天才投資家バフェット氏の名言を取り上げます。その言葉の裏に隠された真意を探ることで、私たちも少しバフェット氏に近づくことができるかもしれません。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編)
※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2019年7月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。
違う、そうじゃない。バフェットは何よりも「努力の人」だった
1. バフェット氏は“一日にして成らず”
今回、取り上げるのは、ウォーレン・バフェット氏の名言です。
世界の大富豪の中でも、バフェット氏の発言は特に含蓄のあるものとして有名です。その言葉の裏に隠された真意を探ることで、私たちも少しバフェット氏に近づくことができるかもしれません。
【名言を読む際によくある3つの間違いとは?】
最初に注意点として、「名言を読む際によくある3つの間違い」について説明しておきたいと思います。
世界3大投資家の1人であるウォーレン・バフェット氏の数ある名言の中から、以下の名言を例に挙げて説明しましょう。
「まずまずの会社をすばらしい値段で買うよりも、すばらしい会社をまずまずの値段で買うほうがずっといい」
出典:『スノーボール(改訂新版)〔中〕――ウォーレン・バフェット伝』アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳 日経ビジネス人文庫
※原文:It’s far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price.
<間違いその1:解釈を間違える>
こうした名言を読む際に起こりがちな第1の間違いとは、「文章そのものの意味を履き違えてしまう」ことです。間違った解釈が、そのまま世に広まっている事例も多々あります。
特にこの名言の場合、「fair(まずまず)」という非常に曖昧な単語を使っていることが、読み手の理解を難しくしていると思われます。「まずまず」という単語が、「なかなか」といった好意的な意味で使われることもあれば、「そこそこ」といった合格点すれすれの意味で使われることもあるからです。
実際はこのような感じです。
「あなたが、いつ、どのような投資のゴールを設定するかによって、投資先として検討している会社の値段が安いのか高いのかが初めて決まる。他人の値付けや他者との比較ではない」
この名言のキモは、バフェット氏が「すばらしい会社をすばらしい(安い)値段で買うほうがよいとは言っていない」点にあります。
本当のところがどうなのかは、本人に聞いてみなければわかりません。けれど最近、バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが、アップル株など、とうてい「安い」とは言えない会社の株を買い増しているところからしても、こちらの解釈が真実に近いと思います。
Next: 違う、そうじゃない。バフェットは何よりも「努力の人」
<間違いその2:真意が伝わっていない>
続いて第2の間違いは、「真意が伝わっていない」というケースです。これはある意味、仕方がないとも言えますが。たとえば、以下のような訳文を見たことがあります。
「まぁまぁの会社をすばらしい価格で買うよりも、すばらしい会社を適正な価格で買うほうがはるかによい」
この文章は、おそらく単語の意味を、そのまま日本語に置き換えただけだと思われます。「すばらしい価格とはいくらのことなのか?」が、この文章だけだとわかりません。
さらに問題なのは、「すばらしい会社を適正な価格で買う」の訳文です。確かに、良い会社を適正価格で買えるのであれば、それに越したことはありませんが、「その価格が適正だ」と決めるのは、結局のところ自分自身です。
元来、投資とは未来に対して行われるものですから、投資をする時点において、それが適正かどうかなど、誰にも保証はできないのです。
<間違いその3:バフェットは正しいと盲信する>
次に、第3の間違いとは、「バフェット氏の言葉はいつも正しい」という誤解です。マスコミの付けた“投資の神様”というネーミングも、誤解を招くもとになっている気がします。氏は、何よりもまず“努力の人”であり、この名言も、失敗の教訓として得たものです。
1966年、自身のパートナーシップのために、新たな投資先を見つけるのに苦労していたバフェット氏は、アメリカ・メリーランド州ボルティモアの老舗百貨店ホクスチャイルド・コーンの買収に乗り出します。ところが、氏は衣料のことなど何も知らず、百貨店の全盛期が去っていたことにも気づいていませんでした。しかもこの買収のために、初めて巨額の借金を背負うことになりました。
現在の「自分が理解しているものにしか投資をしない」と公言しているバフェット氏とは、かけ離れている感じもします。
後年、氏はこの買収について「二流の百貨店を格安で買ったと考えていた」と語っています。実際は、「二流の会社を二流以上の値段で買っていた」わけです。
すぐにこの買収の失敗に気づいた氏は、3年後に同社をほぼ元値でスーパーマーケッツ・ジェネラルに売却しています(『スノーボール(改訂新版)〔中〕』)。
バフェット氏が、常に失敗から学んできた、というのは有名な話です。それは、氏がこれまで変化し続けてきた、という意味であり、そうなれば昔と今で言うことが変わるということは、十分考えられます。
このように「バフェット氏は“一日にして成らず”」といった軌跡が読み取れるのも、名言を味わう際の魅力の1つなのではないでしょうか。
Next: なぜ「多少、高くてもよいものを買いなさい」なのか?
