特別定額給付金は、生活に余裕がある人にとっては「ただのお小遣い」かもしれないが、生活が困窮している人たちにとっては「1日でも早く支給してもらいたいもの」であると言える。それなのに特別定額給付金を国民に支給すると宣言して実際に受付が5月から始まっているのに、待てど暮らせど支給されないのである。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
安倍首相にトップとして責任がある
国民1人あたり一律10万円を配る特別定額給付金の支給が遅れているのだが、この遅れは紛れもなく、100%安倍政権のミスだ。「一律10万円を配る」という判断も遅ければ、それを支給する体制をきちんと整えることもできなかった。
決めたことをスムーズに実行できていない。トップは「国民を助ける」と決めたのであれば、迅速に支給できているのかどうかもきちんと責任を取るのが当たり前の話であって「俺は決めただけ、遅れているのは俺の責任ではない」というのは常識的に考えるとあり得ない。
たとえば、企業のトップが「こうする」と決めて、それを社員が実現できなかったら「俺は悪くない、社員がわるい。俺は言っただけ、実行できない現場が悪い」と言っていたら、馬鹿なのかと思うはずだ。
安倍首相が決めて、支給が遅れているというのであれば安倍首相がトップとして責任がある。
支給が遅れているのであれば、安倍首相に「支給が遅れている、どうなっているのか」と責任を問うのが正しい。現場が混乱しているというのであれば、それに対して抜本的に対処できるのも安倍首相である。
別にこれに対して安倍首相に罵詈雑言を投げる必要はない。そうではなくて、「特別定額給付金の支給が遅れている」のだから、「その問題を把握して改善すべき」と指摘し、とにかく改善を訴えるべきなのだ。
非正規雇用者の雇い止めや一時休業、正社員のリストラや給料減などで、生活が逼迫している人たちが大勢いる。
だから、「とにかく特別定額給付金の支給を急げ」と言っている。特別定額給付金は一刻も早く支給されなければならない性質のものだ。
生活が困窮している人たちにとっては死活問題
当たり前だが、中国発コロナウイルスは雇用に対して大きなダメージを与えており、非正規雇用のような立場の弱い人が最も大きな被害を受けている。貧困層にはこうした支給がなければ、それこそ生活が困窮してどうにもならない状況にある。
特別定額給付金は、生活に余裕がある人にとっては「ただのお小遣い」かもしれないが、生活が困窮している人たちにとっては「1日でも早く支給してもらいたいもの」であると言える。
それなのに特別定額給付金を国民に支給すると宣言して実際に受付が5月から始まっているのに、待てど暮らせど支給されないのである。
「区役所の担当者が悪い、行政が悪い」と現場に怒ってみても、現場がてんてこ舞いになっているのを見たら、こんな状況をいつまでも放置している安倍首相は何をやっているのだ、という話につながっていく。
私がそう思うのではない。国民がそう思う。
もう一度言うが、「国民1人あたり一律10万円を配る」と決めたのは安倍首相だ。だから、これが遅れているのであれば、国民は「安倍首相はいったい何をやっているのだ」と思うのは奇異ではない。
「自分はもう特別定額給付金をもらった。安倍首相は良くやっている。安倍首相を責めるのはおかしい」という人もいる。
なるほど、もらった人はそうかもしれない。しかし、都心部の人はまだ多くがもらえていないということに注視する必要がある。
「10万円給付、都市部で遅れ」「11市区まだ1割未満」「給付率が1割に満たなかったのは大阪市と千葉市、名古屋市」と日経新聞も書き立てている。人口の多い都市部の住民は「安倍首相は良くやっている」など思わない。
「もう特別定額給付金をもらっている人がいるのに、自分はまだもらえていない。見捨てられているのか」という気持ちになる。
Next: 特別定額給付金が振り込まれない国民が怒り心頭なのは、税金だけはシステ――
税金だけは素早く正確に確実に取っていく
特別定額給付金が振り込まれない国民が怒り心頭なのは、税金だけはシステムがどんなに変わろうと、即座に対応して正確無比に毟り取っていくこともあるからだ。
