新型コロナにより国をまたいだ移動制限が続いていますが、タイやフィリピンといった東南アジアへの海外移住へのニーズは依然として高いものがあります。新型コロナを踏まえた2021年、筆者自身が居住経験のあるタイとフィリピンへの移住について、どのように考えて行動すれば良いのかを解説します。(『海外投資とネットビジネスで海外移住、ハッピーライフ』栗原将)
フィリピンへの移住は無理? 2021年は準備・リサーチの期間
新型コロナ感染拡大の影響により、国をまたいだ移動制限が続いています。とはいえ、タイやフィリピンといった東南アジアへの海外移住へのニーズは依然として高いものがあります。
今回は、新型コロナを踏まえた2021年、筆者自身が居住経験のあるタイとフィリピンへの移住について、どのように考えて行動すれば良いのかを解説します。
タイについては、特別観光ビザの発給に加え、要求されている手続きを満たして入国許可を得られれば入国できる状況にありました(※編注:原稿執筆時点2020年12月14日。2020年末にかけてタイ国内でも感染拡大が見られますので、最新の状況は在タイ日本国大使館ほか公的機関の情報をご確認ください)。とはいえ、14日間の強制ホテル隔離があり、タイ入国には50万円以上の費用が掛かると考えるべきです。
またフィリピンは2020年12月現在、クオータビザ保有者、配偶者がフィリピン人ですでにSRRVや結婚ビザなどを保有している人、ビジネス関係で特別に政府から入国許可が出た人以外は、入国自体が認められていない状態です。
そして、ここからは今後の予測になりますが、フィリピンは2021年になっても相当厳しい入国制限が続き、これまで日本人の特権だったビザ無し入国は2021年中は不可、タイについても2021年
秋以降になる可能性が高いです。
いずれにしても、コロナ前のように、気軽に旅行できる状態ではないので、事実上、2021年は
海外移住の準備期間・リサーチ期間と考えておくのが妥当ですね。
新型コロナで見えてきた、タイとフィリピン両国の真実を語ります。
国内感染を封じ込めていたタイ、しかし…
タイは、台湾、ニュージーランドの次のレベルで国内感染を封じ込めており、2020年12月14日現在、タイ国内の移動制限もなく、外国人観光客向けの店は閑散としていますが、夜のお店も開いています(※編注:原稿執筆時点2020年12月14日。その後状況は一変、タイでも新型コロナウイルスの感染拡大が見られます)。
※参考:バンコク近郊で548人感染 抑え込み成功のタイで急増―新型コロナ:時事ドットコム(2020年12月20日配信)
国内感染をほぼ封じ込めているので、タイで暮らす人々の間では安心感が広がっており、マスク着用以外は、ほぼ、コロナ前と同様な生活となっていて、日本人の駐在員家族は年末年始、コロナ前なら日本帰国していたのが、タイの国内旅行をする感じです(※編注:原稿執筆時点2020年12月14日)。
日本への帰国者が相次いでいるフィリピン
フィリピンの方ですが、世界最長のロックダウンと言われるほど、厳しい措置を講じたにもかかわらず、東南アジアでワーストをインドネシアと争うような状態です。
日本のような自粛要請ではなく、外出自体に規制が掛かっていましたので、大変不便な生活となり、僕の知り合いのフィリピン移住していた方、複数が日本に帰国しました。
フィリピンにいては、とてもじゃないが安心・快適な暮らしはできないと判断しての帰国です。
火事場の賄賂要求が横行しているフィリピン
また、知り合いのフィリピン在住者で結婚ビザ保有者の方より、イミグレーション職員から突然、15,000ペソ(3万円)の賄賂を要求され、応じなければ国外追放にする、と脅しを受けたとの報告がありました。
他にも、コンドミニアムの新規テナント入居に伴い、10万円の手数料を要求してきた管理事務所の話など、コロナによる減収を、立場が弱い外国人から埋め合わせようとする行為が目立ってきました。
この点は、タイとの非常に大きな違いで、タイでは、違法行為をしない限り、賄賂を要求されることはほとんどなくなっているのですが、フィリピンではそうはいきません。
フィリピンでは平時から、マニラ空港でスーツケースに銃弾を忍び込ませた上でX線検査をして、見逃す代わりに賄賂を要求することが問題になりましたが(結局、うやむやで終わりました)、コロナでさらにエスカレートしている印象です。
少しでも理不尽なことは許せないという方は、フィリピンは向きませんね。
Next: “月5万円”生活はかなり厳しい。食べ物は日本人の口に合う?
