足元で進行する原油安と人民元安について、「米国のインフレ低下に繋がり、FRBの利上げの障害となり得る」との見方がよく見られます。
しかしこれらが実際には、アメリカの利上げを後押しする目的で、意図的に引き起こされた“ショック”だったとしたら?『らぽーる・マガジン』最新号で取り上げられた、そんな可能性をご紹介しましょう。
原油下落、人民元切り下げ――すべては米国のシナリオどおり?
アメリカの個人消費を後押しするための原油下落か
原油価格低下が続いています。ある意味「底なし」の状況です。どこまで原油は下がるのか、それがマーケットの最大の関心事となっています。
原油価格は、基本的には世の中での需給で決まります。いまは需要サイド、石油を買う側の事情が厳しいので需要過多になっているから石油価格が下落していると言えます。
また石油価格には金融の側面があります。先物市場があり、特にヘッジファンドが売りを浴びせていると思われます。
ヘッジファンドはマーケットを作るのではなく、マーケットのトレンド(方向性)を加速させることで大きな収益を得ます。需給面で原油価格は下落傾向とみるや、先物市場で大きな売りを入れて下落方向の動きを加速させるわけです。アメリカ利上げ観測からドルが買われているので原油価格は上がりづらいと見て、下落方向に思いっきり引っ張っていると思われます。
WTI原油先物 週足(SBI証券提供)
いまの原油を取り巻く環境を整理すると
- 中国の景気減速懸念
- 米利上げ観測によるドル高
があげられます。これらはすぐに収束するものではありません。原油価格低下が底なしと判断する所以でもあります。
需要サイドでは、アメリカが長期夏休み休暇によるドライブシーズンが終わることも原油価格には影響します。
政治的にはイラン核協議が合意に至り、イランへの制裁が解かれることで、イラン原油が市場に復帰することも、今の原油価格に大きな影響をもたらしています。
イラン原油輸出拡大懸念に加え、アメリカでのシェールオイル供給量も増えていく傾向にあるとみられます。
一方、アメリカや中国の国内原油備蓄量は安定しているとのことです。専門家の見方では、WTI原油は2009年2月安値の39.09ドルを更新し、1バレル33.98ドルを見に行くのではと指摘されています。
中東産油国側も生産コスト削減に力を入れていて、採算ラインと言われる価格水準は下がってきていて、最大の産油国サウジアラビアでは、その採算ラインは20ドルまで引き下げられているようです。
OPECでの減産による価格調整は行われないようで、中東におけるイスラエルも、水面下では分かりませんが、表面的にはおとなしい感じです。
今後アメリカ大統領選挙戦が本格化すればユダヤ票を巡り、特に共和党陣営は、イスラエル寄りの政策を主張してくると思われます。いまだにくすぶる中東紛争が起こるかもと言われる根拠がそこになります。
アメリカにどうしても利上げをしなければならない事情があるとして、利上げに際して一番のリスクは景気減速となることで、それを防ぐには原油価格が低い方が個人消費にとっては良いことです。
アメリカとサウジアラビアの関係が崩れていなければ、アメリカが利上げをしてその後の景気の様子を見てから徐々に原油価格を上げてくるというシナリオがあるとすればどうでしょう。
すべてはアメリカの利上げが絡んでいるようです。
人民元切り下げもアメリカ公認の出来レース?
中国人民元切り下げもそうです。アメリカの利上げによりドル高が進めば、人民元も高くなっていきます。
世界経済はG2となっていますので、アメリカは9月利上げ実施を中国に伝え、それを受けて中国側があのタイミングで人民元を切り下げたとすれば、米議会が為替操作国と指定する中国に対して、何の非難声明も出さないアメリカの態度が納得できます。
スイスの対ユーロに対する介入停止もそうです。ECBが日米型の大型量的緩和を実施することを事前に知って、為替介入を辞めました。
過去において、中国が人民元切り下げを行った約1ヶ月後にアメリカは利上げを実施しています。
リーマンショック後も、世界中がアメリカ経済復活のために協力しました。思えば日本が円高になる切っ掛けとなたプラザ合意も、アメリカを世界中が救う合意だったわけですからね。
すべてはアメリカ利上げに実施のためのシナリオのような気がしますね。
『らぽーる・マガジン』(2015年8月24日号)より一部抜粋
※太字とチャートはMONEY VOICE編集部による
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