【なぜ「多少、高くてもよいものを買いなさい」なのか?】
さて。名言を読む際の注意点はこれくらいにして、名言自体の解説に入っていきましょう。今一度、解説する名言を挙げておきます。
「まずまずの会社をすばらしい値段で買うよりも、すばらしい会社をまずまずの値段で買うほうがずっといい」
出典:『スノーボール(改訂新版)〔中〕――ウォーレン・バフェット伝』アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳 日経ビジネス人文庫)
先ほどもお伝えした通り、この名言のポイントとは、バフェット氏が「よいものを安く買いなさいとは言っていない」点にあります。
つまり、これは「今、付いている値段が本当に『安い』のか『高い』のか、それとも『妥当』なのかが、あなたに判断できますか?」という、バフェット氏からの問いかけだということです。
通常、人が「安い」「高い」と感じるのは、何かと比較しているからです。
一般的には、似たもの同士を比較の対象にしています。仮に日用品を比較するのであれば、違うメーカーの同等商品を比較したり、ブランドなどから判断したりしているでしょう。
一方、投資の場合は、主に過去の銘柄価格との比較や、同じ業界か同程度の規模の会社、もしくは相場との比較などから判断していることが多いと思います。
けれど実際問題として、「そうした指標との比較が本当に正しいのか?」と言われたら、「そうだ」とは言い切れないのではないでしょうか。
たとえば、ある会社の10年間のチャート(株価の推移)の最安値と最高値を取って、「この会社の最高値がハイプライスで、最安値がロープライスだ」などと言ったところで、今後も同じ動きをするかどうかは誰にもわかりません。
<投資とは、まだ怒っていない未来を予測すること>
次に、これはもっとも大事なポイントなのですが、投資とは「まだ起こっていない未来を予測する行為」だということです。
たとえこれまで成長してきた会社だからといって、これからもそうなるという保証はどこにもないのです。
もともと、バフェット氏は企業分析のプロです。時には氏が自ら足を運んで、その会社の経営陣と意識のすり合わせを行い、投資するかどうかを決めています。
現在、バークシャー・ハサウェイの中核事業は保険事業ですが、中でも大きく成長している自動車保険会社のGEICO(ガイコ)は、そのようにして買収した企業の1つです。
今年、89歳になるバフェット氏は、その資金力を使ってさまざまな専門家から情報を収集した上で、そこに自身のもっとも貴重なリソース(資源)である時間を投入し、投資するかどうかの判断を下しています。
私たちとバフェット氏とでは、資金力も、人脈も、経験も、すべてが比べものになりません。そんな私たちに対して、氏は「今が高いか安いかよりも、未来の伸び代に賭けなさい」と言っているのです。
Next: なぜバフェットは成功した?名言から要因を探る
2. 名言からバフェット氏の成功要因を探る
2019年5月、バフェット氏は初めてECサイト大手のアマゾンに投資したことを公表。市場に驚きをもって迎えられました。
世間では「なぜ、今頃になってアマゾンに?」「バリュー投資をやめたのでは」といった憶測が広がっていますが、注目すべきなのは、むしろその驚くべき率直さのほうではないでしょうか。
【名言を、そのまま自分の行動に反映できないワケ】
それでは、次の名言を見てみましょう。こちらも大変有名な一文です。
「愚か者でも経営できるビジネスに投資をしなさい。なぜなら、いつか必ず愚かな経営者が現れるからだ」
出典:『史上最強の投資家バフェットの教訓 逆風の時でもお金を増やす125の知恵』メアリー・バフェット、デビッド・クラーク著、峯村利哉訳 徳間書店
こちらの名言は、長期投資をする際の考え方について述べています。
残念ながら、「これをそのまま自分の行動に取り入れられるのか?」というと、難しいのが実情でしょう。どういう点が難しいのかというと、次の3点です——
結局、バフェット氏はITの未来を見誤っていた!?
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<新刊情報>
この記事の著者・俣野成敏さんの新刊『トップ1%の人だけが知っている「最高のマネープラン」』が7月20日に発売されます。ぜひお手にとってご覧ください。
『トップ1%の人だけが知っている「最高のマネープラン」』
著:俣野成敏/刊:日本経済新聞出版社
次回予告
次回は、「新刊出版記念号(1)」をお送りします!
当メルマガのベースにもなっている『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』の書籍を発売してから3年8ヶ月。本シリーズの第3弾となる『トップ1%の人だけが知っている「最高のマネープラン」』が、いよいよ7月20日に発売されます。
・あなたは大丈夫?2000万円問題
・散財体質から貯金体質に変わるために必要なこと
・お金を貯めることは、誰でもできる
・マネープランが、日本人を救う?!
本特集では2回にわたり、新刊の魅力をたっぷりとお伝えいたします。次回の特集も、どうぞお楽しみに!
今後の特集スケジュール(予定)
2019年7月
第3回:(Vol.139)新刊出版記念号1(7月21日配信)
2019年8月
第1回:(Vol.140)新刊出版記念号2(8月1日配信)
第2回:(Vol.141)現場で使えるビジネス格言集11(8月11日配信)
第3回:(Vol.142)AIが金融市場を席巻する?!(8月21日配信)
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- 【Vol.138】「賢人の名言から学ぼう!シリーズ(7)」〜ウォーレン・バフェット氏編(3)〜(7/11)
- 【Vol.137】「投資のことから人生相談まで!」〜投資の疑問に答えるQ&A集(8)〜(7/1)
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『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2019年7月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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俣野成敏の『サラリーマンを「副業」にしよう』実践編
[月額550円(税込) 毎月5日・20日(年末年始を除く)]
老後2000万円問題、働き方改革、残業規制、等々。政府も会社も「自助努力で生きよ」と突き放す中、コロナ・ショックによるリストラが追い討ちをかけています。自己責任の名のもとに始まった大副業時代を生き抜く術とは?『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社)』『一流の人はなぜそこまで○○なのか?シリーズ(クロスメディア・パブリッシング)』『トップ1%のお金シリーズ(日本経済新聞出版社)』等、数々のベストセラーを世に送り出してきた著者が、満を持して『サラリーマンを「副業」にしよう(プレジデント社)』を発売。マネーとビジネスの両面から、サラリーマンを副業にするための情報をお届けします。