移住で気になる生活費(食費・居住費・物価)
バンコクでもセブでも「月5万円」暮らすことは可能ですが、それはあくまで、ローカルレベルの生活です。今回はそうではなく、普通の日本人の平均的な暮らしぶりを想定します。
<タイ(バンコク):月20万円で快適生活>
1か月20万円(5万バーツ強)あれば、大きなストレスなく生活できると思います。
コンドミニアム家賃(6万円)、食費(5万円)、水道光熱費通信費(7千円)、残金の約8万円は娯楽や予備費(居酒屋などでの飲酒代含む)という感じですね。
南国のタイにいると、暖房代がかからないなど電気代が非常に安い(1ユニット:4バーツ)です。ワンベッドルーム(35平米)に住んでいた僕の電気代の最高額は、約4,000円/月でした。これはフィリピンの4分の1ほどです。
<フィリピン(セブ):月5万円生活も可能だが…>
バンコクと同じく、1か月20万円(10万ペソ)か、あるいはもうちょっと少なくても生活できます。
コンドミニアム家賃(6万円)、食費(5万円)、水道光熱費通信費(1.5万円)、残金の約6万円は娯楽や予備費です。
フィリピンの電気代は、日本よりも高いです。庶民の家にはエアコン・冷蔵庫・洗濯機がなかったりします。日本人移住者でも、節約派の人は現地の方と同じような生活をして1か月の生活費を5万円以下に抑えたりします。でも、普通の日本からの方は、まずムリですね。
あとは、僕自身のフィリピン生活経験からすると、エアコンが壊れるなどの問題が頻繁に起きて、予想外の出費が発生します。あとは賄賂も出費になります。
ですから、タイよりも予備費は重要になります。予算ぎりぎりで生活していると、何かあったら突然、苦しくなります。
食べ物は日本人の口に合う?
<タイ(バンコク):世界一旨くて安い!※筆者感想>
個人的独断では、庶民レベルの料理が世界一旨くて安いのがタイです。加えて、お米が主食で、ナンプラーという魚醬ベースの味付けが日本人になじみやすいです。
僕自身、タイではほとんど、タイ料理の外食で済ませています。相対的に高い日本食は、よほど食べたくなった時以外は行きません。「日本食いのち!」という人でもまったく心配ないのが、バンコクですね。無数の日本食レストランがあって、レベルも高いです。僕の場合、日本食ならば、自炊で鶏や豚肉と野菜を鍋にして、ポン酢しょうゆで食べるのが好きです。
あと、世界中の人が集まるバンコクですので、ステーキレストランや、イタリアン、フレンチ、アラブ料理などなど、食のバラエティは非常に広く、飽きることはありません。
食事の優先度が高い方は、絶対にバンコクですね。
<フィリピン(セブ):味に難あり?日本食が増えて割高に>
主食は米で、フィリピンの人たちは恐ろしいほど「ごはん」を食べます(若い女性でも、ごはん食べ放題レストランに通います)。しかし、日本人の方で、フィリピン料理がおいしいと言う人は極めて少ないですね…。個人的にも、特に屋台料理は、ちょっと食べられません(かなり、変わった味でも食べられる僕であってもです。
あと、ファストフード店が非常に多いのが特徴ですね。ジョリビー、KFC、マクドナルド、バーガーキングといったお店が、多いところですと50メートル歩けばあります。ですから、ファストフード、アメリカ系の食べ物が好きな人には、とても快適かと思います。
一方、僕の場合は、タイと比べたら、日本食の割合が圧倒的に増え、食費はタイの倍くらいに
なった時期もありました。タイもフィリピンも、ローカルフードなら1食150円くらいです。タイではそれで済ませられるのですが、フィリピンでは無理ですからね。あとは、野菜が高くて、苦しかったですね。ブロッコリーは最低300円、キャベツもそのくらいとかでしたので…。タイは野菜が激安なんで、ここも大きな違いですね。
Next: 大気汚染に注意?気候や治安は日本とはまったく違う
大気汚染に要注意?タイ・フィリピンの気候は
バンコクもセブも、「年中夏」という感じで、あとは雨期と乾期に分かれるくらいです。
バンコクなら、雨期6月~11月、乾期12月~3月、暑期4月~5月
セブなら、雨期6月~10月、乾期11月~5月
という感じです。両方とも乾期が観光のベストシーズンでもあり、湿度が低く過ごしやすいです。春は日本の夏よりも暑くなり、昼間の外出は控えた方がよいくらいですが、夏は日本より涼しいです。
