【裁判傍聴】難聴の老人が一日に二度も万引きした「意外な事情」

 

難聴の対応と起訴状の送達と「構学上の問題」とでだいぶ時間を取ってしまい、この時点で13時57分。

15時15分から続きをやることにし、閉廷。留置場管理の警察官2人が、被告人に再び手錠・腰縄を付けようと立ち上がった。1人は若い女性で、バスケットボールの選手か! と驚くほど長身だった。被告人がぽかんとして言った。

被告人 「あ、終わりですか?」

他のを傍聴して15時25分に戻ると、質問を紙に書いて示し、被告人質問をやっていた。

被告人 「(風待ちハウスには)もう住みたくありません…そこの施設長とは今まで何回か…あたしが耳が聞こえないばっかりに…もう何度もトラブルを起こして、激しいケンカ…そういうことが嫌になったんです! (新しい住居は)共産党の人にお願いします」

こんなとこで共産党が出てくるとは、なんか意外。

求刑は懲役1年。弁護人の最終弁論も終わり、最後は被告人の最終陳述だ。ずっと証言台のところに座っていた被告人は、立ち上がって大きな声で述べ始めた。

被告人 「本当はあたし、本なんか要らなかったんです! 万引きなんかしたくなかったんです! ただ、施設長…その方と…ケンカが絶えなかったんです。そういうことが嫌で嫌で…ホームレスになってもいいから出たいと…そのためには、やっぱりお金が少し欲しかった…

長々しゃべり続ける被告人に対し、裁判官が「あのね」「それでいいでしょ」と東北訛りで言うのだが、被告人に聞こえるはずもない。

被告人 「あたしこれからもう一度自分を…昔のマジメだった当時の人間にかえるために、安定所へ行きたい…とにかくどんな仕事でもしたい、それからもう一度…あたし、昔、ラーメン屋をちょっとやったことがあったので…」

書記官と弁護人が、何か書いた紙を被告人に見せ、ようやく終わった。

判決は8月12日(金)10時15分からと決め、15時48分閉廷。さっき10日から夏期休廷と言ってたはずなんだが…

image by:shutter stock

 

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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