目指すは中国市場の開放?
【読売】は1面トップの見出しを「TPPに人権・環境規定」「概要公表 新加入国に『基準』」としている。他に、2面には、米国とカナダが日本車の輸入と金融に関して、自国に有利な条件を日本に認めさせたことについての記事(セーフガードなど)、9面には「中国への圧力」という側面を強調した記事、10面と11面見開きで日本語版「概要」をもとに、協定全体の紹介を行っている。
1面記事は、TPP協定が、関税撤廃や経済ルールの自由化に止まらず、「女性の社会参画」や「児童労働の禁止」、「環境保護の徹底」なども書き込んだところに特徴があり、他のアジア諸国が加わろうとしたときの、クリアすべき「基準」になるとする。
uttiiの眼
《読売》の徹底ぶりには驚く。実に特異なTPP感と言うべきだろう。この問題でも、議論の中心にいるのは日本や米国ではない、中国なのだ。中国だって、経済連携で取り残されたくなかったらTPPに入らざるを得ない、そうなれば、人権や環境問題での姿勢を正さなければならない…。TPPは、中国を使いやすい市場に「育てて」いく武器なのだと《読売》は言いたいらしい。重ねて9面の記事でも、協定が「女性の社会参画」や「腐敗行為の防止」といった、経済連携協定には珍しいルールを多数盛り込み、「21世紀型の世界基準」を示したものと位置づけていて、これも、暗に中国に突きつける条件をイメージしてのことだろう。
2面記事について、米国とカナダが日本車の輸入と金融に関して、自国に有利な条件を日本に認めさせたと書いているが、これは重大な問題に発展するかもしれない。クルマについては、米国の場合25年掛けて2.5%の関税をゼロにするが、その後10年間はセーフガードを掛けられる。予め、米国の自動車市場は荒らしませんと誓約させられているようなもの。また、日本郵政グループに対する「牽制球」があり、「いずれの国も郵便保険事業体の保険サービス提供について、民間のサービス提供者より有利になるような措置を採用、維持してはならない」というあからさまで脅迫的な一文が盛り込まれてしまった。明らかに「かんぽ生命」を指した規定。「上場した以上、優遇はあり得ない」と日本政府は言うが、外資が何かケチを付けてくる可能性はあるだろう。この点を強調しているのは《読売》と《毎日》。