最近の株安円高については、「日銀のマイナス金利導入の効果が、はく落した」などと言われています。しかし僕は、ついにマーケットが日本の「インチキ金融政策」に気づいたんだろう、と解釈しています。そして日銀が「為替介入」をはじめたのではないか、との観測もありますが、長年、米ドル/円の値動きを観察した経験上は「少なくとも、大規模な為替介入はまだ行われていない」と感じています。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』)
プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。
迂闊に買うと大火傷する相場。日銀の為替介入は行われていない
日本の「インチキ金融政策」に気づいたマーケット
「黒田バズーカ」とか言って、これまで政府は得意げに、メチャクチャな金融政策を続けてきました。株が上がれば「政策が奏功した」と自慢しました。
逆に、株が下がると、これまでは「外的要因で下落した」とか「一時的な下落だ」などとごまかしてきましたが、今度ばかりは、ごまかしようがなくなるかもしれません。
2月12日(金)、日銀の黒田総裁と安倍総理が会談しました。彼らは何を話したのでしょう?以下は僕の想像です。
安倍:「黒ちゃん、なんとかして株を上げてくれよ」
黒田:「総理。もうお手上げです。打つ手がありません」
安倍:「為替介入してみたらどうなの?」
黒田:「2~3円上がるでしょうが、すぐ元に戻るのでムダです」
安倍:「そうか。弱ったな。なんとか国民をごまかさないと」
我々のお金を使って、政府はメチャクチャな金融政策をやってくれました。その「ツケ」は我々が払うことになります。金融政策失敗の「責任」も、我々が取ることになります。「手持ちのお金が減る(財産の没収)」という形で。
今、株で損をしているあなた。その損は、政府にむしり取られているようなものかもしれませんよ。「貯蓄から投資へ」とか言って投資させておいて、この暴落ですから。
「リスクオフ相場」はまだ続く?
相場の下落が止まりません。12日(金)は、ついに日経平均株価が15,000円を割り込みました。
日経平均株価 週足(SBI証券提供)
米ドル/円 週足(SBI証券提供)
16,000円まで下げた段階で、「もう底だろう」と、多くの投資家が思ったのではないか、と思いますが、さらに下落しました。週末の15,000円割れで、「さすがに、これで底打ちだろう」と思っている投資家も多いのではないか、と思います。
確かに、このあと、いったん反発上昇があるかもしれません。しかし僕は、この「リスクオフ相場」はもう少し続くのではないか、と思っています。
Next: 世界経済共倒れ。もともと世界の景気はメチャクチャ悪い!
「世界経済共倒れ」現象
もともと、世界の景気はメチャクチャ悪いのです。
中国経済がダメなのは周知の通り。ヨーロッパも景気が悪いので金融緩和の連続。とっくにマイナス金利を導入しています。それでも、なかなか経済が上向かないで困っています。
日本も、どうしようもないぐらい経済が悪いので、政府が捨て身の金融緩和をやりました。しかし、結局「何をやってもダメ」という結論が出たわけです。
そんな中、ただ一人「好調」をキープしていたアメリカも、まわりが全員風邪をひいている状況の中、どうやら風邪がうつったようで、顔色が悪くなってきました。
そして、イエレンさんが、ついに「予定通りの利上げは無理みたいね」と弱音を吐きました。つまり、今の「リスクオフ」は「世界経済共倒れ」的な現象なのです。ちょっとヤバイ状況です。
株と為替のサポートライン
先週号で僕は、
「株のサポートラインは16,000円付近にあるが、これを割ると、その下は14,000円までサポートラインがない」
「為替のサポートラインは116円付近にあるが、これを割ると、その下は110円までサポートラインがない」
と書きました。
株も為替も、最初のサポートラインを割り込みました。したがって、株の現在のサポートラインは14,000円。為替(米ドル/円)のサポートラインは110円です。
株も為替も買ってはいけない
今回の下落は、あまりにも急すぎます。ここまで急落すると、そのあとは、「反発しづらいし、反発しても小さく短く終わってしまう」ことが多くなります。
つまり、「しばらくの間は、いくら安くても、株も為替(米ドル/円)も買ってはいけない」ということになります。反発が長続きしない可能性が高いからです。短期トレードの達人なら、買っても大丈夫ですけどね。
むしろ反発したところで売った方が、勝てる確率が高いと思います。あるいは、日経平均が下がると上がる、インバース型やベア型と呼ばれるETFを買うか、ですね。「ええい!株なんてやーめた!」と「お休み」するのもいいと思います。
今週の株はどうなる?
