昨夜のNY株式市場では、ダウ平均株価が一時1,000ドルを超える下落を記録しました。為替に与える影響は限定的でしたが、今後のトレンドを占う上で今日の雇用統計は大きなターニングポイントになるかもしれません。
それでは、これまでの相場の流れを踏まえながら、今日の雇用統計の展望、トレード戦略について考えていきたいと思います。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)
まだまだ調整の範囲内だが、雇用統計が弱ければ下落は継続か
ナスダック総合指数は5%近い下げを記録するなど、昨夜は悲惨な値動きとなりました。
しかし、そもそもこれまで連日最高値を更新してきた値動きを踏まえれば、まだまだ単なる調整の範囲内といったところでしょう。
NASDAQ 日足(SBI証券提供)
直近では、パウエルFRB議長がジャクソンホールの講演において、インフレの上振れ、インフレターゲット2%以上を容認する姿勢を示したことで、ゼロ金利政策の長期化想定で一段と株価が上がっていましたからね。
そして、この大きな下落の背景としては、米国レイバー・デーの連休に向けての利益確定の動きや、連休明けからの経済支援策の与野党協議が難航するとの見方などが重なったとされています。
米国を中心に株式市場は絶好調ですが、実体経済は政府の中央銀行の支援なくしては成り立たないレベルまで疲弊しているのが現実なので、ようやく株価と経済の乖離がほんの少し埋まったといったところでしょう。
今回の雇用統計の数字を見て、市場が改めて懸念を深めて調整下落が続くのか、それとも一過性の値動きに終わるのかを確認したいところです。
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一見すると先行指標は好調だが、ADPは市場予想を大きく下回る波乱
8月分の先行指標は7月分と比べて非常に堅調な数字が並びましたが、少し深く見ると悩ましくなります。
先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
表面上の数字を見る限り、7月から8月にかけて米国の民間給与は2倍となり、製造業とサービス業の両方で雇用指数は改善、失業保険申請件数も大きく減少しています。
しかしながら、民間のADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社の雇用報告では8月分は+100万人近い雇用増が予想されていたのにも関わらず、+42.8万人と低調な数字にとどまっています。
前回7月雇用統計では、ADPの弱い数字を覆して非農業部門雇用者数は+176.3万人と非常に強い数字となりましたが、果たして今回も覆せるのかといったところ。
民間のADPも下振れし、肝心の雇用統計も予想を大きく下回るのであれば、労働市場の回復が失速しているとの見方が強まることになるでしょう。
やはり労働市場が弱いということは、経済の弱さに直結します。財政刺激策の効果が薄れる中、さらなる経済支援策が政治的混乱でまとまらないとすれば、市場にとって二重で大きな懸念要因となります。
意外なほど方向感はないが、上値は限定的なので「戻り売り」想定
実はADP雇用報告が発表された2日(水)の段階では、予想を下回って懸念が強まった発表直後こそ円高・ドル安の値動きとなりましたが、その後は労働市場の停滞=緩和政策の継続という図式で株価が反発し、ドル円も元の値に戻す全戻しでした。
ただ、昨夜に株価が大きく下落して懸念が強まる格好になっていますし、米国市場の3連休前ということもありますから、弱い数字が出た場合は利益確定の動きが先行、一段と下落することを想定しておきたいところでしょう。
したがって、非農業部門雇用者数が市場予想の+140万人を大きく下回る場合、+100万人すら下回る場合にドル円も株安の影響を受けてジワジワと下落するパターンを警戒したい。
ドル円(日足)チャート
昨夜はダウが一時1,000ドル近い下げを記録したにも関わらず、ドル円は意外なほど方向感がありません。それどころか、やや上に行きたそうにも見えます。
しかしながら、流石に今日も弱い数字が並ぶとすれば、株価も下げやすく円高圧力が高まりやすいと考えていますので、現段階でのトレードとしては戻り売り・ショートを想定しておきたいところでしょう。
繰り返しになりますが、労働市場の停滞=緩和政策の継続という図式となり、ドル安も重石になります。
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今夜の想定レートは105.50〜106.50円
トレード戦略としては、発表前に106円台を維持しているのであれば、軽く売りポジションを持った上で発表に臨みたい。
非農業部門雇用者数が予想をしっかり下回ってくれば、105円台を割り込むことは無理でも105.50円前後ぐらいまでは下値を期待できるでしょう。
逆に非農業部門雇用者数が市場予想並みか上回る数字になるのであれば、一旦手仕舞い・損切りして上値を確認することになります。
もっとも、106.85円にある89日移動平均線を超えて107円台に乗せきれないのであれば、結局は売られることになる可能性が高そうなので、改めて上値を確認して売っていきたいところでしょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年9月4日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による