トランプとバイデンの双方が勝利宣言をするなど、不透明感を増す大統領選挙。そんな中で今週も雇用統計の発表がありますから、しっかり内容を精査してトレードに役立てていきましょう。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)
誰がやってもドル安、さらに株高も後押し
世間ではトランプだ、バイデンだと大騒ぎですが、どちらが大統領をやっても中長期的にドル安と言われています。
その理由としては、巨額の財政赤字、特に今年はコロナの感染拡大に伴う経済対策で財政赤字が加速したことが挙げられます。また、欧米では現在進行形で感染拡大が続いていますから、少なからず新たな経済対策を行うことが想定されます。
こうした見方から、さらなる財政赤字の拡大が織り込まれ、中長期的なドル安意識でドルが売られているのが現状です。
また、大統領選に伴う上院議員選挙では民主党が過半数を獲得できない見込みとなっており、企業への増税やGAFA解体といった目玉政策の導入が難しくなったことが株高に繋がっており、これもややドル安の流れを誘発しています。
ここ最近は、大幅な株安になって、ようやくほんの少しドル買い手当が出るといった程度。また、大幅な株安になればリスクオフ(回避)の円高もあり、ドル円はなかなか伸びない状況が続いています。
今後、大統領選をめぐる混乱が強まることを嫌気して、株価が大きく下げればドル買いの動きも多少出てくるかもしれませんが、大きな流れとしてのドル安というのは変わらないというのを覚えておいていただければと思います。
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先行指標はADPの雇用報告が市場予想を大きく下回る
米国の10月までの指標というのは予想を上回るものが多く、意外なほどの強さを発揮していましたが、その中で民間のADP(オートマティック・データ・プロセッシング)社が発表する雇用者数は予想を大きく下回っており、やや懸念材料と言えるでしょう。
先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
アジア圏、とりわけ中国の経済が堅調に推移していることもあって、世界的なトレンドとして製造業は好調と言えるでしょう。一方、サービス業はコロナの影響が尾を引いており、冴えない数字が続いています。
製造業が強いことは賃金面ではプラスですが、雇用をトータルで評価する場合、やはり雇用者数の伸びが大きなポイントとなりますから、注意が必要でしょう。
今のところ、大統領選挙の結果が注目されており、今回の雇用統計がどこまで影響するかといえば微妙ですが、良くても過去の数字、少なくとも10月までの米国の経済指標というのは十分に強く、分かっていたという認識になりそうではあります。
逆にここで大きく失速してしまうようだと、感染が拡大しているコロナの影響を強く意識して、将来的な懸念が強まりやすいかと思いますので、そのつもりで見ておきたいところでしょう。
インパクトのある数字が残せなければ一段高は厳しそう
米国で暴動などが激化、大統領選をめぐってよほどの混乱が発生してリスクを意識したドル買い需要、雇用統計でよほどインパクトのある数字が出て、米国は健全だという見方ならないと、なかなかドル高の流れにはなりにくそうです。
しかも、仮に今回の雇用統計が強かったとしても、連日、新規感染者数が過去最高を更新する中で、過去の数字がどれだけ意味を持つかといえば微妙です。
大統領選後、先取りする形でドル安がかなり先行しましたから、予想を上回るような強い数字が出れば一時的にドル買い戻しの動きは出やすいかもしれませんが、いずれにせよ一過性の動きにとどまる可能性が高そうです。
そして、市場の事前予想値は非農業部門雇用者数が+60万人、失業率が7.7%となかなか強気な数字といった印象があります。これをさらに上回り、雇用者数が+100万人近い数字なら、サプライズのドル高はありそうです。
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今夜の想定レートは102.20〜104.50円
もっとも、冒頭で書いたようにコロナの感染が広がっている現状を踏まえれば、さらなる財政赤字の拡大は避けられない見通しで、中期的なドル安の織り込みが重石となるでしょう。
ドル円(日足)チャート
トレードとしては、強めの数字が出て反発したところを叩いていくのが楽そうです。すでにドル円は8ヵ月ぶりの低水準となっており、かなり売り込まれていますから、短期で突っ込んで売っていくのはなかなか悩ましいところ。
104円台に頭を出してくれば、104.00〜104.20円レベルで喜んで叩きたい。さらなる反発があれば104.50円で厚めに追加売りで、損切りは105.20〜105.30円に置いておけば良いでしょう。
予想を大きく下回る数字が出た場合は様子見で。大統領選挙の行方や、ドル安加速によってユーロドルが反発すると、ECB(欧州中央銀行)が牽制的発言を行ってくる可能性が高まりますから、安易についていくと火傷しそうです。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年11月6日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による