iPhoneは人が羨むアクセサリー
インドのスマホ市場で圧倒的なシェアを誇っているのはサムスンだ。それに追随するのはインド製、もしくは中国製の格安スマホ。アップルのシェアはとても低く、街中でiPhoneを見かけることはほとんどない。「iPhoneはいいものだが高すぎる」というのがインド人の一般的なイメージなのだ。
「iPhoneはステイタスシンボルさ」
と断言したのは、インドでは珍しいiPhoneユーザーである靴屋の店主だった。彼はiPhone5sを5万ルピー(10万円)で買ったという。インドで売られているスマホの多くは5000から1万ルピー程度だから、iPhoneがずば抜けて高価なのがわかる。
「誰も持っていないから、俺はiPhoneを買った。使い方はよくわからないけどね」
実際のところ、彼はiPhoneを使いこなせてはいなかった。TouchID(指紋認証)のことも、ビデオのスローモーション撮影のこともまったく知らなかった。「新しいiPhone6はプロジェクターになるんだろう?」という出所不明のガセネタを信じてもいた。それでも彼はiPhoneに満足していた。「人が持っていないモノを俺だけは持っている」という特別感が何よりも大切なようだった。
iPhoneユーザーが過半数を占める日本のスマホ市場は世界的に見ても異常だが、iPhoneユーザーが1%にも満たないインドの状況もまた特殊である。今のところインドにおけるiPhoneは「人が羨むアクセサリー」の域を出ていない。ダイヤの指輪のように輝きを放ってはいるが、大して役には立たないよね、という立場なのだ。