通常、ここまで下げれば反発しますが、今週も、「よくて横ばいか、小反発」で、基本的には「続落」と見ておいた方がよさそうです。現在、日経平均のチャートは16,000円付近にレジスタンスライン(上値抵抗線)があり、上値が重くなりやすい状況です。
このあと14,000円付近まで下げれば、短期的な反発が予想されますが、すぐに上値が重くなり、反発上昇が長続きしない可能性がありますので注意が必要です。
今週の為替はどうなる?
為替(米ドル/円)も、通常、ここまで下げれば反発します。12日(金)も、日本政府の為替介入がささやかれる中、やや反発ぎみの動きになっています。ただ、チャートは、113.50円~114.00円付近までの反発が「いっぱい」か?という弱い形です。
いったん反発して113.50円~114.00円に接近したあと、再度、売り優勢となり、110円に向かう、あるいは110円を割り込むような下落になりかねません。安易に買わないよう、注意が必要だと思います。
Next: 少なくとも、大規模な為替介入はまだ行われていない
少なくとも、大規模な為替介入はまだ行われていない
急激な円高に対応するため、日銀が「為替介入」をやっているのではないか、という憶測が流れています。
僕は、ずっと米ドル/円の値動きを観察していますが、「少なくとも、大規模な為替介入はまだ行われていない」と感じています。
かつて、2011年3月(震災のあと)、実際に政府の「為替介入」が行われました。僕は、その現場を目の当たりにしました。
このときの「介入額」は6,925億円だったと言われています。為替介入による値動きは独特なので、ハッキリ介入だとわかりました。とても力強い上昇で、いかにも「大量の資金が投入されたんだな」と感じました。
ここ数日の米ドル/円の値動きは「自然」で、介入が行われたときのような特異な値動きは見られませんでした。もちろん、時々「怪しい」動きはありましたが、「政府が買っている」という規模ではないように感じました。
2011年の震災のあと、為替市場では75円付近までの「円高」が進みました。2011年には、3月だけでなく、8月、10月、11月にも為替介入が行われ、その総額は14兆円程度にのぼったと言われています。
あのときと比べたら、今回、米ドル/円は110円台を一瞬付けたという程度ですから、それほど深刻な「円高」とは言えません。この程度の円高で、政府が為替介入をすることはないと思っています。
だいたい、政府が為替介入を行っても、その効果は一時的なもので、すぐに元に戻ってしまうのが常です。もちろん、実際に為替介入が頻繁に行われれば、トレーダーは「恐くて売れない」状況になりますので、そういった「心理的」な効果は期待できます。
週末の米ドル/円は、いったん113.50円付近まで上昇し、113.20円付近で引けました。この程度の反発は、テクニカル的に見て、ごく自然な値動きです。ただ、米ドル/円のチャートは、「反発が長続きせず、すぐにまた売りが優勢になりやすい形」になっていますので、月曜日以降、ふたたび円高が進む可能性を否定できません。
『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2016/2/12,13号より一部抜粋・再構成
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
長谷川雅一のハッピーライフマガジン
[無料 ほぼ平日刊]
リアルタイム投資情報サービス「LiveSignal24(ライブシグナルにじゅうよん)」の発行者、長谷川雅一がお届けするメルマガです。投資(株/FX)、マネー、政治、経済、趣味、衣、食、住、遊、ライフスタイルなど、あなたがハッピーライフを築くヒントをお届けします。