ワタミの問題点はどこにあるのか?
続いてワタミの事業のどこに問題点があるのか、もう少し細かく見ていくことにしましょう。
ワタミは、現状5つの分野で事業を展開しています。その5つとは、「国内外食事業」「宅食事業」「海外外食事業」「環境事業」「農業」です。
ここでは、主要な「国内外食事業」と「宅食事業」を見ていきます。
国内外食事業は「和民」を始めとした居酒屋事業ですが、売り上げは229億円で、9億円弱の営業損失に終わっています。居酒屋業界自体が縮小傾向にあることに加え、ブラック企業批判で「ワタミ」ブランドが消費者に敬遠されてきたことから、依然として厳しい状況といえるでしょう。
ただ、現状「和民」を「ミライザカ」へ、そして「わたみん家」を「三代目鳥メロ」へと業態転換を加速していて、「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」は低価格の焼鳥などが好評で業績の底上げに貢献していると決算説明で述べられています。実際に当期は9億円弱の営業損失が発生していますが、前年同期の営業損失は16億円弱であり、大幅な改善が見てとれることは確かです。
一方、宅食事業の売り上げは176億円と前年同期に比べて7%ほど減少しましたが、営業利益は9億円を超えて大幅な伸びを記録し、現状ではワタミの屋台骨を支える存在となっています。
このように事業を細かく分類してみると、現状ワタミの足を引っ張っているのが外食産業ということがわかります。先ほどもお伝えしたように、ワタミに限らず、現状居酒屋という業態自体が全般的に不振のうえに、「ワタミ」ブランドが大きく傷ついてしまった今では、なかなか外食事業の業績を急回復させることは難しいといえます。そこで、ワタミが外食事業の業績回復を目指して力を入れているのが新業態への転換というわけです。
ワタミは、「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」といった「ワタミ」ブランドを感じさせない新たなチェーン店の出店攻勢をかけています。その背景には、ブランドが失墜し、顧客の信頼を失えば、元に戻すまでに想像を絶するような努力が必要になってくるという事実もあることでしょう。傷ついたブランドは捨て、新たなブランドを立ち上げた方が同じ売り上げを上げるにしてもハードルは低くなるのです。
加えて、「鳥貴族」など低価格帯の居酒屋業態はまだまだ成長分野であることを考えれば、同じような業態の「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」には大いなる可能性があります。そこで、新業態への転換がさらに進めば、現状不振の国内外食事業も立ち直ってくることが見込まれます。このような業態転換に力を入れるワタミの方向性は正しいといえるでしょう。
昨年、虎の子の介護事業を売却し、200億円を超えるキャッシュを手に入れたワタミ。この資金が続く限りはワタミも持ちこたえられますが、この半年で手にしたキャッシュのおよそ半分、100億円以上が流出してしまったのも事実です。ワタミ生き残りの鍵となるのは、いち早く新業態を大きな柱にして外食事業の赤字を解消し、事業の安定化を図ることができるかどうかにかかっているといえるでしょう。
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