いまだトヨタを上回る時価総額の企業が登場しない日本。最近はM&Aに積極的なRAIZAPに勢いがありますが、かつて急成長を遂げようとしたライブドアは出る杭を打たれました。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)
プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。
フィットネス業界の枠破り快進撃、ライザップはトヨタ超えを実現するか
ダメな上場企業が多すぎる
現在の上場企業数は約3650社。直近の最新四季報(2016年12月16日現在)では、東証1部が2002社、東証2部が533社、マザーズ227社、JASDAQ760社となっています。これら以外にも名古屋1部、2部、セントレックス、札幌、同アンビシャス、福岡、同Qボードに465社(重複を含む)が上場しています。
毎年100社ほどのIPO企業がありながら、この数は、今から16年近く前の3600社に比べて大きく増加しているわけではありません。
この理由は、企業倒産や上場廃止などによって市場から退出した企業があるからに他ありません。株式市場では新陳代謝が進み、新規に上場する企業と上場廃止企業が入れ替わっているわけです。
とはいえ、現在の上場企業数は投資家からすれば多すぎると思うのですが、皆さんはどのように思われますか。余りに多くの銘柄があって、投資家も右往左往してしまってはいませんか。
IPOというのは成長意欲の高い企業の発展の登竜門と言えますが、残念ながら「夢破れて山河あり」状態の既存の上場銘柄は、ずるずると上場していても仕方ないのではないかと思ってしまいます。
上場している以上「成長」は使命
何のために上場しているかが分からなくなった企業は、退出するか新たなスキーム、新資本投入などで、ビジネスの再構築を図るべきかと思います。
上場企業は、未上場企業よりも社会的責任が大きく、何らかの格好で企業の存続が求められます。放置していれば上場維持すら危ぶまれる場合は、旗振り役の企業に公開買い付け等で買収してもらい、新体制で上場を維持しながら成長を目指すべきです。
上場している以上は、収益の拡大を図り、成長し続けないといけません。このためには経営の刷新を図り、新規事業にも挑戦していく姿勢が求められます。
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いまだ生まれない「トヨタ超え」日本企業
日本にはこれだけの会社が上場していながら、いまだにトヨタを上回る時価総額の企業は登場しません。電機産業がそうであったように、自動車産業がいつまでも社会、株式市場の中心であり続けるという保証はないと思います。
米国では、マイクロソフトに続いて、アップルのようなPC・スマホ関連企業が世界市場で活躍を見せたことで最大の時価総額となり、Google、Facebook、アマゾンといったIT活用型企業の活躍が目立ちます。
日本では、ソフトバンクグループやNTTドコモ、NTTデータ、ファーストリテイリング、各メガバンクが時価総額の上位に来ているだけで、相変わらずの定番評価。
出る杭は打たれるということで、かつて急成長を遂げようとしていたライブドアは泡と消えてしまい、世界を相手に成長できそうな企業はソフトバンクグループぐらいになってしまった。
明るい未来を予感させる、RAIZAPグループの快進撃
他にそんな勢いのある会社はないのかと考えていると、実際にありました。あの奇抜なテレビCMで知名度を高めたRAIZAPグループ<2928>。キャッチフレーズは「結果にコミットする」…。同社の元の社名は「健康コーポレーション」。瀬戸社長が率いる、美と健康に関連した企業です。
RAIZAPグループ<2928> 日足(SBI証券提供)
同社はこのところ次々に6社の上場企業をグループに収めています。それぞれはアパレル、雑貨、フィットネスというジャンルのビジネスを展開してきたオーナー系企業ですが、いずれも経営が思わしくなく、株式をRAIZAPグループに譲渡しています。RAIZAP自体もフィットネス事業の急拡大で事業規模を拡大。合わせてM&Aによって一段とスケールアップを図っている状況です。
苦境に陥った上場企業が同社グループに入ることで蘇り、双方がWINWINの関係に入ることがベストシナリオ。実際の事業戦略は買収後に本格化すると思われますので、来期以降の業績展開が注目されます。
どの企業が担い手になるかはともかく、存亡の危機となった企業がこうした旗振り役の企業とともに再成長を果たせば、株式市場にとっては明るい未来が待っているに違いありません。まだまだ多くの苦境に陥った上場企業があります。
RAIZAPが傘下に加えた6社の企業(パスポート、ジーンズメイト、マルコ、イデアインターナショナル、SDエンターテイメント、夢展望)を一度研究してみると参考になりそうです。
Next: M&Aによる値上がり益を得るチャンスは疲弊した企業の株にも
M&Aによる値上がり益を得るチャンスは疲弊した企業の株にも
熟年者向け旅行会社のニッコウトラベル<9373>が先般、三越伊勢丹に390円でTOBされるなど上場企業同士の再編が水面下では進展している可能性があります。
ニッコウトラベル<9373> 日足(SBI証券提供)
買手・売手でいうと、短期的には売手側の株式を保有していた投資家には表面に出た段階ではリターンがもたらされるのでしょうが、過去の高値で投資していた長期投資家にとっては泣く泣く手放すことになることもあるのかも知れません。
とはいえ、見るからに疲弊している企業の株式にも、好条件のM&Aで大きな値上がり益を短期的に享受できる可能性もあることを忘れないでおきたいと思います。
『億の近道』(2017年2月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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