「中高年引きこもり」は61.3万人いる。彼らが「引きこもり老人」になって親を失うとひとりで年金で生きていくことになるが、彼らは「在宅ホームレス」になる可能性がある。電気・ガス・水道料金などの支払い方がわからず、片付けられないのでゴミ屋敷になる。家にいながら、ホームレスのような生活をすることなるのだ。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
引きこもり、115万人時代
政府が把握しているだけで、引きこもりは115万人以上の数にのぼっている。15歳から39歳までの「若年引きこもり」は54.1万人、40歳から64歳までの「中高年引きこもり」は61.3万人。
これらの「引きこもり」は、ある時になったら突如として目覚めて働き始めるわけではなく、引きこもりが長くなればなるほど逆にひきこもる度合いが深まっていき、近くのコンビニすらも行けなくなってしまうことにもなる。
このあたりの状況については新著『ボトム・オブ・ジャパン』にも詳しく触れた。「引きこもり」の問題は、日本の社会で広がっているどん底(ボトム)のひとつの形である。
中高年の引きこもりは、1990年代のバブル崩壊を起因とする「超就職氷河期」で就職に失敗してひきこもった人もいれば、会社で働いたものの残業や土日出勤などで心身を壊してそのまま引きこもりになった人もいる。
若年引きこもりは、学校でのいじめや不登校が原因で、そのまま引きこもりになってしまったというケースが多い。
今、武田友紀(たけだ・ゆき)氏の『「繊細さん」の本』が売れているのだが、結果的に引きこもりに至ってしまった人の一部は、人よりもかなり敏感に感情が読めたりしてしまう「繊細さん」だったのではないかという気もする。
他人の視線の動きだけでも傷つく人々
この「繊細さん」というのは、HSP=「High Sensitive Person」を分かりやすく噛み砕いて付けられた言葉であり、的確であると思う。
「引きこもり」と「繊細さん」の関連性を調査した人はいないが、最も急がれる調査であると私自身は個人的に考えている。引きこもり問題が「繊細さん」の問題であれば、「繊細さん」の認知と対応こそが引きこもりを解決するかもしれないからだ。
HSP(繊細さん)は、どこの国でも5人に1人はいると推測されている。彼らはあまりにも敏感であり、繊細であり、優しいので、ガサツで荒廃していて弱肉強食の社会ではうまく生きていけない。
「炎上、上等」だとか「悪名は無名に勝る」とか言って、SNSで赤の他人と罵倒合戦を日夜繰り広げている人間がいる一方で、他人の視線の位置や何気ない一瞬の表情だけで大きなダメージを受ける人もいるのだ。
Next: 「勝手な都合で産んだ親には、おれを死ぬまで養う義務がある」
日本社会はまったく無反応でこの問題を放置
他人と関わると傷つく人は、最終的には他人と関わらないことで自らを守る傾向になっても私は不思議ではないと思っている。
だから、「引きこもり」問題とは「繊細さん」問題が一部に関わっているのではないかと思うのだが、統計が出ているわけでもないし、学術的に研究されたわけではないので、その認識が正しいかどうかは分からない。
もし、「なぜ、社会と戦うことなく、問題解決能力をも持たず、ただひきこもってしまう人が出てしまうのか」という研究が深まらなければ、この「引きこもり」問題はずっと放置されたままになるだろう。
実際、「引きこもり」については10年以上も前から認識されていて、ずっと「何とかしなければいけない」と言われ続けてきた問題である。しかし、少子高齢化問題と同じく、日本社会はまったく無反応でこの問題を放置してきた。
このままでは「引きこもり」問題は何の解決もなく10年後にも残り、そしてより深刻な問題と化す。
「勝手に親の都合で産んだ」
「引きこもり」は親が養ってくれるから安心して自宅にひきこもれるのだが、親は彼らが50代になったからと言って「いい加減に働け」ということはない。
20代や30代からずっとひきこもって50代に至ってしまったら、そこからさらに働かない子どもを養い続けることになる。
引きこもりを継続している男性の中には、引きこもっているから親に「申し訳ない」と思って存在を消すように暮らしている人もいるだろうが、一方で鬱屈な気持ちを抱えたまま家庭内暴力を繰り返している人もいる。
親に養っているのに、その養ってくれている大事な「金づる」の親を罵倒したり殴る蹴るの暴力を振るうというのは普通の人には理解できない感覚かもしれない。これは、『ボトム・オブ・ジャパン』にも書いたのだが、ある引きこもりはこのように心境を告白していた。
