マスコミの多くは、この夏、衆院解散・衆参同日選挙があると見ています。衆院解散の有無を左右する甘利大臣の収賄スキャンダルが気になりますが、市場関係者は選挙前の株価対策と追加緩和に期待を寄せています。『らぽーる・マガジン』
市場関係者の強気根拠は選挙前の株価対策・追加緩和期待にあり
安倍政権にプラスが大きい衆参同日選挙
マスコミの多くは、夏の参議院選挙と同時に衆議院選挙を行うのでは、つまり衆参同日選挙があるのではと見ているようです。ある報道局の人は、衆参同日選挙をやらない理由を教えてほしいとまで言っています。
その根拠は、もう来年4月に迫る消費税増税です。国民の耳の痛い政策を実施した後の選挙は戦いづらいわけですからね。
大手経済新聞の関係者は、消費税率引き上げを見送り、その是非を国民に問う名目で解散するシナリオがあるとしています。前回の総選挙とまったく同じです。そうなると、財政問題が先送りになり、日本国債格下げで悪い円安になると指摘しています。
佐藤栄作元総理の「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」の言葉がよみがえってきます。解散というカードを切ることができるのであれば、できるだけ有効に活用したいですよね。
先日行われた宜野湾市長選挙では、自公政権推薦の候補が当選しました。政権としてはこの流れで参議院選挙へと行きたいのですが、7月の参議院選挙までまだ時間があります。その前に、6月に沖縄県会議員選挙もあります。
なにより政権にとって、目の前の甘利経済再生兼TPP担当大臣のスキャンダル問題を何とかしなければなりません。TPPに関しては、大筋合意を受けての各国の調整を急ぐことになります。
いままでのパターンでは、ほぼ大臣辞職は免れない状況かと思われますが、何せ安倍政権を支えてきている重要閣僚です。うがった見方をすれば、選挙で再選することで「みそぎ」は済んだと、この問題をうやむやにすることもできますね。
野党協議で、解散を餌に、この問題の追求の手を緩めてもらうこともできます。安倍総理の思いは長期政権であり、東京オリンピックも自分の手で成し遂げたいのかもしれません。
政権にとって、野党がひとつにまとまらないうちに、選挙をしておきたいという本音も見え隠れします。
おそらく民主党は党名変更に応じると思われます。
争点は憲法改正ではなく経済回復、株価上昇に設定される
参議院選挙は、超右派の稲田朋美自民党政調会長ですら、憲法改正を争点にしないほうがいいと言っています。あくまでも選挙は経済回復、株価上昇で乗り切るつもりでしょう。
稲田氏の入閣を安倍総理は熱望しているという話も聞きます。かつては、甘利大臣と稲田氏を入れ替えるという人事構想もあったそうです。
甘利大臣のスキャンダルがここで出てきた意味とは?
ここにきての甘利大臣のスキャンダル、こんなに長く政権にいた人に対して、このタイミングでのリークとは、一体いま何が進行しているのでしょうか。ここで甘利大臣のスキャンダルを整理しておきます。
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衆議院解散の有無を左右する甘利大臣の収賄スキャンダル
千葉県内の建設業者が甘利明経済再生担当相やその秘書らに口利きを依頼し、見返りに現金を供与したとする記事が、1月21日発売の週刊文春に掲載されました。
現金供与や接待の額は少なくとも120万円で、政治資金収支報告書にはその一部しか記載されていないというのです。
記事の内容はこうです。
甘利氏側に現金を渡したのは千葉県白井市の建設会社の総務担当者。建設会社は、同市などにまたがる千葉ニュータウン整備事業を進める都市再生機構(UR)の道路工事により損害を被るなど、URと複数のトラブルを抱えているとして甘利氏の事務所に解決を依頼しました。
その1つが解決し、建設会社に2013年8月、URから約2億2000万円の補償金が支払われ、総務担当者は解決の見返りとして、2013年8月に公設秘書に現金500万円を供与、うち400万円については甘利氏が代表の自民党神奈川県第13選挙区支部の領収書を渡されましたが、同支部の政治資金収支報告書には寄付100万円の記載しかないというのです。
甘利氏本人にも2013年11月に大臣室、2014年2月には神奈川県内の事務所で現金50万円ずつ計100万円を直接手渡したとのことです。
2013年の50万円は解決のお礼で、2014年の50万円はURとの別のトラブルの解決を依頼した際に渡したそうですが、このトラブルは解決していないとのことです。
総務担当者は秘書らに飲食などの接待を繰り返したとも証言していて、現金や接待の額は録音テープやメモ類を残している分だけでも1200万円とのことです。
この甘利大臣スキャンダルが、今後の政局にどうかかわってくるのか、それにより衆議院解散はあるのかないのかが決まるのでしょうか。
大物政治家秘書関係者の見方
ある大物政治家秘書関係者の話によれば、とにかく来年度予算を通すことが先決で、決められた日程の中で、かなり入り組んだスケジュールとなっていて、野党の態度次第で予算審議が大幅に遅れれば、解散どころではないとのことです。
予算審議は、甘利大臣問題の落としどころ次第、野党の態度次第となり、衆院解散はその日程次第といえるのでしょうか。
おそらく水面下では、すさまじい駆け引きがなされていると思われます。甘利大臣問題の行方を見て、その後の政局が見えてくるのかもしれません。
Next: 高まる選挙前の株価引き上げ期待、追加緩和期待
高まる選挙前の株価引き上げ、追加緩和期待
いま落選中の、復活を狙う元議員の動きが騒がしくなってきています。衆参同日選挙なら、組織を持っているほうが有利でしょうかね。そのための軽減税率に関して、公明党案を丸飲みしたのですからね。
現政権にとっては、憲法改正を踏まえて、橋下前大阪市長グループへの躍進期待もあるでしょう。
予算、消費税率引き上げの是非、高齢者優遇措置(3万円ばら撒きなど)、そして株価引き上げ…マーケットに強気の市場関係者の根拠は、選挙前の株価引き上げ期待なのでしょう。
日経平均株価 週足(SBI証券提供)
もはや日銀は、政権の意向によって動きますので、追加緩和はどこかで、選挙に向けて効率よく仕掛けてくることでしょう。いやはや夏に向けて、永田町から目が離せなくなってきましたね。
『らぽーる・マガジン』(2016年1月25日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による
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