なお、バンコクは冬場に「PM2.5濃度」が上昇し、健康への影響が懸念されるレベルになるときもあります。日本人学校が休校になったこともあったほど。喘息などの疾患をお持ちの方は、注意が必要です。
一方のセブでは、一般的なイメージと異なり、特にセブシティでは排気ガスまみれとなるところが多いです。リゾートエリアのマクタン島(セブ空港がある島)の海沿いのコンドミニアムならば、常に海風が心地よいです。セブにきてまで都会生活を希望する方は少ないと思いますが、住まい周りの空気の綺麗さは重要です。
いずれにしても、日本で生活していますと空気の綺麗さは当たり前ですが、タイやフィリピンの都会では、未だに黒煙をまき散らして走る自動車やバイクがたくさんあります。
タイ人の雰囲気は日本人に近い? 現地の暮らしぶり
<タイ(バンコク):注意すべきは治安よりも「交通事故」>
国民の大部分が仏教徒で、日本人とかなり近い雰囲気があります。周囲の人とあまり、トラブルを起こさない、言い争いをしないで穏やかな人が多いです。道路でも、クラクションを鳴らすことは少なく、道を譲りあうことも多いです。
治安は、日本人女性と小さなお子さんが昼間、街歩きできる位で、普通の生活をしていて怖い思いをすることはありません。
日本でよく報道されている反政府デモですが、日本人の多くが住んでいるスクムビット地区で行われたことはなく、また、事前にデモ会場が告知されるので、そこに近づかなければ、危険な目には遭いません。都市国家の香港とはまったく違います。
注意すべきなのは治安よりも、「交通事故の多さ」ですね。死亡事故は日本の10倍です。とにかく運転が荒い。安全第一ならば、パタヤなど遠出するときには、安心できる日系のレンタカー(運転手付き)サービス利用をおすすめします。
ローカル向けの乗り合いバンに慣れない日本人が乗ったら、具合が悪くなるか、怖くて仕方ない状態になるかもしれません。
<フィリピン(セブ):正直、治安は悪い>
現地の人は、陽気で人懐っこい印象です。英語が公用語なので、片言レベルの日本人の方でも、簡単なコミュニケーションがとりやすいのが、タイと比べた場合のメリットになります(タイは、英語できない人が多いです)。
一方、治安は、正直いって悪いです。日本人女性と小さなお子さんが、ダウンタウンを歩くのは危険です。あと、乗り合いのジープニーでは、スリや強盗に注意が必要。僕自身、携帯電話をすられた経験があります。
リタイアメント移住であれば、現地でトラブルに巻き込まれることはないでしょうが、ビジネスで紛争となり、殺害される日本人が毎年出ていますし、顧問弁護士が殺害されるケースもあります。
また運転マナーもタイと同様、良くないので注意が必要です。
Next: 病気になると致命傷に?タイ・フィリピンの医療レベルは
土日・休日の過ごし方
<タイ(バンコク):タイマッサージ2時間で2,000円以下!>
日本よりもはるかに進んでいる大規模ショッピングモール(エムカルティエ、アイコン サイアムなど)で、ショッピング・食事・映画まで冷房が効いた室内で快適に楽しめます。また、タイ国内で楽しい旅行先が多数あります。ゴルフ好きなら毎週ゴルフですし、テニスやサッカーなどのクラブもたくさんあります。
旅行先は、日本人に有名なパタヤだけでなく、王室リゾートとして知られているホアヒン、ワイナリーもある高原リゾートのカオヤイなど、魅力的な観光地がたくさんあって、飽きることはありません。
一方で、特に遠出しなくても、ゆっくり過ごして、午後はタイマッサージを2時間みっちり受けても2,000円もしませんから、病みつきになる人が続出です。
<フィリピン(セブ):海好きならおすすめ!>
セブ移住する人の中で、ダイビング好きは多いですね。近くに綺麗な海がないバンコクとの大きな違いは、ここですね。ダイビング以外にもマリン・アクティビティが色々あるので、海好きな人には良いところです。
ショッピングはマニラほどは洗練されていませんが、アヤラなどのモールはあるので、必要なものは大体そろいます。
セブから近隣のボホール島などにボートが出ていますので、色々な島めぐりも楽しいです。
タイ・フィリピンの医療レベルは?