自分は生まれたくて生まれたのではない。親が勝手に自分を産んだのだ。そうであれば、自分の人生の責任を親が持て……。これが「引きこもり」をしつつ親に暴力をふるう人のロジックだったのだ。
親の方は耐えている。そして、ひたすら何もしない子どもを養い続ける。子どもがどうであれ、親は責任感が強く、そして忍耐力もある。親は見捨てることはない。見捨てることがないので、子どもは思うがままひきこもる。
この親と子の共依存にも似た関係がずっと続くのだが、親が年金生活に入るようになり、さらに父親か母親の片方が病気になったり亡くなったりすると、年金だけでは暮らしていけなくなり、親子が両方とも経済苦に落ちていくことになる。
それがすでに起きている。典型的な例として「親が80代、子どもが50代」でこの貧困問題が発生するので現場では「8050問題」と呼ばれている。
Next: 親の死後は国が年金で養う。引きこもり老人は「在宅ホームレス」へ
親の死後は、国が年金で「引きこもり老人」を養う
皮肉にも、この問題は2030年には一段落する可能性がある。なぜなら、50代になった「引きこもり」の子どもは、やがて年金受給年齢に到達するからである。
面白いことに、彼らは消費税以外の税金を払ってこなかったにも関わらず、年金だけはしっかりもらえるというのが実情だ。言っていれば、所得税も何も払っていなかったにも関わらず、急に国から税金が支給されることになる。
20代から65歳までずっと親に養ってもらって、65歳になって親が駄目になると今度は国がせっせと養ってくれる。
ただし、まったく納税をしてこなかった人間が2030年から続々と年金をもらって生きるようになり、しかもその数は年々膨らんでいき115万人以上になっていくのだから、少子高齢化の賦課方式の年金が、それに耐えられるのかどうかが問題になる。
しかし、「税金をまったく払わなかったくせに年金だけはしっかりもらうなんて許せない」と憤っても、社会はもう彼らを放置することはできない。放置すれば、彼らは生きていけないからである。
まして、65歳になって何もできない彼らに働けと言っても現実的には無理だ。「引きこもり老人」は、私たちが税金で養うしかないのである。
私たちの社会は大きな負担を強いられるのだが、この頃になると「なんでこんな奴らを税金で養う必要があるんだ」という大批判と不満が吹き荒れることになるかもしれない。
この頃は社会に余裕が失われているので、反発の声は大きいはずだ。
引きこもり老人による「在宅ホームレス」
もうひとつ心配していることがある。
「引きこもり老人」は親を失うとひとりで年金で生きていくことになるのだが、私は彼らはもしかしたら「在宅ホームレス」になるのではないかと思っている。
なぜなら、彼らはすでに社会との接点が切れていて、電気・ガス・水道等の公共料金の支払いの手続きなどはまったくできないので、家があってもライフラインがすべて止まる可能性があるからだ。
その上にゴミを捨てるということもできないので、ゴミ屋敷になる。
つまり、家があるのだが、家の中でホームレス同然の生き方をすることになるのではないかと私は考えている。あと10年もしたら、そんな「引きこもり老人による在宅ホームレス」が出現することになるはずだ。
新刊情報:『ボトム・オブ・ジャパン(日本の貧困)』
この記事の著者・鈴木傾城さんの新著『ボトム・オブ・ジャパン(日本の貧困)』(刊:集広舎)が8月10日に出版されました。社会のどん底では、いま何が起きているのか。「普通の生活」はちょっとしたきっかけで瞬く間に崩れ去り、抜け出せない「貧困」という地獄に落ちるという恐怖が実例で生々しく綴られています。あなたは日本のどん底をのぞく勇気がありますか? ぜひお手にとってご覧ください。
『ボトム・オブ・ジャパン(日本の貧困)』
(著:鈴木傾城/刊:集広舎)
1. ネットカフェで暮らすデリヘル嬢
2. 漫画喫茶で子どもを産み捨てる女
3. ぎりぎりホームレスではないが…
4. シングルマザー風俗嬢
5. シェアハウスで友達を殺害してバラバラに
6. 社会接点がなくなった「引きこもり」たち
7. ホームレスを「メシの種」にする人々
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年8月28日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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