米大手新聞ニューヨーク・タイムズのデジタル購読者数が600万人を突破しました。米大統領選やコロナウイルスの蔓延など注目ニュースの増加を背景に、デジタル購読者も確実に獲得しているその戦略の裏側に迫ります。(『IT業界人のための「ビジネス・トレンド・ウイークリー」』)
※本記事は有料メルマガ『IT業界人のための「ビジネス・トレンド・ウイークリー」』2020年6月8日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
コロナ禍でデジタル購読者急増
米国の大手新聞社ニューヨーク・タイムズは、2011年よりデジタル購読有償化をスタートさせ(15ドル/4週間)、2016年には「2025年に有償購読1,000万人」の目標を掲げた。2020年4月には購読者600万人を達成、順調な伸びを示している。
2020年第1四半期(1月-3月)には新規デジタル購読者59万人(ニュース購読47万人、クロスワードパズル/クッキング購読12万人)を獲得。これは四半期の新規購読者数としては過去最高となった。
2020年3月末現在の内訳は、デジタル購読者500万人(ニュース購読390万人、クロスワードパズル/クッキング購読110万人)に加え、従来からの紙媒体新聞の購読者が84万人である。
2020年4月度もコロナウイルスに関連したニュースへの関心が高く、デジタル購読者数は600万人超となった。これには米国外の購読者50万人も含まれている。
有償購読以外も含めたWebサイトへのユニーク・ビジター数は、2020年3月の1ヶ月で2億4,000万人(うち米国内が1億5,300万人)と、コロナウイルス勃発前の2倍となった。
ニューヨーク・タイムズでは、有償購読でない場合もメールアドレスを登録すれば一定数の記事が無償で閲覧できる仕組みを設けているが、これが見込み客に関する情報収集を可能にしている。有償顧客に対しても、違うデバイスからのアクセスにはログインが必要となるため(最初の1回のみ)、これを活用して「誰が」「どのデバイスで」「いつ」アクセスしているかを把握しているという。
紙の売上をまもなく追い抜く?
ニューヨークタイムズの2020年第1四半期の売上内訳は、以下の通りである。
・紙媒体新聞購読:1億5,500万ドル
・デジタル媒体購読:1億3,000万ドル
・紙媒体広告:5,500万ドル
・デジタル媒体広告:5,100万ドル
紙媒体新聞は、毎日購読の場合10ドル/週(その他、土日購読/平日購読などもある)、デジタル版は17ドル/4週間(2019年に15ドルから値上げ)となっている。また、紙媒体購読者はデジタル版にも無償アクセスでき、80%以上が利用しているという。
デジタル購読は順調に増加しているが、紙媒体購読は年間20-30%のペースで減少している(紙媒体ビジネスを赤字にしないため値上げを予定しているという)。
一方、広告収入は、景気の急速な悪化を受け全体で15%の下落(紙媒体は21%下落、デジタル媒体は8%下落)となった。この傾向が続くと、購読料収入/広告料収入とも、まもなくデジタル媒体が紙媒体を上回ると思われる。
Next: ニューヨーク・タイムズ紙では、3月から8月末まで社員全員がリモート――
新聞ビジネスのデジタル化に唯一成功
前述のとおり、直近四半期の新規デジタル購読者は59万人で、2025年に購読者1,000万人の目標は前倒しで達成できそうだ。その際の海外からの購読者数は200万人を見込んでいるという(ちなみに、当初50万人のデジタル購読者を獲得するのに18ヶ月を要し、1,000万人計画を発表した際の有償購読者数は160万人だった)。
ニューヨーク・タイムズ紙では、3月から8月末まで社員全員がリモートワークとなっており、広告収入の減少も心配されるが、ジャーナリストやデジタル化を担当するエンジニアは増員を検討しているという。
また、新たなデジタル商品としてポットキャストの商品化も検討を進めているようだ。
新聞のデジタライゼーションに関し、世界的に見てもニューヨークタイムズが唯一の成功例のようにも思えるが、そのデジタル・ビジネスの状況に関して引き続き注目しておきたい。
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- 順調なデジタル移行:NYタイムズ紙の定期購読者が600万人超:コロナウイルスも後押し(6/8)
- コロナウイルス対策で活躍するロボット(6/1)
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『IT業界人のための「ビジネス・トレンド・ウイークリー」』(2016年6月8日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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