たとえば、2019年に消費税が再び2%引き上げられたが、税務署はあっと言う間に対応して、2020年からしっかりと税金を取っていく。
政府は他にも所得税を取り、住民税を取り、固定資産税を取り、介護保険料を取り、自動車税を取り、ガソリン税を取り、酒税を取り、タバコ税を取り、贈与税を取り、相続税等を取っている。
税率も、毎年どれかが変わる。しかし、取る方は素早く対応して漏れがない。完璧な実務遂行能力がある。ところが、特別定額給付金を振り込むという話になると、途端に「現場が混乱」だとか「まだ時間がかかる」という話になる。
国民からしてみれば、「特別定額給付金はやたらめったら遅いのに、税金だけは素早く正確に確実に取っていく」という姿を見せられているということになる。国民からしてみれば「何なのだ、この国は?」という話だ。
その国のトップは誰なのか。安倍首相だ。
だから、「特別定額給付金はやたらめったら遅い」というのは、そこに大きな注意を払わずに現場が混乱するに任せて放置している安倍首相に対して国民が不満を持つようになるのは当たり前なのである。
トップである安倍首相は、各行政の長に号令をかけ、状況を改善し、国民に「今、対処している」と語りかけなければならないということだ。それを安倍首相がしていないのであれば、「して下さい」と声を上げるしかない。
安倍首相を批判するとかしないという話ではない。「安倍首相は明らかにこの部分を見逃しているから、何とかした方がいい。さもなければ、安倍首相に対する国民の信頼感は薄らぐ」と言っているのだ。
遅れることで安倍首相に対する大きな不満となる
私は安倍首相に対して敵意はない。手放しで支持しているわけではないが、民主党政権時代の首相に比べると100倍も良いと思っている。
中国・韓国・北朝鮮に抗議されたら靖国神社の参拝に行かなくなったとか、単純労働者の外国人を大量に入れて隠れた移民政策を行っているとか、習近平を国賓で呼ぼうとしていたとか、消費税を引き上げ続けているとか、はっきり言って不満に思うことも多い。
しかし、民主党政権で崩壊寸前になっていた日本という国を立ち直らせたのは安倍首相であり、韓国に対しても一定の距離を置くような政策をきちんと行っているのも安倍首相である。
政治的な混乱を収束させ、日米との結びつきも強いものにした。こうした功績はとても大きいと評価している。
だから、本来は国民に寄り添った政策であったはずの特別定額給付金の支給が遅れていて、逼迫(ひっぱく)している人たちを事実上の放置状態になっている現状、そしてそれが原因で安倍首相に対する不満が膨れ上がっている「現場」の状況を私は憂う。
Next: 安倍首相を擁護している人たちは、社会の底辺(ボトム)で苦しんでいる人――
給付金を待ちわびて困窮している人たちがいる
安倍首相を擁護している人たちは、社会の底辺(ボトム)で苦しんでいる人たちには関心がないのか? あるいは、社会の空気が読めなくなっているのか? あるいは、自分はもう特別定額給付金をもらったから関係ないと思っているのか?
どうなのか知らないが、せっかく特別定額給付金の支給で国民に寄り添おうとしている安倍首相の決定が、それが遅れることでむしろ安倍首相に対する大きな不満につながってしまっていることをもっと考えた方がいいのではないか?
安倍首相を支持する人こそ「特別定額給付金の支給をもっと早く、とにかく早く!」と声を上げなければならない状況なのに、そうなっていない。読みが浅すぎる。
私は立場的に社会のどん底(ボトム)にいる人たちの多くに会っており、そうした苛立ちを聞いている。知っている。彼らの困窮も見ている。
特別定額給付金の支給遅れを正当化しては、ますます安倍首相が窮地に落ちる。「早くした方がいい」と声を上げ、急がせるべきだ。このままでは不満が爆発して安倍首相に火の粉が移る。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年7月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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