況が良い企業ならそれがバッファとなり、再び復活する可能性があるのです。
トイザラスにしても、しっかりとした財務バッファがあればネットへの対抗策を講じることができたかもしれません。子どもがおもちゃを買うのに、実店舗はやはり必要でしょう。
損益計算書ばかりに目が行きがちですが、「よりリスクの小さい」企業を見つけるためには、財務状況のチェックが欠かせません。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年10月4日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。