近隣住民の不満
近隣住民の不満は、このR保育園建設当初からあった。
保育園はその作りに細かな規定があり、規定通りに作り計画を立てることで、かなりの補助金や助成金がもらえることになっている。
事件が起きているR保育園は、運営元の社会福祉法人が茨城県にあり、地元では有名な資産家がこの経営者になっているが、剛腕で知られるばあちゃん理事長が全てを仕切っている。
都合の悪いことは隠す。あとは金をばら撒き、それに応じない者は容赦なく潰してきたそういう噂が絶えない人物である。
実は建設当初、ここに何ができるか近隣には知らされていなかった。
当時をよく知る近所の住人曰く、工事の建設予定の看板には、当初何も記されておらずまたアパートでもできるのだと思っていたそうだ。
ところが、完成間近、「保育園」であることが看板にマジックで書き込まれていたのだ。
結局挨拶も何もないまま、保育園は始まった。
当時は、千葉で保育施設ができることへの反対運動が起きたりしていた時期だったから下手に計画を出して、近隣で反対でも起きれば、建設と設立が先延ばしになる可能性があるから、出来上がってしまうまで黙っていたというのが事実のようだ。
だから、近隣の評判はすこぶる悪い。
割りを喰らうのは、園児やその保護者、勤務する保育士らだが、経営サイドにはそんなことお構い無しなのだ。
近隣住民は反対運動こそ起こさないし、子供たちは可愛い。だから、いろいろな面で我慢をしてきているのだが、朝の路上の渋滞やゴミ問題など、どうにかならないものかという不満は鬱積している。
T塚警察署とA瀬警察署の判断
A子さんは我慢の限界に達し、最寄りの警察署へ相談へ行っている。しかし、ここで驚くべき判断があった。後日是正するようだが、当初判断として、ここに報告する。
「Nは被害額を返してきたんですよね、足りないということは立証できない以上、一応の被害回復はされていることになるので、窃盗で被害届を受理することはできませんよ」
は?どういうこと?
2つの警察署とも同様の対応であった。
もしも、この論理がまかり通るならば、警察ともあろうものが、犯罪者をそこら辺中に野放しにしていることになるまいか!
で、あれば。
貴方は同僚の財布からバレないようにちょくちょく金を抜けばいい。どうせ、自分の財布に確実にいくら入っていると証明できる人はほぼいないはずだ。
だから、バレるまで、どんどんチャンスがあれば、盗みまくればいいのだ。もしもバレたら、適当に反省したふりをして話をして、盗んだ金額だと都合よく金額を言って、それを返せばいいのだ。受け取らなければ、カバンにでもねじり込めばいい。
Nも受け取りを拒否するA子さんに無理やり封筒を差し出した。A子さんは怖くなって、それを受け取らざるを得なかった。そう、怖かったのだ。もしも、受け取らなかったら、もっと酷い目にあうかもしれない。そう思わせられたのだ。
”どうせバレるなら、私は刑務所行きになる。そんなの、嫌!そうなるくらいなら、もう、一緒に・・・!!”
目の前で自暴自棄になられたら、どう思うか。体力的にはNの方が圧倒的に強い。
だから、貴方も、もしこれでバレたら、自暴自棄のふりをして、道連れにしてやると脅せばいいのだ。気の弱そうな良い人、人と争えない同僚を狙えばいい。
こうすれば、被害届すら警察は受けないのだから、罪に問われることなど絶対にないことになる。新語になるかもしれないが、これぞ「合法窃盗」である。
私はこの警察判断は明らかに誤りだと思ったので、大先輩であり仲良くさせてもらっている元刑事で警視正までいった方に率直に質問してみた。
「ダメだよ。だって、犯罪は成立してるじゃないの。警察は捜査なんだから、返したからハイ終わりにはならないよ。どこの刑事よ、若いんだろ?メンドくさいのか?」
つまり、犯罪は盗んだ時点で成立している。しかも5回もやったなら、もう後戻りはできない。だから、警察はその加害者を逮捕して、話を聞き、検察庁に書類送検するのが仕事になるのだ。
これは、他の現役刑事さんに聞いても同じであった。
元検事で友人の弁護士は、この現象を「起訴猶予になるか略式起訴で微罪、つまり無罪放免か微罪になろうことで、いちいち動きたくないという心理があるんだろ」と分析していた。
色々私がこの判断について聞き回ったことで、是正するという話が私の耳まで届いているが、実際どうかはわからない。
ただ、A子さんは日本の警察行政へ強い不信感を抱いことは間違いないし、 これでついに、精神的に最悪の事態を考えるまで、追い詰められてしまったことは否めないのだ。