幼稚語テストの答え合わせ
ところで、なぜ今回のテストをトレーニングとしておこなっているか、わかりますか?
おそらく、あなたは「あざーす」「いんじゃね?」「食いて~」といった言葉を日常的に使ってはいないでしょう。
テストに挙がった20例が「日常会話のレパートリー」になっているとしたら、ネット等で触れる情報や居場所に問題があるか、高校生くらいのお子さんが身近にいて、よかれと思って言葉を合わせてあげているか──そんなところでしょうか。
では、あなたがふだん使っていないであろう言葉を取り上げているのはなぜか。
「成熟した大人の話し方」のトレーニングだからです。
「正しい言葉遣い」を覚えるだけなら、その手の本がいくらでも出ています。しかし、その手の本で「成熟した大人の話し方」が身につくかというと、つかない。かえって「嫌な感じの態度」になりかねない。「言葉を覚える」だけでは「成熟した余裕のある態度」にはならないのです。
「あざーす」「いんじゃね?」「食いて~」などを、あなたが使わないのは当たり前。そんなのは、前提です。もし万が一使っていたら、反省して、言い換えの練習をしてください。
今回のトレーニングの目的は、「このような言葉を相手が使ったときに、成熟した大人の反応ができるようになる」ことです。
多くの人は余裕がないので、「気づかないうちに染まる」。中高生が新語や流行語をよく使うのは、そのせいです。まわりの友人たちが使っているのを見聞きして、馴染んで、いつの間にか「違和感のない語彙」になっていく。
大人が「気づかないうちに染まる」になってしまったら、余裕がなさすぎます。身近な人に合わせて使っているうちに「あざーす」が自然な発音になってしまい、「えっ、あざーすはダメっすか。てゆうか、べつにいんじゃね? マジムカつくんだけど」と言い返すようには、あなたはならないでしょう。
しかし、ここから先にあなたのトレーニングがあります。
今回挙げた言葉に限らず、「美しくない」「品があるとはいえない」「成熟を感じさせない」言葉はいくらでも出てきます。そんな言葉に対して「どう反応するか」があなたの成熟度を決めるのです。
「何事にもケチをつけない」という話がありましたね。たとえ自分には馴染みのない言葉であっても、ケチをつけて相手を責めるのは、あなたらしい美しい態度ではないでしょう。
そこで、どうするか。
自分の中で「脳内変換」をおこない、成熟した大人として反応していくのです。
たとえば、「あざーす」と聞こえたとき、「ありがとうございます」と脳内変換して、相手が「ありがとうございます」と言ったものとして受け取る。そうすれば、「いいえ、どういたしまして」のように返すあなたの反応は、成熟した大人の反応になるでしょう。