<タイ(バンコク):まったく心配なし!優れた病院がたくさんある>
まったく心配ないです。タイの医療レベルは高く、世界中からメディカルツーリズム目的に訪れる人がいるくらいです。
日本人居住区には、日本人向けサービスが充実しているサミティベート病院が有名ですし、他にもバンコク病院やバムルングラード病院など、優れた病院がたくさんあります。
一方で、歯科治療など、言葉の問題もあって、日本に帰国したときに集中して治療を受ける、という人も多いです。要は、急病の際には心配ないが、急がない治療、特に手術が発生する場合には、日本で保険治療を受けるのが良いです。
3か月に1度、日本に帰国するなら、クレジットカードの海外旅行傷害保険でほとんど全額カバーされます(これはフィリピンも同じです)。
<フィリピン(セブ):基礎疾患がある方は慎重に>
日本人デスクがある病院に近ければよいですが(セブ ドクターズ病院)、ローカル庶民レベルの病院となると、正直怖いです。
タイのように他国から医療目的でフィリピンに来る人はいません。医療レベルは低いのに、医療費は超高額だからです。ですから、基礎疾患がある方がフィリピン移住というのは、慎重に下調べする必要があります。ちょっとした病気で数百万円の請求とか、十分にあり得ますので。
僕個人の経験では、マニラのマカティ メディカルに常駐しているジャパン・ヘルプ・デスクさんには、さんざんお世話になりました。ここは、完全に日本クオリティの対応で、スタッフさんのご尽力に頭が下がる思いでした。
Next: 子どもの教育環境は十分か?移住手続きの難易度も選択のポイント
子どもの教育環境は十分か?
<タイ(バンコク):選択肢は多い。英語教育目的なら難あり>
日本人学校でもインターナショナルスクールでも選択肢は豊富で、インターだと欧米人の子弟の姿を電車などで見かけます。親の送り迎えなしで、ショッピングモールで買い物したりもできているので、それだけバンコクは治安が良いという証拠になりますね。
学校の充実さと治安は問題ないのですが、一方で、タイでは英語は公用語でないので、英語教育目的ならば、マレーシア移住の方がよろしいでしょうね。実際、同じ目的のご家庭はマレーシアが圧倒的に多いです。知り合いで、マレーシアの中学校から慶應ニューヨーク高に入学できた、という事例もありました。
<フィリピン(セブ):教育面では期待できない?>
英語教育という面では魅力ですが、治安の面と学校全般のクオリティは高くないので、まったくフィリピンと関わりない場合の教育移住は、正直おすすめしません。マレーシアの方がいいでしょうね。
コロナでほとんどの学校がオンライン授業となっていますが、正直なところ、フィリピンの教育への優先度は高くないです。かんたんな計算さえできない大人がたくさんいるのですが、それだけ教育水準が低いということです。
日本人にフィリピン不動産を売りたい業者は、「英語ができるから教育水準が高い」みたいなPRをします。しかし、英語以外の能力は非常に低いというのが実情です。
能力が高い医師や専門職は、外国に出てしまいがちです。
移住手続きの難易度
<タイ:ビザは取得しやすい>
ロングステイビザが取れる50歳未満の場合、タイランドエリートが最も容易に取れるビザですが、観光ビザという選択肢もあります。
家族の帯同有無や移住目的にもよりますが、ビザが取れないということはほとんど考えられません。裏金も不要です。
<フィリピン:賄賂での不法入国が問題化。コロナ禍で難易度上昇も>
SRRV(特別居住退職者ビザ)というリタイアメントビザが35歳以上ならば取得できるもので、私自身2014年に取得しました。しかし、現在は新規発給は停止となっています。
理由は、中国人の取得者が、リタイアメントビザなのにもかかわらず、オンラインカジノで大量に労働していたことが議会で批判され、見直しが行われているからです。
加えて、イミグレーションで大量の賄賂での不法入国が内部告発され、外国人の入国自体が厳しくなっているところに、コロナが発生していますので、移住というか、フィリピンへのビザなし入国自体、2021年中には無理では?という声もあるくらいです。
一方、既存のSRRV保有者であっても、フィリピン人配偶者がいなければ入国できない状態であり、正直なところ、ビザの意味ないのでは?という感じです。
タイでは、手続きは必要ですが、ビザの権利は維持されています。それと比べるとフィリピンは万事、制度は不安定で信頼性は低いです。
Next: コロナ禍のうちにしっかりリサーチを!すべては目的次第
価値観や優先順位はそれぞれ。目的を持って移住を
様々な検討要素はありますが、“人”が関わるかかわるならば、それが最優先となりますね。
例えば、フィリピン人の彼女ができて、追いかけていくという場合。他の国と比較するのは無意味なわけで、フィリピンにどうやって移住するか?あるいは、移住自体が妥当なのか?を検討する必要があるということです。
また、逆に言えば、多少の不便とかがあっても、好きな人と一緒に過ごせるなら、それが幸せということもあります。
みなさん、それぞれの価値観や優先順位があると思います。それに従うのが一番、大事ですね。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年1月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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明るい希望が見いだせないサラリーマン生活から脱却すべく、国内不動産投資から海外投資に目指した40歳独身男が、2012年6月をもってサラリーマンリタイヤ。投資インカムに加え、インターネットビジネスも開始し、タイ バンコクに移住、稼ぎは大きく、生活コストは小さく、ハッピーライフを追求していきます。